中学受験ノウハウ 発達障害・グレーゾーン

発達障害&グレーゾーンの子どもの中学受験、保護者の注意点や心構えとは?

専門家・プロ

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子どもの発達に不安があるから、中学受験にチャレンジする。

今、そんな選択をするご家庭が増えています。

とはいえ、「わが子は本当に中学受験を走り切れる?」「受験勉強のフォローはどんな風に取り組めばいい?」など、分からないこと・心配なこともたくさんありますよね。

そこで、不登校・発達障害の子どもたちの個別指導塾「きらぼし学舎」を運営され、書籍『発達障害&グレーゾーンの子の「できた!」がふえる おうち学習サポート大全』を上梓された植木希恵先生から、【発達障害の子どもと中学受験】をテーマにお話を伺います。

中長期的視野に基づく中高一貫校の教育は、子どもにかかるストレスが少ない

­­――発達障害・グレーゾーンの子にとって、中学受験をすることのメリットやデメリット(あるいは注意すべき点)があれば教えてください。

地域性(公立・私立の特色や違い、住民の意識など)もかなり関係してくるとは思いますが、私が発達障害の子どもさんに対して、あえて中学受験を勧めるのは2パターンあります。

まず、その子の成長を中高6年という中期の長さでみてもらえる方が良いと判断した場合。

もう一つは、不注意傾向が強く、提出物を出すのにハードルが多いことで、高校受験をする際に選択肢が狭まりすぎたり、その子にとってストレスが大きいと考えた場合です。

6年というスパンでじっくり成長を見ると、提出物などは1回1回が練習になりますが、中学卒業までの3年で区切ってしまうと1回分の重みが大きく、受験に響いてしまいます。特性上、練習が必要な子どもたちにとって、それは余計なストレスとしか思えないからです。

――では、子どもの特性に合った学校を見きわめるために、親はどういった視点で学校をチェックすべきでしょうか?受験校選びのポイントをアドバイスお願いします。

周囲が口を出さなければ、ほとんどの子どもさんは自分で「いいな」という場所を直感で決めてきます。

個人的な経験ですが、ほぼ直感でいいと思ったり嫌だと思ったりしたのを大切にしてあげて、あとで大人と一緒に戦略を立てる方が上手くいっていると感じます。

気持ちのムラはあって当たり前!「やる気」に頼らない環境づくりを

――気分の落差が激しく、やる気にムラがあるのも発達障害の特性のひとつといわれます。スケジュール通りに勉強が進まないなど、思い通りに進まないときでも親子がポジティブにいられるための心がまえを教えてください。

やる気のムラは誰しもあるものです。大人だって、そんなにいつもやる気満々ではないですよね。多くの人が、先のことを考えたり、誰かが困らないようにとか喜んでくれるといったことを想像したりして、なんとか自分を動かしています。

そこで、まずは、「やる気というものがなくてもできるように環境を整える」「やる気に頼らない環境づくりを考える」のが良いのではないかと考えます。(これは大人にも当てはまります。モチベーションに頼らないことで、「思い通りにタスクが進まない」という事態をなるべく避けることができます)

いつもだったら机に向かって書くという勉強スタイルだけど、なぜか今日はぐずぐず言って全然集中しない。どうしたもんか……。

という困ったシーンは、私も生徒さんたちと勉強しているとよく遭遇します。

そんな時、まずは、先を見通す。これをやるとどうなるのかを明確にする。次に、やるときのハードルを取ってしまう。下げるのではなく、取る。書くのではなく口頭で答える。漢字の読みは読むだけにする。など、「こうでなければならない」という固定観念を捨てて、本人が心地よく勉強に向かうことができる環境を整えてあげるのです。

ただ、こういう試行錯誤をやろうと思ったら、日頃の元気な時に子どもと信頼関係を築いておくことが欠かせません。

例えば「頑張った時に嫌味ではなく労いを伝える」「最初に決めた勉強が終わったら、それ以上のことはやらない」「終わった時に『今日も頑張ったね〜』と言う」など、小さなことが困った時に生きてきます。

――ご著書『発達障害&グレーゾーンの子の「できた!」がふえる おうち学習サポート大全』の中で、学校の長期休み中の「計画表づくり」について詳しくアドバイスされていましたね。こちらは、中学受験に向けた中長期的な学習スケジュールにアレンジできそうだと感じられました。

中学受験、私自身も30年前にチャレンジしたことがあるのでなんとなく想像できます。出題範囲が広い分、計画的に学習しないと入試本番に間に合いませんよね。

けれど、発達障害のあるなしに関わらず、子どもは時間軸で考えるのがまだまだ難しいです。

巻物スケジュールを受験まで、一ヶ月、とある程度のまとまりを持ったスパンで作ってみるのは良いかと思います。それで、楽しみなことも入れてスケジューリングすることをおすすめします。

私も毎月自分の時間を一ヶ月ガントチャートに入れますが、思いのほか時間ってないものです。なので、まずは楽しみなことを先に入れる。そこに、日々やるルーティンなどは組み込めそうです。また、定期的に予定の見直し日なども作ってみると良いかと思います。

受験はとにかくストレスや時間との戦いだと思います。自分が何をどのくらいやれば良いのかを毎日1回悩むより、月に1回悩んで細かく決めて一ヶ月は何にも考えずにそれに従っていく方がストレスは少ないです。悩む回数を減らすのはとても大切なことです。

中学受験を自立のステップにするためには?

――定型発達の子どもでも、中学受験には親の学習サポートが必要といわれています。発達に不安がある子だとさらに手厚いフォローが必要になるでしょうが、中学受験を自立へのステップにするためという視点では、どういった意識で普段のサポートに取り組めば良いでしょうか?

私は勉強のサポートは勉強に集中できるようにフォローしつつ、生活的なサポートは手を離していくことだと考えています。

「自分の意思を伝える(お店で注文する、医師に症状を話す)」「自分のものの管理をする(靴を片付ける、食べたものをシンクに下げるなど)」といった生活的なことを自分でできるように手順を【見える化】する(絵を使う、自分で思い出せるように書いておいていつでもみられるようにするなど)アシストをしていくことが必要だと思います。

また、発達障害の子どもたちは、よくわからないことを想像でカバーしたり、わからないままそういうものだと受け取ってしまったりすることが多いです。

特に人の感情は見てわからないので、親が機嫌が悪いという当たり前によくあることに関しても、どう対処していいかわからず不安になってしまいがち。また、自分がわからないことを隠したりするお子さんも多いですね。

そのため、発達障害の子に対しては、「お母さんは今日失敗して落ち込んでるんだよ」と理由や状況を説明してあげたり、怒った後に「本当はやってほしかったことは〇〇なんだよ」とわかりやすく説明する、などしてあげると安心できると思います。

安心できることで勉強のムラが減ったり、パフォーマンスが高まったりします。また、子どもさん自身にも「あなたの考えを教えて」と聞いてみてください。案外よく考えているものです。

「できない」のは個人の資質や性格のせいじゃない。親子でハッピーな中学受験をするために

子どものことで悩む、迷う、というのは一生懸命に子育てをしているからだと思います。そこに真剣に取り組んでいなければ起きない感情だと思うからです。同時にご自身のネガティブな感情も大切にしてあげてください。

しかし、十分にがんばっていることと結果は別物なのですが、私たちは時に一生懸命になりすぎてそのことを忘れてしまいます。頑張り方は変えられます。どうか、上手くいってないことがあれば変えやすい環境から変えてみてください。

自分が悪いのでは?とか子どもの集中力が足らないから!といった個人に原因を探す考え方から、どういう順番でやったらスムーズかな?何がないと集中できるかな?どんなタイミングだとストレスが少ないかな?と言った環境を調整するという考え方にシフトすると、きっと子どもさんとも、自分自身とも良い関係が作れていくと思います。応援しています。

――発達障害の有無に関わらず、多くの保護者が迷いや悩みを抱えながら子どもの学びと育ちに伴走しています。植木先生のお話は、中学受験を志すご家庭にとって、気づきにあふれる内容ばかりでした。本日はどうもありがとうございました。

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※記事の内容は執筆時点のものです

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