中学受験ノウハウ 連載 公立中高一貫校合格への道

まだ間に合う!冬休みに取り組んでおきたいこと|公立中高一貫校合格への道#10

2023年12月06日 ケイティ

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都立中学校など公立の中高一貫校には、いわゆる「入学試験」は存在しません。代わりに行われる「適性検査」を受(「受」ではなく)することで、6年間の一貫教育に「適性」があるかどうかを見られます。本連載では、公立中高一貫校を目指すうえで踏まえておくべきことは何なのか、私立受験とは具体的に何がどうちがうのか、公立中高一貫校合格アドバイザーのケイティさんにうかがいます。

こんにちは!公立中高一貫校合格アドバイザーの、ケイティです。公立中高一貫校合格を目指す、保護者のための「ケイティサロン」を主宰しています。

いよいよ冬らしい寒さを感じる時期になってきました。つい先日、広島の公立中高一貫校では一次検査が行われ、次は千葉や長野…、と全国の公立中高一貫校で続々と本番を迎えようとしています。

1月受検、2月受検のご家庭も、本番まで残りあと数週間。限られた期間をより良いものにして頂くために、今回は「冬休みに取り組みたいこと」を3つに分けて、注意点も交えながら具体的に紹介していきます。

冬休みに取り組みたいこと:志望校演習編

冬休みに入ると、通塾の有無にかかわらず、過去問演習をする頻度は今まで以上に増えてくるはずです。

そのため2周目、3周目に入った取り組みも多く、だんだんと「雑さ」が出てきます。初見の問題が減り、過去問に対する緊張感も少なくなってしまって、言葉は悪いのですが、「まぁこのくらいの答えで良いだろう」というような雑な取り組みや甘い自己採点が増えてきます。

もちろん全員というわけでは無いのですが、文字の書き方一つを見ても、取り組むことがゴールになってしまっているように感じることもあります。

本番では過去問と同じ問題は当然出ませんが、過去問をいい加減に扱っても良いことは一つもありません。「過去問を制するものは本番も制す」と私も日頃からいろんなところで口酸っぱく言っていますが、過去問を丁寧に取り組み、時間配分や記述の細かいところまで徹底して向き合えた子は、やはり本番でもしっかり点が取れていると感じます。

過去問と120%の力で向き合えるよう、取り組む時は毎回机の周りを整頓し、姿勢を正し、きっちりと時間を計って取り組ませるようにしてください。

特に選択肢型の学校に多いのですが、一度解いた問題だからという油断もあって、なんとなく記憶を頼りに選択肢を選んで丸が付くこともありますよね。そして、正解であればそれで満足してしまって、解き直しの候補から外してしまう子が多く見られます。

間違えた問題は当然解き直すと思いますが、正解した問題も、「本当にその解き方で正しかったのか」を、解説を見ながら丁寧に確認する必要があります。

主に記述型の場合は、「確かこういう方向性だったぞ」と記憶を探りながら書いてしまい、採点する時も「おそらく合っているだろう」という目で甘く採点をしてしまいがちです。

二度目、三度目だからこそある程度答えを覚えてしまっていることは仕方がないですが、だからこそ今まで以上に自分に厳しく確認をするようお伝えください。 志望校の過去問演習に関しては、自己採点済のものを保護者が採点する、いわゆるダブルチェック体制を強化した方が良いでしょう。

冬休みに取り組みたいこと:作文編

続いて作文についてです。

前回の記事でもお伝えしましたが、作文はこの時期にくると結構な差が生まれているものです。なので、「作文が苦手な子」と、「作文が割と書ける子」の二つのタイプに分けて話していきたいと思います。

まず、「苦手な子の場合」ですが、苦手意識から、書くことが本当に億劫になってしまっていて、さらには本番が迫ってくる焦りの中で毎日時間が足りない感覚があるために、余計に作文を書くことを嫌がったりやっつけ仕事としか思えないようなものを書いてきたりすることがあります。

ですが、それだと何本書いても結局力にはならないので、厳しく、一本一本をきちんと仕上げるように注意しなければなりません。

苦手な子ほど、「ちゃんと書く」という覚悟さえ決めれば、平均点くらいまでは取れるようになるはずです。それだけでも他の分野のリードを守ることになります。

作文がある学校を受けるのであれば、作文から目を背けるわけにはいかないということをきちんと話し合って、向き合わせるようにしてください。

どうしても、書いても書いてもうまくいかずに、作文に対する自信を完全になくしてしまう子もいます。そうなってしまうと本番まで苦手意識を引きずってしまうことも考えられるので、「苦手意識が高くなりすぎているな」と感じたら、無理に書かせず、解答例を音読させた上で、それを真似て書いてみる、という取り組みでも全く問題ありません。「納得のいく一本」を仕上げられた回数をいかに増やせるか、だと考えてください。

次に、「作文は割と書ける」タイプの子についてです。

模試を受けても、それなりに作文の点数が取れる子の場合、夏休み明けから今の時期にかけてたくさん書いてきたと思います。このような子の場合、「手持ちのネタに頼りきってしまう」といった落とし穴にはまり、そこからスランプに入ってしまうことがあります。

「手持ちのネタに頼る」とは、似たようなテーマで以前書いたときの作文をそのまま再現することをいいます。それが出題主旨にうまく合えば加点につながりますが、再現することを優先してしまい、ちょっとしたズレがある場合にも気づかずに、今までに書いた作文のストックの中から再利用してしまうといったことがあります。

そもそも書く力が高く、そして練習量も多いからこそ、作文に対する慣れによって足元をすくわれることも多々あるのです。

再利用できることは安心につながりますが、100%使えることはめったにありません。また、手持ちのネタに頼ると、目の前の文章をいいように拡大解釈して、自分が使いたい過去の作文に寄せて捉えてしまうこともあるのです。

油断せずに、その場その場の文章の内容や与えられた条件を徹底的に確認して、目の前の一本に向き合えるよう、声がけをお願いします。

さらに、作文は取れるけれども読解で落としてしまうことが多いタイプの子もいます。

作文の配点は大きいですが、そうはいっても読解部分で数十点分ある場合、読解の失点は侮れません。作文の対策をする時間と読解の問題の対策をする時間はきちんと切り離して、それぞれで頭を切り替えて対策をするようにしてください。

まずは過去問演習をしてみて、読解部分の解答例とお子さんの解答に乖離がないか、保護者の方が確認をしてください。ズレがあるなら、解説を読んで解答例に近い内容を書くにはどうすれば良いのか、話しあう必要があります。

読解問題は一人で解き直しをすると「解説を読んで終わり」になりやすいので、親が積極的にかかわることをお勧めます。作文で良い点数が取れて、さらに読解問題でも点数が安定するのであれば、安心してそれ以外の分野の対策に専念することができますよ。

冬休みに取り組みたいこと:全国の過去問演習編

続いて、全国の適性検査演習についてお伝えします。

冬休みは志望校の過去問練習以外に、他県の過去問を練習することも多いです(というよりも、解かなければいけません)。冬休みに行う全国の過去問演習の目的は、二つに分けて考えるようにしましょう。

一つ目は、知っている問題を増やすこと。要は、「引き出しを増やす」ための演習です。

とにかく幅広く、手広く、いろんな問題を知ることが目的であって、覚えたことや、過去の演習で身に付けたテクニックの点と点をつないでいく目的で取り組みます。 そのため、どの学校の問題を解いても構いません。「銀本」(全国の適性検査問題集)から、分野問わず取り組むのでも良いでしょう。

この時期になると、頭の中で問題のジャンルのカテゴリー分けができるようになってきます。問題を見た瞬間に、例えば「これは、対照実験の問題だな」とジャンルの判別を感覚的に行えるようになり、その結果、出題の狙いを読み取りやすくなります。

たくさん解いていると、問題を見ただけで、「〇〇県の問題にそっくり」「〇〇県と〇〇県の傾向が似ている」といった分析ができる子も出てきます。

こうやってジャンル分けや傾向の把握、分析ができるようになると、非常に心強いです。結局、適性検査は似たような問題がたくさん出題されていますから、知っている問題をたくさん増やすことで、「何を試されているのか(=何を書かないといけないのか)」を理解した上で点につながる答えを導きやすくなっていきます。

二つ目の目的は、苦手分野の補強です。

この時期になると当然、不安も大きくなってくるので、苦手な分野を直視するのを無意識に避けようとします。

例えば立体が苦手な子であれば、「私は立体が苦手だから」といった感じで、自分の苦手なことを自分の個性のように受け入れるような発言も見られます。

しかし、合格を目指す以上、「苦手だから仕方ない」という意識を認めるわけにはいきません。苦手だからこそ、心を鬼にして人一倍取り組ませないといけないのです。

受験(受検)は、自分の弱い部分といかに向き合えたかだと思います。心の強さが求められるのですが、だからこそ、小学6年生で受験(受検)を経験するのは価値があることだと考えています。

「私は〇〇が苦手なタイプだから」と片付けてしまうのではなく、得意には変えられなくとも、せめて平均点にはもっていくために何をするかを考えなければいけません。

たとえば立体が苦手なのであれば、銀本をめくると立体の問題は山のようにあるので、そこから手当たり次第に解いていく。こういった地道なトレーニングも必要です。

過去問演習を幅広く行う時間と、それから苦手分野の補強のためのトレーニングの時間。この二つの目的別に、しっかりと時間を分けるようにしてください。一番良いのは、曜日を分ける方法です。

全国の問題を北から南まで取り組む曜日と、自分が苦手な分野の問題を取り組む曜日を分けた方が、良いペースで継続して進められているように感じます。毎日同じようなタスクを消化していくというよりかは、緩急をつけて、「苦手特訓デー」の曜日を決めたらその日に関しては他の取り組みの負荷は少し下げる、といった工夫も必要です。

冬休みに取り組みたいこと:模試の解き直し編

最後に、模試の直しについてです。

これまで、たくさんの模試を受けてきたことと思います。その模試の直しは全て完了しているでしょうか。まだ終わっていない分については、解き直す日がスケジュールに組み込まれているでしょうか。

もちろん模試だけでなく、土日に行われる特訓講座などで行われたテストの直しも確認をしてみて下さい。直したはずだと思っていたら実はまだ保留になっていた……、直したもののそのチェックがまだだった……、というようなことも、例年よくあります。

この時期になると日々の取り組みでいっぱいいっぱいですし、何が終わっていて何が終わっていないのかは、お子さん自身が把握することは難しいです。次から次へとやらないといけないことがやってくるため、振り返りをしたり、プリントの整理をしたりといった余裕は無いはずです。

保護者の方が率先して、時間をとって解き直しの状況を調べてみてください。また、解き直していないものがあれば、解き直しの日を設定するようにしてください。

模擬試験は、その学校に精通したプロが本番を想定して作成しています。直近の出題の形式に合わせつつも、直近では出題されていない、つまり次に出題される確率の高まっているテーマから作成しているものです。

非常に貴重な情報が詰まっているので、本番までにきっちり解き直しは済ませておきましょう。そうすることで、「解き直しは全て終わった!」というスッキリした状態で本番送り出すことができます。

日々取り組む量は膨大ですが、あれもやっていない、これもやっていないと思いながら本番を迎えてしまうのは非常に不安なものなので、「やりたいと思っていたけど、終わらなかった」を減らすための冬休みにしていきましょう。

まとめ

さて今回は、冬休みに取り組みたいことについて、ジャンル別にお伝えしました。

この時期、いろいろな消化不良が浮き彫りになって眠れないような日もある保護者の方も、きっといらっしゃると思います。

残り期間は限られているので、できることと、できないことの線引きはどうしてもしなければいけません。終わらせたいことを現実的なスケジュールに配置しながら、有意義な冬休みにしてくださいね!

※記事の内容は執筆時点のものです

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