中学受験ノウハウ 連載 公立中高一貫校合格への道

【タイプ別】作文を得点源にしよう! 取り組みの効果を最大化する方法|公立中高一貫校合格への道#6

2023年8月02日 ケイティ

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都立中学校など公立の中高一貫校には、いわゆる「入学試験」は存在しません。代わりに行われる「適性検査」を受(「受」ではなく)することで、6年間の一貫教育に「適性」があるかどうかを見られます。本連載では、公立中高一貫校を目指すうえで踏まえておくべきことは何なのか、私立受験とは具体的に何がどうちがうのか、公立中高一貫校合格アドバイザーのケイティさんにうかがいます。

こんにちは!公立中高一貫校合格アドバイザーの、ケイティです。公立中高一貫校合格を目指す、保護者のための「ケイティサロン」を主宰しています。

今回は、公立中高一貫校合格を目指す保護者の方へ、ご家庭でできる作文対策についてお伝えしていきます。

六年生に上がったばかりの頃は、いわゆる複合分野(社会や理科、算数などが合わさったような問題)の適性検査問題の対策で手一杯だったかと思いますが、そろそろ受検も後半戦。いよいよ、本格的に作文対策に乗り出す時期がやってきました。

ここで一度立ち止まり、お子さんの現状や課題、今後の作文強化の方針について考える機会を持つことが、非常に大切です。

というのも、作文は染みついた癖や根深い苦手意識などがあり、一朝一夕で何とかできるものではありません。

また、直前期になると日々取り組む理系分野もかなり難しくなってくるので、じっくりと作文と向き合う時間も取りづらくなります。

つまり、いまのうちから作文は土台作りから仕上げが見えるところまでは鍛えておいて、直前期は「あとは様々なテーマで書いて鉄板ネタを蓄積するのみ」という状態にしておくことが、理想的なスケジュールと言えるのです。

ですが、一体どこからどんな方法で作文のテコ入れをすべきなのか、手探りになってしまっているご家庭も、多いのではないかと思います。

作文対策には正解がありませんが、お子さんのレベルによって、より効果がある方法を選ぶことができます。

ということで今回は、月に150枚以上の作文を添削している立場から、ご家庭でできる効果的な作文対策についてお伝えしていきます。

【質問】お子さんの作文レベルは……?

まず、現状の作文レベルを次の3つに当てはめるとしたら、どうでしょうか?

  • 苦戦中
  • 書けるが点は不安定
  • 書けるし得点源と言える

たった3つという乱暴な分け方ではありますが、強いて言えば…、ということで考えてみてください。

一番上の「苦戦中」は、書くのも抵抗がある、自分から進んで書くことがない、時間切れで書き切れないこともある、平均点以下が多い、書かせようとしてもぼーっとしていることもある、話し言葉や漢字ミスといった細かなミスもある…このようなタイプが当てはまります。

次に、「書けるが点は不安定」は、書くこと自体は嫌いでないものの、テストによっては順位が大きくアップダウンする、テーマによっては主旨のズレが起こる、そつなく書いているものの「浅い」という評価をされる、前までは得意だったのに、受検生になってから急に苦手意識が出てきた……、このようなタイプです。

最後の1つは、作文で大きくコケるようなことは滅多になく、模試の作文で偏差値60以上を取る、学校での作文(読書感想文等)の機会では代表に選ばれた経験もある、というようなタイプです。

それぞれのステージによって対応すべきことは全く異なります。一般的な作文対策(書いて、添削して、の繰り返し)も大切ですが、今以上に効果を上げるのであれば、各段階に応じた取り組みをしていきましょう。

【タイプ①】苦戦中……

まず1つ目の苦戦中の子についてです。ご想像の通り、この段階は最も手厚い干渉をしないといけません。集団授業や作文の問題集で何とかなる、とは思わず、「今月は作文をメインに対策しよう」と強化月間を定めて、しっかりとしたフォローで土台を作っていきましょう

私はよく「お膳立て段階」と呼んでいるのですが、この段階の子は何をどう書いていいのやら、というところから悩んでいるため、書く事を決めるところまでは、保護者の方が一緒に作成してあげてください。

というのも、「満足のいくものを一つ仕上げた」という経験値が少なく、作文=大変、難しい、できない、という感覚が根深いため、その状態で「書いてみて」というのは酷ですし、苦手意識を強くしてしまうからです。まずは「書けた!」を積み重ねることが最優先です。

一緒に文章を読み、条件を確認し、各段落にどんな内容を書くか、ここまでは親子で話し合いをしながら決めていきます。内容はほぼ保護者の方の誘導でも構いません。ゴールは、それなりの完成度だと自分でも思えるものを書き切ること、だからです。

段落構成が決まったら、そこで初めて「書いてみよう」と促してください。また、字数に関しては、まずは気にせず書かせてみてください。良いものを書くのと、制限字数にあわせた調整をするのは、また別の段階だからです。 内容も気を遣いつつ字数も気にしながら……となるとハードルも上がるので、最初のうちは「正しい言葉遣いで、決めた内容通りに、丁寧な字で書く」をゴールにします。

作文が苦手な子に対して家庭でやってしまいがちなのは、内容面も、言葉遣いも、誤字脱字も、全部一気に指摘することです。これだと指摘された方は完全にキャパオーバーになりますし、定着もしづらいです。 一番直すのが大変な内容面は事前に親子で決めてしまって、指摘するのは細々した表現の部分だけで済むようにすることで、書き終えた後の負担も減らし、次の一本につなげやすくなります

【タイプ②】それなりに書けるが得点は……

次に、書くことの抵抗感はあまり無いものの、点数のアップダウンがある子の場合の取り組みです。この段階であれば、ある程度「書き慣れ」も出ていることでしょう。

「書き慣れ」段階で注意したいのは、参考書や模試の解答例を模写したり、塾で教わったりして習得した「型」に当てはめることも上手になっているという点です。

まず主張をして、そのあと理由を述べて、具体例の書き出しはコレで、結論はこんな始め方で……。こんな風に、判を押したように同じ形式の作文を、よく見かけます。

型にはめて書くのは楽ですし、パッと見た感じでは仕上がっているように見えるのですが、教わったテンプレートに当てはめることがゴールになってしまって、一つ一つの文には中身がないことも多いです。

たとえば、2文目は「なぜなら、~です。」という書き方を教わって、いつもその形に当てはめる、といったケースです。 そもそも理由は求められてない問題なのに「なぜなら…」と書いていたり、「なぜなら…」の後が全く理由になっていない内容を続けて書いていたりします。

手段と目的が入れ替わってしまっている典型的な例で、本人は無意識に型にはめて満足してしまい、条件の徹底や、中身の精査という大事な作業の優先度が下がっていると言えます。

ある程度書き慣れるまでは型にはめることは有効ですし、うまくはまれば早く書きあげることもできます。しかし、そんな機械的な作文で点が取れたのは公立中高一貫校が開設された初期だけで、いまは、内面を掘り下げて必死に捻り出したような自分自身の言葉による文章が求められているのです。

「なんだかいつも同じような書き方をしているな」と感じたら、本当にその型は必要なのか、ただ当てはめるだけになっていないか、注意してみるようにしてください。

さらに、サクッと20分以内で400字程度が書けるようになってくると、いよいよ深掘りのトレーニングも必要です。 そつなくミスなく書けたとしても、「なんだか浅いなぁ」と感じることが多いのであれば、掘り下げる方法がよくわかっていない可能性があります。

結論が決まったあとは、常に、「なぜ?」「なんのため?」「それをするとどうなる?」「それをしないとどうなる?」を考えるよう促してください。

ある男の子の作文の例です。 人間が管理する人工林の割合が増えており、自然豊かなところも、実は人の手が入っている疑似的な自然である、という文章の内容を受けて意見を出す作文で、「疑似的な自然を本当の自然だと思っている人が増えてしまうため、手つかずの森林も残してほしい」という方向性で書いていました。

字数としては充分埋めていたのですが、なんだか浅く、印象に残らない作文でした。何度か聞き取りをしてみると、「なぜ、そうなると困るのか?」「なんのために残すのか?」「自然林を残すと、どんな未来になるのか?」「残さないとどんな未来になるのか?」を自問自答する前に書き始めてしまったことが分かりました。

これは、この子に限らず非常によくある話で、「こういう主張をしよう!」と決めてすぐに書き始めてしまって、「だからそれはどうして?」という根本的な疑問が読み手の中にモヤモヤと残ってしまうのです。 主張の根拠となる部分は、一度「なぜ」と考えただけでは掘り起こせません。理由の奥にまだ次の理由が埋もれていないか、何度も問い直すことで、やっと出題者が求めるレベルの根拠を作ることができます。

なぜ?なぜ?なぜ?……を、もう何も浮かばなくなるまで繰り返すことで、自分が本当に言いたかったことの輪郭もはっきりしてきます。 誰が読んでも感心するような内容が書ける子は、この「深堀り」を感覚的に理解しています。もしくは、日頃からそのような視点で物事を見ているため、作文にも説得力があります。

そつなく書ける段階の子は「早く仕上げる」ことの優先順位が上がっていないかどうか、チクチクと内容面の指摘をする必要があります(嫌がられますが……)。 でも、型に頼らず書ける力と、深掘りする力が付けば、ライバルの中でも際立つ作文にしていくことができます。

【タイプ③】作文は得意分野!

最後に、すでに作文を得点源に出来ている子の場合です。

公立中高一貫校は総合得点で判断とはいいながらも、理系の方が配点が高かったり問題数が多かったり、理系問題の難易度が高くそこで差を付けたりと、どうしても理系が強い子の方が優遇されます。

しかしながら、例年、複合分野はいたって平均点(か、ちょっと低いくらい)でも、作文でほぼ満点を叩き出し、そのリードを守って総合得点で合格ラインをクリアして受かる子も結構います。

作文がすでに強みになっているということは、このような作文突破型の戦略も取れるということになるので、とても頼もしい状態と言えますし、複合分野対策にじっくり時間を割ける余裕も生まれます。

もちろん、どんなに作文が得意でも他の分野があまりにもボロボロであれば厳しくなってしまいます。ご家庭での取り組みにおいて、強みの作文は「維持すること」が当面の方針であり、その他の分野の底上げに時間を取ってもらいたいと考えます。

ご家庭で作文に時間を取る際は、主に2つのポイントで取り組みを決めるようにしてください。一つは、ミスを完全にゼロにすること、もう一つは、不得意なネタに集中すること、です。

せっかく良い内容が書けていても、一つ小さな漢字ミスがあれば、それだけでも順位は一気に動きますし、採点者の心象も下がり、見た目の失点以上のダメージがあります。

細かいミスも絶対に見つけて自力で修正する、という気合を持ってもらうためにも、ミスにこだわってそれを履歴に残し、目に付くところに貼っておいてください。

また、作文が得意な子でも、どんなテーマでもパーフェクト!という子は少ないです。筆者の主張がはっきりしているような文章は得意だけれども、何が言いたいのかよくわからない随筆は苦手、女子が主人公の物語文が使われると何だか心の機微がよく分からない、二つの文章の共通主旨を読み取らないといけないようなタイプは苦手、今と昔を対比させているような文章は苦手…など、不得意な切り口が一つはあるものです。

この「弱いテーマ」を探し、似たような文章を問題集や模試、過去問から集め、取り組ませるのも保護者の大切な役目です。

あくまでも「維持」が最優先であるため、大量に書かせたりチェックしたりする必要はないからこそ、テーマを厳選する時間を取るようにしてください。一回の作文で「何が出ても大丈夫!」な状態を目指し、より強固な作文力を身に付けてもらいましょう。

塾の作文対策講座や、模試を受けたときに、「よく書けている」や「A+」といった、問題ナシの評価のみで特に何かしらフィードバックが得られないことも、このレベルの子にはよくあることです。 だから大丈夫、と安心してしまうのではなく、保護者の方だからこそ気付ける目で、模試の振り返りや親子の会話を通して苦手テーマのあぶり出しと補強につなげてください

さいごに

さて、今回はお子さんの作文レベル別の取り組みをご紹介しました。

作文は保護者の方が関わって初めて気づく課題もたくさんある分野です。

また、集団ではなかなか伸ばすのが難しく、また同時に、書いてから添削までの期間が空くのも伸びづらい原因の一つです。

個に特化した継続的なフォロー、そして、書いてすぐチェックできるという二つの強みが保護者添削にはあるので、ぜひ自信を持って関わってください。

見る方は大変ですが、書く方は、もっと大変です。 指摘することは多々あったとしても、書いたことを認め、大いに褒めながら、二人三脚で伸ばしていきましょう!

※記事の内容は執筆時点のものです

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