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学習 連載 中高一貫校入学前に考えておきたい【英語】の話

春から中高一貫校! 英語を苦手科目にしないために入学前の今一番大切なこととは?|中高一貫校入学前に考えておきたい【英語】の話#3

専門家・プロ

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小学校から中学校に進学するとき、学習面で気にかかるのが「英語」の授業。特に中高一貫校は、一般的な公立中に比べて授業進度が速く、中2の時点で中学3年分のカリキュラムを終えてしまう学校も珍しくありません。

—— 進学後に備えて英語を習わせたいけれど、中学受験の勉強で時間が取れない。でも、本当にこのままで大丈夫だろうか…

そんな不安を感じる保護者さん、中学受験ナビと一緒に子どもの「英語力」について考えてみませんか?

これまで2回にわたり、株式会社イーオンの堀田和江さん・岡村知子さんから、未来を生きる子どもたちに必要な英語教育についてたくさんのヒントをいただきました。

連載最終回となる今回、おふたりにお訊きするのは、中学受験を終えたタイミングで、家庭でできる具体的な英語力の伸ばし方

英会話を習いに行ったり海外旅行をしなくても、普段の生活に無理なく取り入れられる英語教育に役立つ取り組みについて教えてもらいました。

中学入学前の今だからできる!英語の勉強法

「中学受験で身に付けた学習習慣があれば大丈夫」

英語の授業に不安がある親子に向けて、こんな力強い励ましをいただいた前回の記事

とはいえ、「英語?何それ?」の状態で新生活を迎えるのは少々心もとない……そう感じる方も多いかと思います。

そこで、この春、中高一貫校入学を控えた6年生にオススメの英語準備法を教えていただきました。

入学前のこの時期、親子で少しでも英語に触れる時間を持てるといいですね。

中でもすぐに始められそうなのが、海外ドラマや洋画を英語で観ること。動画で見聞きすることで生まれた『さっき主人公は何て言った?』『こういう気持ちは英語でなんて表現するの?』といった疑問を話し合い、楽しみながら、英単語や慣用句を調べてみるんです。

これは親子で一緒に観れば家族間の会話にもつながりますよね。受験勉強が終わって余裕ができた今だからこそできる、ちょっとぜいたくな時間の使い方ではないでしょうか。」(堀田さん)

「子どもたちは、スイッチさえ入れば自らグングン吸収していきます。そして、このスイッチが稼働するきっかけは『好き』『おもしろい』という感情であることがほとんど。

たとえば、オンラインゲームが得意なある男の子は、海外ユーザーとチーム戦で闘うことで爆発的に英語力が上がりました。テキスタイル(※布、生地のこと)に興味を持ったお子さんが、インターネットを駆使して世界中の織物の種類、文化や歴史を自主的に調べて、英語でレポートを書いてくれたこともあります。『先生、〇〇織を英語でなんていうか知ってる?』って、私も知らないような英単語を教えにきてくれるんですよ。子どもの成長の可能性を感じる出来事でした。

ゲーム、ファッション、音楽、マンガやドラマ、興味の対象は何だって構いません。特定のジャンルを深く掘り下げるのも勉強法のひとつ。お子さんの好奇心の芽と、中学受験で鍛えた国語力・理解力を上手にマッチさせてあげれば、驚くような英語力向上が期待できると思いますよ。」(岡村さん)

おふたりが口をそろえて話してくれたのが「英語はただの教科ではない。コミュニケーションするための道具である」ということ。

語学を習得することは日常生活と地続きで、英語ができれば世界が広がる。

お子さんが実体験として「英語ってすごい!」「英語って楽しい!」と思ってもらえるよう、親御さんにアシストをお願いしたいとのお話でした。

英語の読み物に慣れ親しむこと

次に、新中学生だけでなく、下級生の皆さんも自宅で実践できる英語勉強法をお聞きしました。

オススメとして挙がったのが「Graded Readers(グレーデッドリーダーズ)」です。

この教材は、子どもたちが積極的に英語の本を読めるように、語彙や構文などの難易度をレベル別に調整してある段階別読み物シリーズのことです。

たとえば、同じ物語でも、英検3-5級レベルの人向けと、英検2級レベルの人向けでは、使う語彙や構文を変えて書かれているんですね。絵本、古典や名作から人気ドラマを小説化したものまで、さまざまなジャンルのシリーズが出版されています。音声付きのものや電子書籍もあるため、お子さんの生活スタイルに応じた使い方ができそうです。

「子どもたちが英語を習得する上で、インプットをたくさんしてあげることが大切です。語彙や文法をルールで覚えていくことももちろんできますが、大量の英語の文章を『内容を楽しみながら読む』ことで、驚くほどの力をつけることができるんです。

英語の本や物語を読むときは、あまり無理をして難しいものに手を出さず、ゆっくりとスモールステップで進めることが大事です。

最初は挿絵などが入っているものから始めるといいですね。絵からの情報が内容把握の大きな助けになります。また、知っているお話を英語で読んでみたり、あらすじだけは翻訳機能などで把握しておいてから、英語で読んでみたり、という読み方もあると思います。

そのときに、『内容を楽しむ』ことができる本を選ぶこともポイントです。英語を読むことに一生懸命で、内容は全く理解できていない、もしくは楽しんでいないというのは避けたいですね。」(堀田さん)

英語の本や物語を読むことに慣れてきたら、最初から英語で読むようにしていきます。ただし、お子さまのレベルより少し簡単なレベルのものを選んであげることが大事だそうです。そうすると、お子さまも自主的にどんどん読めるようになってきますので、自分がレベルアップしている実感が持てそうです。

また、この時心がけてほしいのが「アウトプット」すること。お子さんが本を読み終わったら感想を聞いてあげてください。

もし、本の内容についてお子さんが疑問を持ったり、より深く知りたいと感じていれば、それについて一緒に調べてみたり、「今度はこれを読んでみたら?」と勧めてみたりと、次のアクションにもつなげられますね。

「イーオンキッズのレッスンでは、読んだ本をクラスのみんなに発表する授業を積極的に行っています。感想を誰かとシェアすることでモチベーションがアップしますし、家庭でも取り入れやすい勉強法ではないでしょうか。

中には、クラスでの発表に向けて、まずは自宅でパパ、ママ、おじいちゃん、おばあちゃんに向けて練習をするという生徒様もいて、ご家族の楽しみのひとつになっているそうですよ。」(堀田さん)

英語教育のエキスパートからメッセージ

最後におふたりから、わが子の中学受験の伴走を終えた保護者の皆さんに向けたメッセージをいただきました。

「大人が思う以上に、お子さんは親御さんの姿をよく見ているもの。親御さんがやっていることを真似したい・一緒にやりたいという気持ちが子どもにはあるんだなと、多くの親子を見ていて感じます。

だからこそ、保護者の皆さんも、学生時代に習った英語をやり直したり、海外カルチャーにアンテナを張ってみたりしてはいかがでしょうか?『一緒に英語勉強しようよ』という空気感が家庭内でつくれるといいですね。

特に、受験が終わった6年生のご家庭は子育てから少し手が離れるタイミングのはず。ご自身の新たな生きがいづくりも兼ねて、ぜひ英語にチャレンジしてみてください。」(岡村さん)

「実は、イーオンで働く日本人教師の中には、長期留学などの経験をせず、国内での学習のみで英語力を上げたスタッフもいるんですよ。それでも、経験者に劣らないほどハイレベルな英語力を習得し、英語を武器にした仕事をしているんです。

では彼らがどうやってその力を身に付けたのかいうと、一生懸命勉強したからというだけでなく、英語を使ってコミュニケーションをとり、異文化にたくさん触れることを楽しみ、それをモチベーションにしてまた勉強し……といった具合に良い循環をすることができたからだと思います。」(堀田さん)

「繰り返しになりますが、学びにおいて、『好き』という気持ちは大きな原動力になります。

最初は英語レッスンへ気乗り薄だったお子さまが、ちょっとしたきっかけでガラリと学習姿勢が変わり、飛躍的に伸びていくのを何度も見てきました。

保護者の方はどうしても、ドリルや単語練習をこなすといった勉強らしい勉強であるとか、英検何級を取得させたいといった分かりやすいゴールに目を向けがち。でも、もう少し視野を広げて、英語そのものへ興味を抱かせる方法はないかという視点で捉えてほしいと思います。勉強三昧の中学受験を終えたタイミングであればなおさらです。

英語の必要性が叫ばれ、英語教育の環境が変化する今の時代、中学入学を控えた保護者の皆さんが不安や心配を感じるのは当然だと思います。進学した中高一貫校で、ネイティブ並みの発音で英語を操る同級生を見かけて、焦りを感じることもあるかもしれません。

けれど、実際に英語を使って世界で生きていくとき、耳に入るのは美しく上手な英語ばかりではありません。英語でコミュニケーションをとる相手も、ネイティブスピーカーだけでなく、英語を母国語としない方々の場合も多いのです。自分より英語が上手い相手とも下手な相手とも、意見をやりとりし、なんとか理解し合っていく必要があります。

だからこそ、英語力に不安を持つ子どもたちに何より必要なのは、気後れしないで英語を使う勇気。この勇気を持つためには、英語は勉強する科目である以前に、『コミュニケーションのための道具なんだ』という実感をもつことが大切です。」(岡村さん)

「そして、英語は使えば使うほど上達します。『読めた!』『わかった!』『通じた!』という体験からくる感動こそが、英語を使い続け、学び続けるモチベーションになるんです。こうなると、子どもたちは『苦手だから勉強しなくちゃ』『とにかく英単語覚えなくちゃ』といった意識で学ぶのとは比べものにならないスピードで伸びていきます。

保護者の皆さんにはどうか、お子さまがこのようなポジティブな意識で英語に向き合うためのサポートを大事にしていただけたらと思います。そして、どうぞリラックスしてください。お子さんの力を信じて、中高6年間を楽しんでくださいね。」(堀田さん)

※記事の内容は執筆時点のものです

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