中学受験ノウハウ 連載 公立中高一貫校合格への道

公立中高一貫校の合否の鍵を握る! 重要な報告書(調査書)について徹底解説|公立中高一貫校合格への道#5

2023年7月12日 ケイティ

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都立中学校など公立の中高一貫校には、いわゆる「入学試験」は存在しません。代わりに行われる「適性検査」を受(「受」ではなく)することで、6年間の一貫教育に「適性」があるかどうかを見られます。本連載では、公立中高一貫校を目指すうえで踏まえておくべきことは何なのか、私立受験とは具体的に何がどうちがうのか、公立中高一貫校合格アドバイザーのケイティさんにうかがいます。

こんにちは!公立中高一貫校合格アドバイザーの、ケイティです。公立中高一貫校合格を目指す、保護者のための「ケイティサロン」を主宰しています。

公立中高一貫校に出願する際に同封しなければいけない書類の一つに、「報告書」があります(エリアによっては「調査書」とも呼びます)。

東京都のように報告書の比重を公開しているところもあれば、報告書については詳細が非公開で、謎に包まれているところもあります。

エリアによって扱いは様々ですが、合否を決める総合得点のうち、決して少なくない割合を報告書が占めている学校もあり、適性検査の合格者最低点を不合格者最高点が上回ることも当たり前に起こるのです。この現象を、「報告書の下剋上」と私は呼んでいます。

せっかく一生懸命適性検査対策をしてきたからには、「報告書の下剋上」をされることがないようにしたいものです。

けれども、努力で何ともしようがない部分ももちろんあり、学校の考え方や先生との相性によっても左右されるのが、評価の難しいところですが、意識すべきポイントがいくつかあります。

ということで今回は、「目指せ報告書アップ!」というテーマでお伝えしていこうと思います。

そもそも…報告書と通知表の違いは?

まずは、報告書は一体何を参考にして付けられるのか、について説明します。 少し難しい話にもなるのですが、報告書と通知表は、全くの別ものです。

その前に、「要録」と呼ばれる公簿について、知って頂く必要があります。なぜなら、この要録の数値で報告書は作成されるからです。つまり、要録=報告書、だと考えてください。

要録は、学校が必ず作成しないといけない各学年の記録で、保護者や生徒に見せる目的では作っていません。

あくまでも、生徒のありのままの実力に関する評価や所見、その他様々な情報が記録されています。

対して学期末にご家庭に配られる通知表は、生徒の頑張りや改善点を保護者に伝える手紙のような位置づけで、学校ごとに自由に作成されてきたものです。

そう考えると、要録の方が少し「辛め」に付けられる可能性があることは、ご想像頂けるかと思います。

「通知表よりも報告書が低い!」という悲鳴(のLINE)を毎年頂くのですが、3段階評価の通知表で一番良い「3」の数よりも、報告書の「3」の数が少ないケースも、普通にあるのです。

とはいえ、最近は、先生の評価の手間を減らすためにも要録と通知表を完全一致にしても(慎重な判断をしたうえであれば、という前置きはありますが)NGではない、ということにはなっています。

また、通知表がパーフェクトなのに要録がボロボロ、もしくはその逆、ということは考えづらく、おおむね評価は一致しているはずですから、ブラックボックスのような報告書を攻略するためにもまずは、学期ごとに貰える通知表の底上げを狙うのが一番確実です。

評価基準については、「Aを付けるのに必要なレベルの例」「クラスにおけるA、B、Cの分布目安」など、保護者説明会ではっきりと説明している学校が多いです。

その方が、保護者としても納得いきますし、透明性があるので不満も出づらく、クレームを防ぐことにもなりますよね。

ただし、評価基準が公開されたところで、「実際、どんな取り組みをしたらいいの?」という具体的な例があった方がお子さんにもアドバイスしやすいかと思うので、紹介していきますね!

ちなみに、報告書は、本来は封緘されていて中を見ることはできません。なのですが……、例年、光に当てて透かしたりして報告書の中身を見る方がとっても多いです。作成された報告書はもう変えようがないですし、仮に想像を下回るスコアがうっすら見えた場合、超直前期にメンタルをかき乱されてしまって、全くメリットがありません。気持ちはすごく分かりますが、透かして見ようとはせず、エイっと出願用の封筒に入れるようにしてくださいね!

通知表アップの基本!カラーテストで90%以上を目指す!

通知表を見ると、各科目3段ずつあり、「知能・技能」、「思考・判断・表現」、「主体的に学習に取り組む態度」という順に並んでいます。

言葉が抽象的なので、具体的な単元で紹介したいと思います。たとえば、六年生の算数で習う「対称な図形」を例に挙げると、

<評価基準(例)> ①知能・技能 (線対称)折り目を軸としてぴったり重なる事や、対応する点を結ぶ線と対称の軸は垂直に交わることを理解している。 (点対称)対称の中心Oを中心として180度回したときに重なることや、対応する点を結ぶ線は全て中心Oを通り、図形を二等分することを理解している。 (作図)線対称な図形や点対称な図形を書くことができる

②思考・判断・表現 既習の図形を対称という観点から捉え直し、分類したり特徴を見出したりしている。 図形を構成する要素を考察し、線対称、点対称の図形の性質を見出している。 線対称、点対称の図形の性質をもとに、図形の書き方を考えている。

③主体的に学習に取り組む態度 対称な図形を、簡潔・明瞭・的確に描こうとしている。 図形の美しさ(均整のとれ方や安定性)に気付いている。 対称な図形を身の回りから見つけようとしている。 (※文部科学省国立教育政策研究所「「指導と評価の一体化」のための 学習評価に関する参考資料」より。)

このようになっています。①、②、③と下にいくにつれて、ただ知識として知っているだけでなく、そこから一歩ずつ掘り下げて何か気付きを得ようとしているかどうか、自分でもやってみよう、探してみよう、という意欲や、学習に真摯に向き合う姿勢や日常生活と関連付ける発想が見られていることがわかりますね。

このように、単元ごとに細かく評価基準の例が設けられているのですが、実は「知能・技能」と「思考・判断・表現」は、ほぼ、カラーテストで機械的に決まります。 (「思考・判断・表現」については、カラーテストだけでなく話し合いや発表、作品の制作等も関係するので、あくまでも「ほぼ」とします。)

カラーテストという言葉が聞きなれない方もいるかもしれませんが、小学校で行われている、少し大きめで、カラフルなテストのことです。

カラーテストの得点を書く欄に、「知能・技能」や「思考・判断・表現」といった記載があり、そこに点数が書かれているはずです。

大体の学校では、正解率90%以上がA、それ以下ならBとなります。(Cはクラスに1人か2人なので、今回Cについては割愛します)

このように、「知能・技能」「思考・判断・表現」は主にカラーテストによる機械的な判定になるため、先生の主観が入りづらい部分と言えます。

学期や科目によっては単元ごとのテストが少なく、ちょっと低い点を取ってしまうと一気に平均が9割を下回ってAを逃すこともあります。

また、「思考・判断・表現」に設定されている問題はカラーテストの後半や裏面に載っていることが多いのですが、応用問題もあり、常に満点…というわけにもいきません。

仮に、上から順に「B、B」と二つ並んでいる場合、まずはカラーテストでしっかり高得点を取るために、復習をする時間を取ったり、市販の教科書ワークを使って定着を図ったりしてAを目指すようにしてください

都立中の場合は、報告書で2を取った科目が仮に3を取れていれば、総合得点に換算すると0.3%~0.6%ほどアップします。とても小さな小さな変化かもしれませんが、2が3に変わる科目が増えれば、ちりも積もって数点分の差になりますし、その数点で合否が分かれることもあるのです。

適性検査で数点あげることがどれだけ難しいことか、その数点伸ばすためにどれだけ努力を積み重ねているかを考えてみてください。それが報告書でひっくり返されると悔しすぎるので、カラーテストを地道に頑張って9割以上をキープすることを常々言い聞かせつつ、日頃のテストの点数を確認しながらテコ入れの必要性を感じたときは教科書ワークを導入です。

最近は、「ちびむすドリル」など、非常によくできた無料の学習プリントもあるので、そういったインターネット教材を使用するのもいいですね。

評価が問われるタイミングを見逃さない!

通知表には「主体性」に関する項目がありますね。ここが、みなさんモヤモヤするところではないでしょうか。

いつ、どんな風に主体性が見られているのか、その評価軸は何なのか、「主体性」という抽象的な言葉のイメージもあって、なんだかつかみどころがないですよね。

実は、先生が評価をするタイミングというのは、ある程度見抜くことができるのです。そのタイミングになったときは特に積極的に意見を出すなどして、戦略的に評価アップに繋げて頂ければと思います。

あえて「タイミングを見てアピール」と言う意図は、合格するために少しでも評価をあげてもらいたいという気持ちはもちろんあるのですが、そうはいっても、五、六年生の子ども達に、登校から下校までずっと評価の目を気にして学校生活を送って欲しいとは思わないからです。

そのため、評価されているタイミングを見抜けるようになって、普段通り学校生活を楽しみつつ、評価のときは普段以上にしっかりと発言するなどして、メリハリをつけたアピールをしてもらいたいと思います。

中央教育審議会の「平成 29・30 年改訂の学習指導要領下における 学習評価に関する Q&A」によると、次のように書かれています。

特に,「主体的に学習に取り組む態度」の評価に当たっては,「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善を図る中で適切に評価できるようにしていくことが重要です。具体的には,例えば, ・児童生徒が自らの理解の状況を振り返ることができるような発問の工夫をしたり, ・自らの考えを記述したり話し合ったりする場面や他者との協働を通じて自らの考えを相対化する場面を単元や題材などの内容のまとまりの中で設けたり することなどが考えられます。

評価は、日々細かく付けるものではなく、ある程度単元のまとまりごとに付けるので、一つの単元のまとまりが終わるときに、「どんな気付きがありましたか」「他の人のアイデアを聞いて、どう思いましたか」「今回、~~さんの発表を聞いて、発見があった人はいますか」など、先生に質問されることがあるはずです。

小学校の学校公開時に見ていると、せっかく先生がこの振り返りの質問をしても、ただ「〇〇さんの考え方がいいなと思った」という感想程度で終わってしまっていることや、そもそも手すら挙げない子もいます。

授業中に起こる先生からの質問は、理解を問う質問(「この問題の答えは?」「〇〇について知っていますか」等)と、振り返り・相対化のための質問(得られた気付きや、他の人の考えを知ってどう考え、自分の考えにどんな影響を与えたか)があります。

後者の問いかけがあるのは基本的に授業の最後ですし、前者の質問とは明らかに種類が異なるので、高学年の子であれば「あ、今は評価される質問だな」というのが分かるはずです。

気付いたら常にとは言いませんが、積極的に発言するようにするといいでしょう。

積極的な挙手だけが全てではない!

さきほどの内容と少し矛盾するようですが、授業中に積極的に手を挙げるからといって、それが全てプラス評価につながるわけではありません。

公立中高一貫校を受検するご家庭の多くは、日頃から学校生活も何かと気にかけて過ごしていることもあって、「たくさん手を挙げるように」「とにかく積極性をアピールしなきゃ」と思いがちなのですが、先述した通り、ここぞという時に、質の高い発言をすることが重要なのであって、頻度は問題ではないのです。

この話、保護者の方はお分かりいただけると思うのですが、子ども達は「とにかく手を挙げなきゃ」「ノートをしっかり取らなきゃ」と、頻度や形式にばかり意識がいきがちです。 (その結果、瞬発的に手を挙げて、当てられてから慌てて発言を考えることも…。)

平成31年に報告された「児童生徒の学習評価の在り方について」という資料によると、「学習評価について指摘されている課題」の一つに、次のような内容が挙げられています。

挙手の回数や毎時間ノートを取っているかなど、性格や行動面の傾向が一時的に表出された場面を捉える評価であるような誤解が払拭し切れていない。

つまり、生徒自身が、「科目に対する意欲」よりも、「授業に真面目に取り組むという意欲」の方が大事だと思い込んでしまって、 本来評価するべき点とすり替わってしまっているのです。

この課題について、次のような解答が出ています。

単に継続的な行動や積極的な発言等を行うなど、性格や行動面の傾向を評価するということではなく、各教科等の「主体的に学習に取り組む態度」に係る評価の観点の趣旨に照らして、知識及び技能を獲得したり、思考力、判断力、表現力等を身に付けたりするために、自らの学習状況を把握し、学習の進め方について試行錯誤するなど自らの学習を調整しながら、学ぼうとしているかどうかという意思的な側面を評価することが重要である。

そして、さらに追加で、

① 知識及び技能を獲得したり、思考力、判断力、表現力等を身に付けたりすることに向けた粘り強い取組を行おうとする側面と、 ② ①の粘り強い取組を行う中で、自らの学習を調整しようとする側面、という二つの側面を評価することが求められる。

とあります。

重要なのは、表面的な行動ではなく、粘り強く取り組む姿勢と、その中で学習の調整ができたかどうか(自分から目標を設定し、達成にむけて「プラスα」の取り組みが出来たかどうか)なのです。

学習の調整、という言葉は難しいですが、低学年のときにプリント等に必ず書かれていた「めあて」を思い出してください。

ほとんどの授業で、「今日の『めあて」はこれですよ」という前置きがあったはずです。 これは、ただ慣習としてあるのではなく、児童自ら目標を立てることができるのは、「一般に抽象的な思考力が高まる小学校高学年以降からである」とされているため、低学年のうちは先生が都度、「めあて」を提示しているのです。

ということは、高学年になったら自分で目標を考え、それに向かって自分なりに様々な工夫・試行錯誤を粘り強く行うことが求められているということです。

また、特に気を付けたいのは、①、②、「二つの側面」で評価される点です。粘り強いのに学習の調整ができない、ということはなく、同時に、学習の調整もしていないのに粘り強さはある、ということもありません。

つまり、一方が高い子は、もう一方も高く、そのような子がA評価に値します。

(※児童生徒の学習評価の在り方について(報告) (mext.go.jp))

この「主体的な態度」については、重要な点がもう一つあります。

それは、「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3つの観点に大きなばらつきはなく、「知識・技能」 や「思考・判断・表現」の観点の状況を踏まえた上で、主体性の評価が行われる点です。

どういうことかというと、「知識・技能(いわゆる基礎の知識定着部分)」と「思考・判断・表現(いわゆる応用力の部分)」が「A、A」なのに、「主体的な態度」が「C」ということはなく、同時に、その逆(例:「C、C、A」)もない、ということです。

これを逆手に取ると、カラーテストによる評価の比重が高い2項目(「知識・技能」と「思考・判断・表現」)をしっかり底上げすることで、主体的に学習に取り組めている、という評価にもつながることを意味しています。

だからこそ、冒頭の話にも戻りますが、学校のカラーテストがどの程度取れているかチェックをして、対策の必要があれば積極的に親子で話し合って頂きたいと思います。

まとめ

さて、今回は報告書アップに繋げるために、意識すべき事がらについて紹介しました。

四六時中、先生からの評価ばかり気にして過ごすのは本末転倒だとは思いますが、そうはいっても、報告書に大きな不安がない状態でペーパーテスト(適性検査)対策に専念できた方が精神的にもいいので、できることから取り入れてみてください。

また、大きな書店に行くと、先生向けのマニュアルが多数見つかると思います。「要録の付け方」や「評価の基準や例」について書かれた本に目を通すだけでも、先生が普段どんな視点で生徒を見ているのか、評価しているのか、知ることができますよ。(マニュアルといってもカラー満載で、非常に読みやすいです! イマドキですね。)

私自身、要録の付け方についてのマニュアル本を読んで、「保護者面談等で知り得た家庭での様子を、要録を付けるうえで参考材料の一つにしてもよい」と知ってからは、受検生保護者のサロンメンバーさんに「保護者面談では、お子さんの積極性アピールも織り交ぜてくださいね!」とお伝えするようにしています(笑)

ついつい、「うちの子、家では全然ですよ~」なんて謙遜しがちですが、「算数の自主学習は、すごく楽しそうに取り組んでいて、色々自分で調べたりしているんですよ」「社会で習った〇〇が面白かったみたいで、最近、資料館に行って自分でノートにまとめているんですよ」なんてアピールが出来れば、素晴らしいですよね!

ぜひ、評価のタイミングやコツ、材料を把握して、戦略的に評価アップに繋げてくださいね。

※記事の内容は執筆時点のものです

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