アドラー心理学に学ぶ中学受験に大切な3つのこと(前編) ―― 親子のノリノリ試行錯誤で、子供は伸びる
こんにちは。中学受験専門塾 伸学会代表の菊池です。
前回の記事「アドラー心理学に学ぶ子どものやる気の引き出し方」はもう読んでいただけましたか?
アドラー心理学は生きづらさから抜け出し人生を幸せに導くための実践的な心理学として知られていて、子育てという場面においても役立つ内容が満載です。
長かったので少し読むのが大変だったかもしれませんが、読んだ方は親子関係を良くし、子どものやる気を上手に引きだすヒントを掴めたのではないかと思います。
今回はそれに続いて、「アドラー心理学に学ぶ中学受験に大切な3つのこと」というテーマでお話をしていきたいと思います。
子育てって大変ですよね。
そのうえ中学受験をするとなると、さらにいろいろな悩みがつきません。
子供の成績に関する悩みだけではなく、親子関係、周りのママ友との人間関係、あるいは家族の中での方針の違いによる揉め事などなど、頭を抱えたくなることがたくさんあります。
これらをうまく乗り越えて、中学受験において家族で幸せなゴールにたどり着くための心がまえ・あり方をお伝えします。
今回もとても大切な役立つ内容をお伝えしますので、ぜひ最後まで読んでくださいね。
アドラー心理学を元に中学受験の悩みの根本を考える
さて、中学受験における悩みの根本とはいったい何なのでしょうか?
これに関してアドラーはとても鋭い考察を述べています。
それは「全ての悩みは対人関係に行き着く」ということです。
つまり、わかりやすく対人関係である親子関係・ママ友との友人関係だけでなく、成績や受験結果に関する悩みも、じつは全て対人関係が根本にあるんだよということなのです。
もう少し具体的に言うと
- 承認欲求をベースに対人関係を構築してしまう
- 競争意識をベースに対人関係を構築してしまう
- 他者と自分との課題を混同してしまう
といったことが悩みの原因になりがちです。
これらは中学受験では本当に起こりがちですよね。
今回はこれらをそれぞれどういうことなのかについて、詳しく説明していこうと思います。
また、次回はこれらをそれぞれどういうふうに解決していけばいいかについて、さらに詳しく説明していきます。
1.承認欲求に関する悩み
まず3つの悩みの原因の1つめ、承認欲求についてです。
この承認欲求とは「他者から認めてもらいたい」という感情です。
これがベースになると何が問題かというと、自分らしさを失ってしまうということです。
うちの子は、あるいは私の子育ては、あの人から見たらどういう風に見えるだろう、周りからどういう風に見られているだろう、そうやって気にしてしまうのが悩みの大きな原因になります。
この承認欲求が強ければ強いほど、人生が不自由に感じられてしまいます。
これは親御さんが不自由に感じる場合もありますし、子ども本人が不自由に感じる場合もあります。
承認欲求のせいでこういうことが起こりがちという危険なパターンは、例えば
- 見栄で志望校を選択してしまう
- 有名進学校に行かせなきゃとプレッシャーを感じる
- 子どもの進学先が偏差値が低いと心から祝福できない
とか。
これって結構つらい状況ですよね。
あるいは、受験本番よりもっと手前の段階で、塾のクラスのアップダウンで一喜一憂してしまうことも起こりがちです。
成績でクラスが上がったり下がったりするのは大手塾だと当たり前のことですが、そこでクラスが落ちると、後ろめたさや恥ずかしさを感じてしまう。
この感情は、失敗を次に生かそうとする「反省」とは別のものです。
子ども本人が抱いたとしても、あまり建設的なものではありません。
まして、親が子どものクラスダウンに後ろめたさや恥ずかしさを感じても、何も良いことはありません。
しかし、現実にはこうした悪影響になる感情を抱いてしまう人が、大人も子どもも多いです。
私たち伸学会では、「点数が悪かったとしたら、テストまでのプロセスにどんな問題があったからだろう?何かやってないことがあったのか?繰り返す量が不足していたのか?やり方が悪かったのか?」と考えるように指導しています。
また、「クラスが変わるのは、今の学力や勉強のやり方で適切なクラスに移動するということ。授業や宿題の難しさがちょうど良いところにいた方が学力が伸ばせる」と伝えています。
それだけかなり注意して指導をしていても、テストで手応えが悪かったら「私クラス下がるの?下がるの?」とやたら心配する生徒がいます。
人は周囲の目を、特に子どもは親の目を気にしてしまうのですね。
そうやって結果にばかり意識が向いてしまい、勉強のやり方や量など過程に目を向けられないと、成長が遅くなります。
宿題の○×を改ざんしたりといった、正しい勉強のやり方とは逆方向に進んでしまうこともあります。
承認欲求が強く、周りからどう見えているかを気にしすぎるせいで起こるマイナスは、気持ちが苦しくなるだけではなく、成長を遅くする行動にも繋がり、結果としてまた引け目を感じて苦しくなる悪循環になっていきます。
子どもだけでなく、親の子どもへの関わり方という面でも、周りの目を気にして子どもに良い成績を取らせなければと考え、子どもをコントロールして勉強をさせようとすると、子どものモチベーションに悪影響を与える結果になります。
そして、子どもの成績が低下し、それに対して引け目を感じて、よりいっそう子どもをコントロールしようとして、よりいっそう子どものモチベーションが下がり、勉強嫌いになっていくという悪循環を起こします。
そうした困った事態を避けるために、承認欲求ベースの対人関係を作ってしまっていないか、現状を振り返ってみてもらえると良いのではないかなと思います。
2.競争意識に関する悩み
2つめの悩みの種は、競争意識をベースに対人関係を構築してしまうパターンです。
競争意識は確かにモチベーションになる場合があります。
競争意識がある子にとって、勝つことはシンプルに嬉しいですから、勝てるとやる気が湧いて次ももっとやろうとなります。
勝つためにもっと試合をするぞ、もっとテストをするぞ、そういうモチベーションです。
大人でも、仕事で成果をあげられていると、モチベーションが上がるものですよね。
つまり競争意識は、勝つことができる優秀生にはプラスにも働きます。
通っている塾で上位のクラスを維持できていたり、テストごとに座席が変わる塾であれば前の方の席をキープできていたりすると、勉強に対してやる気になることもあるわけですね。
しかし、競争意識が強いと、勝てない場合にはモチベーションが下がります。
遊びでも、勝てないと癇癪を起したりやる気を無くしたりする子どもに手を焼いた経験は、多くの親御さんがあるものだと思います。
遊びであれば自分が適度に手を抜いて勝たせてあげることもできますが、勉強でもスポーツでも仕事でも、相手も真剣にやっている場面ではそうはいきません。
競争意識をベースに対人関係を形成してしまうと、勝てないからやる気がしない、やらないからますます勝てない、という悪循環になっていきます。
苦手科目は勝てないからやる気がしないけれど得意科目は頑張るという状態ならまだましです。
全科目勝てないから勉強はやる気がしない、勉強は嫌いとなってしまう子も多いです。
酷い場合には、「現実世界では勝てないから、ゲームの世界で英雄になって世界を救うのに夢中」となります。
あまり望ましい状態ではないですよね。
そして、競争意識をベースにすることには、もう一つ別の問題点もあります。
アドラー心理学的にはこちらの問題点がメインです。
それは、周囲を敵にすることにつながりやすいということです。
健全なライバル関係の形成ができる人は少数派です。
スポーツの世界だとお互いを称えあって、そして負けた側が勝った側を祝福する美しい光景が見られることもあります。
しかし、世間一般はそうではありません。
むしろその逆のドロドロしてる関係の方が圧倒的に多いです。
中学受験でもやはり、健全なライバル関係とは真逆の、醜いマウントの取り合い・ディスり合いは多いです。
親同士のつながりの中でよくある、子どもはどこの塾に行っていて成績がどうだといったマウントの取り合いって面倒くさいですよね。
子ども同士も同じように、成績を自慢したり、相手ができなかったことをばかにして、できた自分はすごいんだっていう優越感に浸る子は多いです。
これをやられた子は間違いなく不快に感じますから、関係性が悪化していくことはわかるのではないでしょうか。
3.他者と自分の課題を混同してしまうことによる悩み
最後の3つめの悩みの種が、前回詳しく書いた、他者と自分の課題を混同してしまうことです。
そもそも他人が自分をどのように考えるかは相手側の問題です。
同じことをしていても相手がどう受け取るのかは人によって全く違います。
例えば誰かに親切にしたときに、「ありがとう」と感謝する人もいれば、「鬱陶しい。おせっかいだな」と思う人だっています。
ボランティア活動に対して「いいことしてるな」と思う人もいれば、「偽善者だ」と思う人もいます。
偏差値50という成績に対して、「もっと良い成績を取りたいな」と思う人もいれば、「これで十分だ」と思う人もいます。
つまり、相手がどう考えるかは、自分にはコントロールできないことです。
そして考えだけではなく、他人がどう行動するかもコントロール出来ません。
このことはよく比喩的に「馬を水辺に連れて行くことはできるけれども、馬に水を飲ませることはできない。」と言われますね。
他者の思考も行動もコントロールできない。
だから、他人のことは自分にはどうしようもないので、「気にしない」と決めてしまうことが大事になります。
それは親子であっても当てはまることです。
しかし、どうしても親は子どもを自分の一部であるかのように感じてしまうものです。
そして、子どもに「偏差値50なんかで満足しちゃダメ!」と無理やり向上心を持たせようとしたり、もっと勉強させようとしたりして、思い通りにならずイライラしがちです。
子どもを他者だと思っていないこと、または他者である子どもの考えや行動をコントロールできるような気がしてしまっていることが、悩みの根本的な原因です。
また、他者をコントロールしようとするのではなく、他者がやるべきことを代わりにやってしまうというのも課題の混同の一つです。
例えば、塾の教材プリントの管理やスケジュールの管理などです。
本人の課題であることを前提に、できない部分をサポートするのであれば良いのですが、相手が望んでいないのに介入すれば嫌がられます。
いつまで経っても自分でできるようにならないという問題も起こります
なるべく避けたい状況ですよね。
まとめ
あらためてですが、
- 承認欲求をベースに対人関係を構築してしまう
- 競争意識をベースに対人関係を捉えてしまう
- 他者と自分との課題を混同してしまう
この3つは人生を生きづらくする悩みの原因となります。
そして、それはそのまま中学受験の悩みの元凶ともなります。
ですから、正しい対人関係の捉え方に変えて行きましょう。
では、どのようなあり方をすると良いのでしょうか?
長くなりましたので、次回、アドラー心理学に学ぶ「正しい」対人関係について、お話ししたいと思います。
※記事の内容は執筆時点のものです
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