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海風と陸風は3つの自然法則とストーリーで理解しよう

2020年1月06日 ゆずぱ

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中学受験の知識問題のなかには、いくら勉強しても混乱してしまうものがありますよね。理科の地学分野の「海風と陸風」もそのひとつ。昼は海風が吹き、夜は陸風が吹くのですが、どっちがどっちか混乱してしまった経験はありませんか?

語呂合わせなどで覚えてしまう手もありますが、理科ではしっかりと理由をおさえることがおすすめです。「結果には必ず原因がある」ということを突き詰めるのが理科という教科です。昼に海風が吹くのも、夜に陸風が吹くのも、しっかりとした理由があります。

「海風と陸風」は自然法則と、風が吹くまでのストーリーを押さえることで理解できます。ここでは3つの自然法則から見ていきましょう。

しくみを理解するうえで、おさえておきたい自然法則3つ

自然法則とは、この地球上で変わらないルールのことです。「自然律」とも呼ばれています。法律のように人間がつくったルールではなく、自然界にもともと存在するルールのことです。例えば「モノは必ず下に落ちる」「水は熱すると蒸発する」「磁石は必ずN極とS極が引き合う」などといったことは、誰も逆らうことができない自然法則です。陸風や海風が吹く理由は、次の3つの自然法則から理解することができます。

【自然法則1】固体は温まりやすく、液体は温まりにくい

まずは、モノの温まり方や冷め方に関する自然法則です。「温まりやすさ」には色々な条件が絡んでいますが、代表的なものは「固体か?」「液体か?」といった条件です。

一般的に、固体は温まりやすく冷めやすい。気体は温まりにくく冷めにくい。液体はその中間となります。

ちなみに「モノの温度」とは、モノを構成する粒の振動のことです。固体のように粒がギッチリつまっていれば「温度が伝わりやすい」というイメージを持ちましょう。一方、気体は粒がスカスカなため、いくら温めても温度が伝わりにくいことがイメージできるでしょう。

紹介した「固体・液体・気体」を決定づける条件は、数ある条件のなかのひとつにすぎません。例えば、水はほかの液体に比べて密度が高いため、極めて温まりにくく冷めにくい性質があります。広大な海のように、海流などにより常に新しい水が入ってくるような環境であれば、その性質はさらに顕著です

【自然法則2】温かいモノは上へ、冷たいモノは下へ

2つ目の自然法則は、モノの温度と重さの関係です。温かいモノは上へ、冷たいモノは下へ行く自然法則があります。

熱気球を思い浮かべてみましょう。熱気球は、大きな気球のなかの空気をバーナーで温めて上へ上へとあがって行きますよね。熱気球は「温かい空気は上へ行く」といった自然法則を利用したものなんです。

【モノが温まると上に行くのはなぜ?】
モノは、温まると分子が振動して分子と分子の間に隙間ができます。隙間が多くなればなるほど密度がドンドン下がっていき、密度が下がると体積当たりの重さが小さくなっていくので相対的に軽くなる、というのがメカニズムです

【自然法則3】空気は気圧の高いところから低いところへ移動する

最後は、気圧と空気の動きに関する自然法則です。

電車に乗るときをイメージしてみてください。電車に人がたくさん乗っていたら、できるだけ人が少ないほうへ移動しますよね? 空気も似ています。空気がギュウギュウ詰めの場所と、空気がスカスカの場所があったら、空気はスカスカのほうへ移動するんです。これが「風」の正体です。

空気がたくさんあってギュウギュウ詰めの状態を「気圧が高い」といい、空気が少なくスカスカの状態を「気圧が低い」といいます。上の図でイメージをつかみましょう!

海風が吹くストーリー

3つの自然法則をおさえたら、いよいよ海風や陸風が吹くまでのストーリーを追ってみましょう。自然界で起きていることには全て理由があります。その理由を追っていくと、ストーリーができあがります。

まずは、海風が吹くストーリーからです。親子で一緒に確認してみてくださいね。

[1] 昼間は、太陽が陸と海を温める

昼間は太陽が地球を照らしています。さて、太陽に照らされた地球ではやく温まるのは、陸地と海のどちらでしょうか?

答えは簡単です。陸地のほうがはやく温まります。自然法則の1つ目を思い出しましょう。固体の土や岩でできた陸地と、液体の水で覆われた海では、固体である陸地のほうが温まりやすいからですね。

[2] 陸では空気が上に上にのぼっていく

陸地が温まると、海と比べて陸地の気温が全体的に高くなってきます。では、陸地の空気はどうなるでしょうか? これも答えは簡単です。陸地の温かい空気は上へ上へとのぼっていきます。2番目の自然法則を思い出しましょう。

[3] 陸の気圧がだんだん下がる

陸地の空気が上へ上へとのぼると、私たちが住んでいる地表近くの気圧はどうなるでしょうか? 空気がどんどん上へ行ってしまいますので、地表近くの空気は少なくなり、スカスカ状態になります。つまり、陸地の地表付近では気圧が下がります。

[4] 空気が海から陸へ移動する

いよいよストーリーの最後です。陸地の地表付近の気圧が下がると、空気の動きはどうなるでしょうか? 自然法則の3つ目を思い出しましょう。空気は気圧の高いところから低いところへ移動するんでしたね。つまり、気圧の低い陸地に向かって空気が移動します。このとき移動する空気が「海風」と呼ばれるんですね。

これが、海風が吹くまでのストーリーです。昼間に海風が吹く理由がわかったのではないでしょうか? 同じようにストーリーを追っていくと、夜に陸風が吹く理由もわかります。

陸風が吹くストーリー

次は、陸風が吹くまでのストーリーです。同じように3つの自然法則を使って、陸風が吹くまでのストーリーを追ってみましょう。

[1] 夜は太陽が沈み、陸と海が冷える

夜になると太陽が沈みます。太陽が沈むと地球を温めるものはなくなりますので、地球は冷えはじめます。さて、陸と海ではやく冷えはじめるのはどちらでしょうか? 答えは、陸です。1つ目の自然法則を思い出しましょう。

[2] 陸では空気が下へ下へとおりてくる

陸地が冷えると、陸地は海と比べて気温が低くなってきます。では、陸地にある空気はどうなるでしょうか? 2番目の自然法則を思い出してください。陸地の空気は、下へ下へとおりてきます。海風のときと逆ですね。

[3] 陸の気圧が上がる

陸地の空気が下へ下へとおりてくると、私たちが住んでいる地表近くの気圧はどうなるでしょうか? これも海風のときと逆ですね。空気がどんどん上からおりてくるので、地表近くの空気は多くなり、「ギュウギュウ詰め状態」になります。つまり、陸地の地表付近では気圧が上がります。

[4] 空気が陸から海へ移動する

では、陸地の地表付近の気圧が上がると、空気の動きはどうなるでしょうか? 自然法則の3つ目を思い出しましょう。空気は、気圧の高いところから低いところへ移動するんでしたね。つまり、気圧の低い海に向かって空気が移動します。このとき移動する空気が「陸風」と呼ばれます。海風のときとは、真逆のストーリーでしたね。

海風も陸風も、3つの自然法則を知っているとシンプルに理解できます。とくに理科では、今回説明したようにものごとの原因と結果をセットでおさえると、納得感の高い理解を得ることができますよ。

まとめ

理科には、暗記が必要な単元もあります。しかし、そもそも理科という教科の本質は「自然界で起きていることを探究すること」にあります。海風も陸風も気まぐれで吹いているわけではなく、自然法則が組み合わさった結果として起こっています。

「昼は海風」「夜は陸風」と暗記するのもよいですが、紹介したストーリーを親子で読み合わせてみてください。忘れにくい知識となり、ものごとを論理的に考えていく力も身につくでしょう。

※記事の内容は執筆時点のものです

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