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塾講師による性犯罪が不安。娘の塾選びのポイントは?|下剋上受験 桜井信一の中学受験相談室

専門家・プロ
2023年11月06日 桜井信一

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『下剋上受験』でおなじみ、桜井信一さんが中学受験を考える親御さんのさまざまな悩みに答えます。今回は小3のお子さまをもつ親御さんから塾選びについての相談です。

今回の相談

最近、塾講師による性犯罪のニュースが立て続けに報じられたことで、女の子を持つ親として心配でたまりません。

現在娘は公文に通っており(シニア世代の女性が先生です)、小3の2月から進学塾への入塾を考えています。

これまでは通いやすさの面で自宅から近い大手塾を候補に挙げていましたが、今回のニュースを受けて、どういったポイントで塾を選べば良いのか分からなくなってしまいました。

大きい塾だと講師数が多い分、どんな先生がいるのか親も把握しきれないのではという不安があります。

(今回の事件も、大手塾での出来事でしたよね)

でも、小規模な塾だと、ちょっと様子のおかしい先生がいたとしても組織内での自浄作用が働かないのではないか、

スタッフ増員や各教室への監視カメラ設置といった資金力が必要な対策は難しいのではないかなど、

マイナスに考え始めるとキリがありません……

娘の塾選び、どうすれば良いでしょうか?

また、これから塾通いを始める上で、親が子どもに教えられる自衛策や、安心につながるような塾との付き合い方などありましたら、何かアドバイスお願いします!

相談者:ほっとけーき
お子さまの学年:小3


桜井さんの回答

 

 

ほっとけーきさま、こんにちは。

私は、不動産のことにまあまあ詳しいのです。(まあまあというのは私がよく使うジョークですのでご理解ください)宅建士と不動産コンサルティングマスター、さらにファイナンシャルプランナーという資格を持っていて、家を購入する知人がいたら個人的に相談されることもあります。

さて、家を購入するとしましょう。何を重視するでしょうか。環境の良い地域がいいですよね。広さも大事です。でも、駅からの距離も大事です。帰りが遅くなったときなんか、駅から遠いと不便と不安の両方がありますよね。もちろん予算もあります。いろいろ悩むマイホームの購入ですが、すべてを満足することはなかなか厳しい。予算が邪魔するケースが多いですが、それがない人でも、すべてを満たすのは難しいものです。タイミングが合わなかったりするからです。

そんななか、一番いいだろうと思った物件を見つけた。環境は抜群、駅からも近い。文句なし。

ところが、私の経験ではそうとは限りません。マイホームはそれ一戸を購入するだけだからです。隣人が厄介な人だったらどうします? 隣は最初は駐車場だったのに相続で物納されてしまい、競売で誰かが購入した。その隣人、ちょっと苦手な人ならどうします?

街の環境というのは、人も一緒に造り上げているのです。その街の人まで購入することはできない以上、リスクをゼロにすることはできません。

次にマンションを想定します。好立地の低層マンション、憧れますよね。洒落ています。戸数がそこまで多くないのもいいですよね。しかし、好立地のタワマンもいい。何百戸という戸数をみて何だか安心してしまいます。これだけの人がいいと思ったのだから多分いいのだろうと。小規模をとるか大規模をとるか、不動産の難しいところなんです。

そんな不動産にまあまあ詳しい私が購入する方々を見ていて思うことは「こりゃもう正解はないね」ということ。明らかな不正解があるだけです。良さそうな物件であればゴーサイン。安全橋はありません。

間取りの話になりますが、私がいいなあと思うリビングの形は、カウンターキッチンやアイランドキッチンであれば、そこからソファーやテレビの位置が死角になっていないこと。お料理をしながら家族と喋りにくい間取りは話が盛り上がりませんね。

子どもが帰宅してから、親がどれくらい聞き上手になれるかは、家の間取りも大きく関係していると思っています。親子で歌番組を観るのもいいでしょうけれど、「今日はこんなことがあったよ、あんなことがあったよ」と延々と喋る環境をつくること。これが子どもから情報を引き出すことにつながると思います。

うちの子が高校生のとき、結構夜遅くに帰宅するのに、そこから延々と塾であったことを母親に話していました。母親の方も会ったこともない子どもの友達を「〇〇ちゃんはそういう子だもんねえ、許してあげてよぉー」なんて言って話に付き合っていました。1時間ほどたつと、私が叱ります。「いくらなんでも長すぎ。そんな時間があったら英単語を100個は覚えることができてた」そう言いながらも、子どもが今日何があったのかを知ることができるのは、結構安心なものなんです。

もうお分かりだと思いますが、世の中の事象どれをとってみてもすべてを満たすなんてことはできません。塾選びで慎重になるお気持ちはとてもよくわかりますが、塾に通わせたあと、子どもの様子が手に取るようにわかるような手立てを考える方が安全に近づくのではないでしょうか。

塾選びは、不動産選びと似ているところがあります。

環境はバツグン、駅からも近く、条件的に最高と思っても、そこにいる人がよくなければ、選ばないほうがいいことがあるところ。「こうすれば絶対安全」という選び方はなく、タイミングが重要なところ。大規模だから、小規模だから絶対いいということもないところ。

でも、塾は不動産とは違います。ヤバイと思ったら、すぐに変えることができる。もちろん大変ではありますが、たいていの場合、家を買い替えるよりはよほど簡単です。

日ごろからお子さんの話をよく聞き、気にかけて、もちろんご自身でも機会があれば塾の雰囲気を感じて、リスクへのアンテナを高める、必要があれば、転塾も恐れない。そうしていれば絶対安全ということはありません。でも、それが親として子どもにしてやれる、必要なことではないかと思います。

※記事の内容は執筆時点のものです

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