中学受験ノウハウ 連載 塾のトリセツ

1年生からの塾通いで入試までに燃え尽きない?│中学受験塾のトリセツ#35

2024年4月09日 天海ハルカ

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早くから塾通いをするお子さんも増えてきていますが、早いがゆえのデメリットも気になります。

「早くからの通塾で燃え尽きないのか」という不安を抱える保護者さんもいらっしゃるのではないでしょうか。

燃え尽きるかどうかは環境や成長をひっくるめて「子による」ため、早くから塾に通うことが直接トリガーになるとは限りません。

大切なのは、燃え尽きないようペースを考えて塾や勉強と付き合うことだと思います。

今回は早くから塾に通う子に向けて、入試まで燃え尽きないために意識したいことについてお話しします。

燃え尽きさせないための過ごし方とは?

「入試までに燃え尽きる」というのは、子どもがやる気を失い勉強をやめてしまうことです。

楽しい部分はありつつも、やはり子どもにとって勉強は大変なもの。やる気を保ち続けるのは簡単なことではありません。

では早くから塾へ通うと燃え尽きリスクは高まるのかと言われると、そうとも言い切れないんですよね。

早くから塾に通って燃え尽きてやる気を失ってしまった子は、高学年から入塾しても、どこかで同じ結果を招いていた可能性は十分にあります。

いつ入塾しても燃え尽きる可能性はゼロではありません。

大切なのはいつ入塾するかではなく、どう塾生活を送るかだと思います。

燃え尽きさせないためには、低学年の塾を直接受験と結び付けすぎないことが重要です。

中学受験はマラソンのようなもの。ラストスパートである6年生に向けて、走るペースをコントロールしていきたいですね。

低学年は勉強の習慣づけを優先して

子どもが入試までに燃え尽きてしまわないために保護者として意識したいのは、「子ども自身が意欲や興味をもって勉強に向かえる」ことです。

とりわけ3年生までは、テストの点数に一喜一憂することよりも、基礎を学びながら勉強習慣をつけることを意識しましょう。そのために、勉強を楽しめる、無理のない塾を選びたいですね。

低学年の塾選びは授業の内容より、塾の雰囲気や通いやすさを重視しても良いとさえ思います。

とにかく塾を「大変なところ」「勉強させられるところ」と思わせないように、塾の負担は学校の宿題や友達との時間を圧迫しないくらいが目安です。

そもそも、「低学年から塾に通わなければ中学受験に間に合わない」ということはありません。

塾の中で中学受験対策の勉強は、多くの場合、4年生(3年生の2月)からが本番です。

入試までの燃え尽きを防ぐためにも、低学年の間は塾での勉強を楽しむことを優先させ、負担が大きいようであれば負担の少ない塾に転塾したり、あるいはいったんお休みすることも視野に入れましょう。

低学年のうちは受験を意識させすぎなくてOK

親が早いうちから受験ムードを高めてしまうと、子どもは受験を意識しすぎて燃え尽きやすくなります。

受験ムードを高めるとは、たとえば、会話の中に志望校の名前を積極的に出したり「入試では~」と話題にしたりすることを指します。

子どもが受験を意識することで緊張感が生まれ、勉強に熱が入るという良い面はあるのですが、その熱を持続するにはどうしてもエネルギーを消費してしまうんですよね。

もちろん本人が自発的に受験を志していれば問題ありません。

しかし、まだ受験についてあまりイメージができない低学年から受験を意識させられると、いつまでもやってこない本番へ向けて延々と努力を強要されている気持ちになってしまいます。

低学年では「わかるとおもしろい」「勉強したらテストでいい点数が取れてうれしい」など、「勉強=自分のため」という構図にできるとエネルギーの消費が抑えられます。

うまくいけば「もっと知りたい」「テストでいい点数を取り続けたい」と、さらなる勉強へのモチベーションにも繋がるでしょう。

受験や入試については、子どもに聞かれたら話すくらいで良いかもしれませんね。

子どもに主体性を持たせてモチベーションを保つ

塾では予習・復習とやることがたくさんあります。

それに加えて学校の宿題もあり、効率的に進めるため、スケジュールを組むのは完全に親の仕事ということも多いでしょう。

しかしここに落とし穴があります。

主役となる子どもがまだ成長途上にある中学入試では、ある程度の親の介入は不可欠です。しかし、早いうちから親が完全に管理してしまうと、子どもは勉強に対して受け身になってしまいがちなんですよね。

自分に必要な勉強は何か、どのくらい足りないか……いずれは、子どもが自分で考えて動けるようになるのが理想です。

そのためには子どもが主体的に勉強できるよう声掛けをしましょう。

たとえば勉強内容や勉強時間をなるべく、子ども自身に決めさせるよう、促していくといいでしょう。

もちろんすべて自分で決めろと言われても子どもは困ってしまうでしょうから、一緒にスケジュールを考えたり勉強内容を選択式にしたりというのが落としどころですね。

我が娘も主体性が課題と感じている一人。夜寝る前にテキストを読む時間を設けているのですが、科目だけは私が決めるものの、内容は自分で決めさせるようにしています。

「小テストの成績が悪いから」「ここが難しかったから」と、少しずつ自分に必要な勉強を考えられるようになってきているように思うので、同じように主体性が気になるお子さんにはぜひ試してみてください。

燃え尽きそうなときの休み方

低学年からスタートしている・していないに関わらず、長く通塾を続けていると、ときには失速することもあります。

塾や勉強以外に興味が向いたり、友達と遊びたい気持ちが強まったりするのは、小学生なら当然の気持ちですよね。6年生では難しいかもしれませんが、5年生までなら様子を見て早めに「受験勉強お休み期間」を挟んでください。

ただし、低学年のうちはともかく、中学受験に向けたカリキュラムが始まってから塾の授業を長く休むことは、後のフォローアップが大変になるので、あまりおすすめできません。

通塾自体は続けつつ、家庭での勉強量を減らしたり、テストの点数が低くても何も言わなかったりする期間を設けるといいでしょう。走っていたものを歩きに切り替えるという感じですね。

受験に向かう子どもの多くは「親を失望させたくない」という気持ちを胸に抱えています。「ときには歩いてもいいんだよ」と親から子どもに提案するだけで、子どもの気持ちが楽になることもあるんです。

「もう無理」というときは、思い切ってまったく勉強しない日を作っても良いですね。

ペース配分を考えた塾生活を

中学受験は長期戦、ずっと全速力で走り続けられたらいいのですが、それはなかなか難しいもの。

入試までの燃え尽きを防ぐには、ペース配分を考えた塾生活が効果的です。

また、いつ入塾したとしても燃え尽きを起こす可能性はあります。「早くから塾に通わせたのがよくなかった」と後悔するよりも、燃え尽きの兆候を感じたらすぐ適切に休みをとらせて、早めの回復を図ることがとても大切です。

入試までの期間は子どもにとって長いもの。

途中で失速することもあり得ると考え、失速しても完全に燃え尽きることのないよう、子どもの様子を見てサポートしてあげてくださいね。

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※記事の内容は執筆時点のものです

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