アドラー心理学に学ぶ中学受験に大切な3つのこと(後編) ―― 親子のノリノリ試行錯誤で、子供は伸びる
こんにちは。中学受験専門塾 伸学会代表の菊池です。
3週間にわたってアドラー心理学について長々とお話してきましたが、果たして読者はついてきているのかとても心配です。
ただ、とても大切な話なので、ぜひ頑張って読んでみてください。
今回の内容も長いですし、少しややこしい話も多いです。
その通りに実践するのは難しいこともあるかもしれません。
しかし、頭の片隅に置いておくだけでも日々の行動が少しずつ変わっていきます。
そして、日々の悩みが少しずつ小さくなり、気持ちが楽になっていくはずです。
急激にガラリと変える必要は無いので、ときどき読み返して、自分のあり方を再確認してみてくださいね。
Contents
アドラー心理学を元に対人関係を正しくする
1.「承認欲求」を手放し「貢献意識」に変えていく
まず一つ目ですが、「承認欲求」を手放し、他者に対しての「貢献意識」に変えていくのが良いとされています。
アドラー心理学について書かれたベストセラー『嫌われる勇気』(岸見 一郎・古賀 史健 著、ダイヤモンド社)のタイトルの元にもなっている内容ですが、「人の評価を気にしない」「人からよく見られたいと思わない」ということです。
誤解しないでいただきたいのですが、「子どもに嫌われてもいいから子どものために鬼になる」という意味ではありません。
あくまでも他人の視線を気にし過ぎないということです。
肝心なのは、他人からの評価や承認によって自分の価値を判断しないこと。そして、自己評価の問題として、自分はそのコミュニティの中で意味のある存在であり、かつ他の人たちに貢献できていると感じられることが大事だとアドラーは主張しています。
他人からの評価や承認は、他人の問題なので、自分でコントロールすることができません。
コントロールできないものを求めると、苦しくなることも増えます。
しかし、貢献意識は自分の問題なので、自分でコントロールすることができます。
他者に振り回されることが無くなるのです。
もう少し具体的に言うと、「承認欲求」は例えば他人から「良い親であるという評価を受けたい」という気持ちです。
そういう評価を受けるために、「子どもを成績優秀に育てなければいけない」というプレッシャーを感じてしまいます。
それに対して、「貢献意識」は自分自身で自分の価値を実感している状態です。
それは例えば、他人から賞賛されたり羨ましがられたりしなくとも、自分は親として子どものためにできる限りのことをしているという自負や手応えがある状態です。
あくまでも自分の心の中の問題で、人から左右されません。
自分でやりがいや幸せを感じることができます。
「貢献意識」を自らの中心に据えると、もちろん家族から感謝されたり他者から褒められたりしたらそれはそれで嬉しいことですが、それに振り回されたりはしなくなります。
2.「競争意識」を手放し「理想の自分との会話」だけを残す
二つ目は、「競争意識」を手放し、「理想の自分との会話」だけを残すということです。
他人と比べての勝ち負けではなく、理想の自分と比べて今の自分は何が足りないのか、どれくらい足りないのかを考え、そしてそこに対して「健全な劣等感」を感じるようにしていくのです。
それにより、理想の自分と現実の自分のギャップを埋めるために努力しようというモチベーションを持つことが大事なポイントなのですね。
理想の自分と現実の自分とのギャップが正しく意識できないと、努力して今の自分を変えていこうというモチベーションも当然感じられません。
ですから、劣等感自体は大事なものです。
ただ、他人と比べて自分は駄目だと感じるのは正しい劣等感ではありません。
あくまでも自分基準の、正しい劣等感を持ちましょう。
これは子供のあり方としても大事ですが、親のあり方としても大事です。
「理想の自分との会話」だけを残すようにすれば、我が子の成績とよその子の成績を比較することで自分の親力が試されているように感じたり、苦しんだりすることが無くなるからです。
3.自分の課題と他人の課題を分離する
三つ目は、自分の課題と他人の課題を分離することです。
他人の思考と行動は100パーセント他人次第です。
同じことに対しても、それをどう評価するか、どう感じるかは、こちらからコントロールできません。
行動に関しても、他の人の行動を支配するなんてことはできません。
どんなにお願いしたって、あるいはどんなに脅迫したって、結局相手が自分の思う通りには行動しないことはいくらでもあり得ます。
例えば、「このままじゃクラス落ちるよ」とか、「受験で不合格になって泣くことになるよ」と子どもを脅しても、勉強しないものは勉強しません。
どうすることもできないんだったら、もうそもそも気にしないということが大事になります。
特にお父さんお母さんにとっては、ときに子供の失敗を見守る勇気も大事になってくるということです。
ついつい子供が失敗しないようにとか、テストで悪い点数を取って落ち込まないようにとか、受験で不合格になってつらい思いをしないようにとか、あれこれしてあげたくなってしまいますよね。
しかし、健全な親子関係と子どもの成長のためには、グッとこらえることが必要です。
ただし、できないことをずっと放置しておけば良いということでもありません。
子供にはサポートが必要です。
ではどういったサポートをしたらいいかですが、まず子ども自身が求めているサポートであることが必要です。
相手が求めていないのに勝手に押しつけるのはサポートではなく過干渉です。
これは特に注意しなければいけません。
そして、子供のお手本となるようなサポートであることが必要です。
親がこれをすると、子供は何を学ぶだろうと考えてみてください。
これをすると、「結局ママが何とかしてくれるじゃん」ということを学習して、親に頼りっきりになってしまうのでしょうか。
それとも「なるほどそうやってやればいいのか、じゃあ次から自分でやってみよう」という風にやり方を学習するのでしょうか。
もし後者であれば、それは健全なサポートと言えます。
子供が味をしめてしまって、毎回毎回結局親がやることになるというのは、健全なサポートとは言えません。
テストの前に「あれやりなさい、これやりなさい」と指示・命令をして、子供は渋々嫌々勉強をし、それでなんとか目の前のテストを乗り越えることを繰り返していっても子どもの成長にはつながりません。
そういったやり方をしている限り、子供は自分で次回のテストに向けて何をしたらいいか考える能力は育たないですね。
モチベーションという観点からも指示・命令はあまり意味がないことも気をつけましょう。
あれやれこれやれと指示をすると、最初のうちは言うことを素直に聞くかもしれませんが、だんだん嫌になってきます。
人間は人の言う通りに行動することが嫌いなようにできています。
ですからそのうち、うまくいかなくなります。
4年生の間はなんとかそれで乗り越えたとしても、5年生6年生と学年が上がるにつれてだんだん反抗期も入ってきますし、いろいろストレスも溜まっていきますし、崩壊することが目に見えています。
だから、指示・命令はしないようにしなければいけません。
代わりにどうすれば良いかというと、提案をすることです。
「お母さん(お父さん)はこれをするといいと思う。なぜならこういうメリットがあるからだよ。」
そうやってちゃんと理由を明確にして伝えます。
そのうえで、最終的に子供に決断させることが大事です
そして、子供の考え・子供の判断を尊重し、もし提案をした上で子供が「いやだ」と言ったら、「そうかじゃあしょうがないね」と受け入れることも大事になってきます。
子どもが自分の判断の元で行動し、もし悪い結果に終わったら、後から反省会をすればそこから成長に繋げることができます。
この結果をどう思う?
もう一度やり直せるとしたらどうする?
こうしたことを問いかけて考えさせましょう。
そして成功と失敗を繰り返しながら、子供自身が「こうしていったらいいんだ」と気付くのをサポートしていきましょう。
本当に言い方・伝え方っていうのは大事です
ちゃんとメリットを伝えること。
そして強制されてると感じさせない言い方にすること。
実際に強制はせず、子供が選んだものに対して「そうじゃないでしょう」みたいな否定的な言葉を言わないこと。
これらを意識していくことが、自分の課題と他人の課題を分離して、子供の自主性・自律性を育てることにつながっていきます。
まとめ
以上、アドラー心理学に学ぶ中学受験に大切な3つのことでした。
改めて前回と今回の内容のまとめですが、すべての悩みはつまるところ対人関係に行き着くというのがアドラー心理学の考え方でした。
・「承認欲求」をベースに対人関係を構築する
・「競争意識」をベースに対人関係をとらえる
・自分の課題と他者の課題を混同する
これらは対人関係の悩みの原因となるものですが、中学受験では本当にありがちなことばかりですね。
こういったものを手放していきましょう。
人の目を気にするのではなく、自分が行きたいと思う学校、子供を行かせたいと思う学校を選びましょう。
また、失敗をあるがままに受け入れましょう。
上位の方のクラスに在籍しているから優越感を感じたり、下の方のクラスにいるから引け目を感じたりするのはやめましょう。
そして子供の課題を自分(親)の課題と勘違いして、自分が必死になって子供のフォローしてるつもりなのに、子供がどんどん冷めていき、やらされ感満載で勉強に対して嫌気がさしていく状態に陥らないようにしましょう。
承認欲求や競争意識を手放し、課題の分離をしっかりやることで、子供の成長を純粋に楽しめるようになります。
失敗は失敗で子供の成長のために大切なプロセスなんだと捉えられるようになります。
そして、実際に子供が失敗を糧にして逞しく成長していく姿を喜べます。
そうなったら親子ともに幸せではないでしょうか。
後で振り返ったときに、やって良かったと言える中学受験にしていってくださいね。
※記事の内容は執筆時点のものです
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