中学受験ノウハウ

【埼玉県】2023年度中学入試結果と大学合格実績との関係|データで見る中学受験#1

専門家・プロ
2023年8月19日 佐藤潤平

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新連載「データで見る中学受験」は、中高の教育データ解析・分析のスペシャリスト佐藤潤平さんが、客観的なデータをもとに、なるべく中学受験を客観的に読み解こうとする試みです。

まずは当面、2023年度中学入試の結果と大学合格実績のデータから、中高一貫校の人気に、大学合格実績がどのように関係しているかを考えていきます。

少子化が叫ばれる中でも、首都圏の中学受験者数は2023年度受験でもまだ増加という結果でした。

しかし、各中高一貫校の受験者数の増減は当然、一様ではありません。学校の種類によっても、また同じ首都圏でもエリアによって、違う動きを見せています。

各校の中高一貫校としての人気を測る指標ともなる中学受験者数のデータと、進学校としての実力を測る指標ともなる大学合格実績のデータを突き合わせると、何が見えてくるでしょうか。

首都圏の中高一貫校を、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県とエリア別に分析していきたいと思います。

今回は、埼玉県です。

【2023/9/20追記】記事内で分析に使用している「2023年度首都圏中学入試結果と大学合格実績との関係_入試結果・大学合格実績」のエクセルデータを、中学受験ナビ会員特典として、「マイページ」からダウンロードいただけるようになりました。

気になる方は、ぜひ会員登録(無料)の上でご利用ください。記事の末尾でもくわしくご案内しています。

埼玉県の2023年度 中学入試状況(1/10~12)

4都県で最初に中学受験(一般入試)の口火を切る埼玉。

入試の前哨戦として、東京や神奈川、千葉から受験者が集まる学校もあり、2023年度も昨年に引き続き1,157名受験者増となりました。

ただし、他都県からの受験生が増えていることから、それに合わせて各校が合格者数も多めに出す傾向にあり、実倍率は前年並みとなっています。

男女共学の内訳をみていくと、特に共学校で受験者数が伸びており、また学力中堅上位校でその傾向が顕著にでていました。

▼共学校

▼女子校

▼男子校

※各グラフのA~Hは、中学受験の難易度帯を示しています。
 Aが最も難易度が高く、Hが最も低いです。2023年度四谷大塚80%偏差値に基づく難易度帯
 ⇒A:65以上、B:64~60、C:59~55、D:54~50、E:49~45、F:44~40、G・H:39~

※各グラフの棒グラフは受験者数(左軸)、折れ線グラフは受験倍率(右軸)を示しています。

進学校の大学合格実績の推移と平均との比較を見る

進学校と呼ばれる学校は、有名難関大学に卒業生を送り出す学校でもあります。大学進学実績の高さが受験生の支持を集める一方で、進学実績以外の要素が中高一貫校としての人気に影響していると思われるケースも存在します。

例えば、先進的な教育内容を採り入れている、生徒一人ひとりに目を配る面倒見の良さがある、といった理由などで、大学進学実績がそれほど高くないのに、中学受験で人気が高く、偏差値が高くなる、というケースです。

ここでは進学校の2020年度・2021年度・2022年度の大学合格実績を、大学群ごとにレーダーチャートに落し込みました。比較のため、首都圏全校の平均、中学受験の難易度をA~Hに分けた場合に属する難易度帯の学校の平均もわかるようにしています。

志望校選びの一助となれば幸いです。

このレーダーチャートから以下の3つのことが確認できます。

  1. 各大学群の合格バランスを確認できる:どの大学群に多く合格者を出しているか
  2. 経年変化を確認できる:2020年度・2021年度・2022年度でバランスがどのように変化しているか
  3. 平均との差を確認できる:「1都3県全ての学校を対象とした平均合格割合」と「各校の難易度と同じ難易度帯の平均合格割合」との比較(2022年度)

この2022年度の大学合格実績を踏まえて、2023年度中学受験における主要3日間の受験者数の増減を合わせて見てみたいと思います。

【レーダーチャートの読み方の例】

※実線:■2022 ■2021 ■2020
 点線:全ての学校を対象とした平均合格割合
 グレーの網掛け:各校の難易度と同じ難易度帯の平均合格割合

神奈川男子御三家の一角を占める、聖光学院を例にあげて説明しましょう。

2020年から2022年にかけて「東京大・京都大」と「旧5帝大(大阪大・名古屋大・北海道大・東北大・九州大)・一橋・東京工業大・筑波大」への合格割合が伸びる一方、「国公立医学部」は減少傾向にあることが分かります。また、「1都3県に本校がある大学」に合格する生徒が50%を超えています。

聖光学院の入学時偏差値は65以上で、学力難易度帯「A」の学校群に当たりますが、高校卒業後に国公立大学へ進学する生徒は、学力難易度帯「A」の学校群の平均を、全項目で上回っています。私立大では、ほとんどの生徒が早稲田大・慶應義塾大・上智大・東京理科大・国際基督教大に合格していきます。

① 大学合格実績の受験者増への貢献度が高いと考えられる学校

ではいよいよ、各校のレーダーチャートを見ていきましょう。

すべての学校というわけではありませんが、行われている教育の特徴や、合格実績の推移に影響を及ぼした可能性のある要因の考察なども、できる限り解説しています。

まずは、中学受験者数が増えていて、かつ、大学合格実績が顕著に伸びている学校からご紹介します。

【学力難易度…A:偏差値65以上、B:偏差値64~60】

● さいたま市立浦和

国公立大合格が着実に伸びてきており、その中でも旧5帝大一橋東工筑波大の合格割合が高まってきています。大学入学共通テストのフル受験を推奨していることから、国公立大を意識する生徒が増えていると推察されます。

また、2020→2022で早慶上理ICUとGMARCHの伸びが顕著です。コロナ禍においても、オンライン活用や交換留学生の受け入れといった国際教育を注意深く進めるなど、総合的な探究の時間が上手に使われており、結果的に総合型選抜のトビラも無理なく開かれているのでしょう。なお2023年度入試より、適性検査Ⅰの問題の一部に英語が導入されています。

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佐藤潤平

佐藤潤平

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(株)Levier(ルヴィエ) 
カルチャースクール紹介誌、大手新聞、ラジオ番組、進学情報誌等の企画・編集・制作を経て、中高の教育データの解析・分析、思考力・判断力等の評価方法の開発などを手がけている。また学校・塾のコンサルティング、受験に関する種々のリサーチやソフトウェアの制作などを行う森上教育研究所 高校進路研究会を主宰している。