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【理科】食物連鎖とは? 中学入試攻略のためのポイントをわかりやすく解説

2024年1月11日 ゆずぱ

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内容自体はシンプルなのに、いざ入試となると“思考問題”が頻出し、受験生が苦戦する単元が「生物のつながり」です。

簡単な知識問題が出題される一方で、実社会の課題をもとに考えさせる問題もよく出されます。

そこで今回は「食物連鎖」についてわかりやすく解説しつつ、近年の中学入試で頻出の“思考問題”を解くうえで押さえておきたい内容を紹介します。

 

食物連鎖とは?

以下の流れのように、生き物がグルグルと巡回する仕組みを「食物連鎖」といいます。

植物がつくったデンプンを草食動物が食べる

肉食動物が草食動物を食べる

肉食動物が死ぬと、二酸化炭素と水に分解される

分解された二酸化炭素と水は、植物がデンプンをつくる材料に使われる

植物がつくったデンプンを草食動物が食べる

・・・

食物連鎖を理解するための「3つの基礎知識」

食物連鎖を正しく理解するための「3つの基礎知識」を、図解を用いながら説明します。

  1. 3種類の役割
  2. 生物ピラミッド
  3. 炭素の流れ

 

基礎知識[1]3種類の役割

食物連鎖には、大きく分けて「3種類の役割」が登場します。

  • 分解者
  • 生産者
  • 消費者

 

まずは以下の図を見て、イメージをつかみましょう。

分解者

動物や植物が死ぬと、その死骸は分解されます。

そして、その死骸を「水」と「二酸化炭素」に分解する役割をもっているのが、分解者です。

動物や植物の死骸をそのまま置いておくと、腐って土に還(かえ)りますが、まさにその役割を果たしているのが分解者というわけです。

分解者の正体は、土の中にいる細菌類などです。

生産者

生物にとって大切な「デンプン」をつくる役割をもっているのが、生産者です。

生産者の正体は、光合成ができる植物です。

消費者

動物は、基本的には自分でデンプンをつくることができません。とはいえ、生きていくためにはデンプンが必要です。

では、どうするか?

生産者がつくったデンプンを食べれば良いのです。

この「デンプンを食べる役割」をもっているのが、消費者です。私たち人間も含めた多くの動物が消費者に当てはまります。

基礎知識[2]生物ピラミッド

食物連鎖には「3種類の生物」が関係していることをお伝えしましたが、ここでもうひとつ大事なポイントがあります。

それは、それぞれの“”です。

 

まず、体の大きな肉食動物が生きていくためには、小さな動物をたくさん食べなくてはいけません。

そしてその小さな動物は、たくさんの植物を食べないと生きていけません。

つまり、ピラミッドの下にいけばいくほど数が多くならないと、動物たちは生きていけないのです。

 

自然界では、この“数のバランス”がちょうど良いところに落ち着いていきます。

 

もちろん、このバランスが崩れることもあります。

しかし、バランスがちょっと崩れたとしても、各階層の動物が増えたり減ったりしながら、時間をかけてちょうど良いバランスに戻っていくのです。

基礎知識[3]炭素の流れ

基礎知識の3つめは、食物連鎖を理解するうえで特に重要な「炭素の流れ」についてです。

ちなみに教科書やテキストでは、「炭素の流れ」がはじめから1枚の絵で描かれていることが多いですが、これが本当にわかりにくい……。

そこでここでは、3つのステップに分けて解説します。

ステップをひとつずつ理解したうえで最後に1枚の絵にまとめると、理解しやすくなりますよ。

 

STEP1:みんな呼吸する

 

動物は呼吸をしないと生きていけませんが、呼吸が必要なのは細菌も植物も同じこと。

つまり、みんな二酸化炭素を出している、ということです。

ただし、生産者である植物だけが二酸化炭素を使ってデンプンをつくり出せます。この機能は「光合成」と呼ばれますね。

 

STEP2:生きるために食べる

動物が生きるためにはデンプンが必要ですが、体内でつくれません。そこで、ほかの動物や植物を食べる必要があります。

そしてこのとき、動物や植物の体に含まれている炭素や、デンプンに含まれる炭素が消費者へと吸収されていきます

 

STEP3:死んだらどうなる?

動物や植物の死骸は、分解者によって二酸化炭素と水になります。

動物や植物の体をつくっていた炭素は、こうして二酸化炭素という形に変わるのです

 

炭素の流れは、理解できましたか?

それぞれのステップを1枚にまとめると、以下の図のようになります。自然界にある炭素は、「二酸化炭素」「デンプン」「植物や動物の体」という3つの形に変化しながらグルグル回っていることがわかりますね。

 

代表的な生物を押さえよう!

食物連鎖に登場する代表的な生物を紹介します。

生息場所をもとに「陸上」「水中」「地中」に分けたのが、以下の表です。

※画像をクリックで拡大できます

 

分解者 ―― 5つの生物を押さえよう

分解者として押さえておきたいのが、以下5つの生物です。

  • 細菌類(バクテリアなど)
  • 菌類(きのこ)
  • 菌類(カビ)
  • ミミズ
  • ダンゴムシ

 

なお、細菌類や、きのこやカビは、動物や植物の死骸を分解して二酸化炭素と水にします。

しかし、ミミズやダンゴムシはその力を持っていません。とはいえ、食べてはいる(死骸を取り入れている)ため、食物連鎖では分解者として扱われます(後ほど説明しますが、消費者としても扱われます)。

 

生産者 ―― 光合成をする植物

生産者は、光合成ができる植物です。

地上にはたくさんの植物がありますが、水中ではどうでしょうか?

 

実は、水中に生えている水草以外にも、光合成ができる生物がいます。

それが、植物プランクトンです。

具体的には、ミカヅキモ、ケイソウ、アオミドロの3つを押さえておきましょう。水の中にふわふわ漂っている小さな生物ですが、彼らも光合成ができます。

 

消費者 ―― 多種多様な生物が当てはまる

消費者は山ほど存在するので、まずは以下の表(右側)を見ながら、ざっくりとイメージをつかんでみてください。

※画像をクリックで拡大できます

「陸上にいる草食動物」であれば、以下のように覚えましょう。

樹液や蜜を吸う昆虫 → チョウ・カブトムシ
草や実を食べる昆虫 → バッタ・イナゴ
草食動物 → ウサギ・リス

 

消費者に関しては、注意点が3つあります。

  • 動物プランクトンは「草食動物」と同じ位置付け
  • ミミズとダンゴムシは「消費者」にも分類される
  • “地中生物の頂点”のモグラは、陸上生物に食べられてしまう

 

動物プランクトンは「草食動物」と同じ位置付け

動物プランクトンは植物プランクトンを食べるので、「草食動物」と同じ位置付けとされます。

有名どころの「ゾウリムシ・ワムシ・ミジンコ」を押さえておきましょう。

植物プランクトンと同じく、動物プランクトンも水の中をふわふわと漂っていますが、光合成をする力は持っていません

 

ミミズとダンゴムシは「消費者」にも分類される

枯葉などを食べる土壌生物としては、ミミズとダンゴムシが登場します。

「あれ、彼らは分解者じゃないの?」という疑問が浮かんでくるかもしれません。

 

たしかに分解者に分類されますが、実は消費者という見方もできます。

ミミズやダンゴムシには死骸を分解する力はなく、食べているだけ。そのため、“食べる”という観点では消費者ともいえるのです。

 

“地中生物の頂点”のモグラは、陸上生物に食べられてしまう

先ほどの表には、「地中の消費者」としてモグラが記載されています。

地中の生物でいうとモグラは食物連鎖の頂点ですが、実はある動物に食べられてしまいます。

 

それが、モグラの天敵「フクロウ」です。

フクロウ以外にも、陸上の生物であるネコやイタチに食べられることもあります。

中学入試で超頻出! 生態系に影響を与える原因と問題

中学入試では、食物連鎖が崩れてしまう「3つの原因」と、食物連鎖に関連する「3つの問題」がかなりの頻度で取り上げられます。

ほかの受験生と差別化を図るためにも、これから紹介する内容をしっかりと押さえつつ、応用力もつけていきましょう。

生態系に影響を与える原因

まずは、生態系に影響を与える原因を3つ紹介します。

  1. 外来生物
  2. 密猟・駆除
  3. 環境破壊

 

原因1:外来生物

生物ピラミッドのバランスを崩してしまう、特に大きな要因といえるのが「外来生物」です。

外来生物
本来はその土地にいなかったのに、人間の手によって持ち込まれた生物のこと。その土地にいなかった生物が急に現れるので、生態系のバランスが崩れてしまう

 

たとえば、沖縄のマングース。

沖縄には本来、マングースは生息していませんでしたが、人間の手によって持ち込まれた結果、マングースの捕食対象となった「ヤンバルクイナ」という鳥が大幅に減ってしまいました。

 

原因2:密猟・駆除

次に大きな原因として挙げられるのが、人間による「密猟(狩猟)・駆除」です。

人間の都合によって特定の動物を大量に捕まえたり、意図的に殺したりすると、その程度によっては生態系のバランスが大きく崩れてしまいます

 

たとえば、ニホンカワウソ。

人間が「毛皮」を求めて大量に捕まえたことで大幅に数が減り、2024年現在では絶滅したとされています。

 

原因3:環境破壊

「環境破壊」による生態系への影響も見過ごせません。

森林伐採で住む場所がなくなったり、大気汚染によって生物が住めなくなってしまったりすると生態系が崩れてしまいます

 

たとえば、沖縄県の石垣島付近にある日本最大のサンゴ礁は、地球温暖化による二酸化炭素濃度の増加によって「白化(はっか)現象」が起きています。

白化現象
サンゴのなかにいる褐虫藻(かっちゅうそう )が逃げてしまい、サンゴ自体の白い骨格が透けて見える現象。褐虫藻による光合成エネルギーが得られないと、サンゴが死滅してしまう可能性がある

※サンゴと共生している植物プランクトン。褐虫藻が光合成によって生み出すエネルギーを使ってサンゴは成長している

 

食物連鎖に関連して起きる問題

次に、食物連鎖に関連して起きる問題を3つ紹介します。

  1. 農作物への被害
  2. 有害物質の蓄積
  3. 種の絶滅

 

問題1:農作物への被害

生態系の崩れによって起こる問題のなかで、最も大きなものが「農作物への被害」です。

野生の動物が増えすぎた結果、それらの動物が食べ物を探して農作物を荒らしてしまう、という被害が頻繁に起きています。

 

特に、シカによる被害は深刻です。

かつては、ニホンオオカミがシカを食べていたためバランスが成り立っていましたが、そのバランスが崩れてシカが増えすぎたことにより、農家に甚大な被害が出ています。

問題2:有害物質の蓄積

動物の体内で分解されにくい物質は、食物連鎖を通してその濃度が高くなることが知られています。

たとえば「DDT」のように、海水にはわずかな濃度しか含まれていない物質であっても、食物連鎖の上のほうにいる動物の体内では濃度が高くなることが知られています。

DDT
殺虫剤として使われていた物質。食物連鎖の上のほうにいる「鵜(う)」という鳥の体内で、海水のDDT濃度のおよそ50万倍ものDDTが検出されたという事例がある

 

問題3:種の絶滅

環境の変化に伴って自然な種の絶滅は起こっていますが、先ほど紹介した「3つの原因」のいずれか、あるいは複合要因によって種が絶滅してしまう例も少なくありません。

たとえば、ニュージーランドなどに生息していた「タスマニアタイガー」という種は、人間の駆除によって絶滅してしまいました。

まとめ

昨今の入試問題では、基本的な知識をもとに、論理的な思考力があるかを測る問題が頻出です。

「生物のつながり」の単元でもそうした問題がよく出題されますが、特に食物連鎖については、たしかな知識と、応用的に考える力が欠かせません。

今回紹介した以下の順で知識を深めつつ、応用問題に対応できるだけの受験力をつけていきましょう!

食物連鎖の「3つの基礎知識」

食物連鎖の「代表的な生物」

生態系に影響を与える「3つの原因」と「3つの問題

※記事の内容は執筆時点のものです

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