
サピックスを辞めたくないという息子。このままじゃ親子で崩れそう……|下剋上受験 桜井信一の中学受験相談室
今回の相談
サピックスを続けると親子で崩れそうです。
しかし、息子は「辞めたくない」の一点張りです。
どうしていいのか。
授業についていけているわけでもありません。
相談者:シズ
お子さまの学年:小5
桜井さんの回答

シズさん、こんにちは。
同じ状況の人はたくさんいるんです。
本当に崩れてしまう前に、立ち止まって周りの景色を眺めてから進みましょう。
そもそもどうして崩れそうか。心配だから、不安だからでしょう。
もうどうでもいいやと思うことにして、月謝と送迎だけを親の役目と決めてゆるく中学受験をすることにした人は、傍目には涼しげな顔をしているように見えるのです。心のどこかで奇跡を期待しているかもしれませんが、さすがに無理がある。そのままゆるく中学受験というイベントを迎えるでしょう。
つまり、そういう道もあるということです。
そして、そういう人ってかなりの数のような気がしませんか。
私は当時塾銀座を眺めながら考えました。
赤信号をみんなで渡っているだけで、この中に入ってしまうと失敗する。少なくとも私の目標としている結果とはかけ離れる。これはいけない。危ないところだった、そう思うとゾッとしました。
もし、シズさんが入塾した当時の目標に近いかたちを望んでいるならば、まだ諦めていないならば、このまま進むのは危険です。小5の4月ですからまだ間に合います。
ところで、授業についていけないのにお子さんはどうしてやめたくないのでしょうか。まずここを考えましょう。
子どもたちには『子ども社会』というものがあるんです。サピックスに通っているという事実があり、もしかするとそれは少しの優越感かもしれません。確かにサピックスの中では優劣がありますが、サピックスチームという意味では仲間なのでしょう。ここを抜けるとなると脱落組になる。これは相当勇気がいるのです。
私は小1からずっと、硬式少年野球チームに入っていました。小3くらいまではライバルなんていませんでしたが、小5にはもう埋もれていました。万年補欠です。母親が観戦に来たときは代打で出場できることもありましたが、小6になるとそれもなくなりました。
小学校高学年の実力差ってすごいんです。私がレギュラーになれる可能性は0%だとわかっていながら朝練と放課後のグラウンド整備、日曜日の練習試合では大きな声でチームのために声出しをしていました。「補欠で頑張ったやつは大人になると会社で活躍する」そう監督が言うのです。そんなの嘘だとわかっていました。でもやめられない。やめる勇気がないのです。私は硬式野球をやっているというちょっとした優越感と、チームメイトという呪縛から逃れられないのです。
テレビで高校野球を見るたびに思います。スタンドの補欠の子たちは気付いているのだろうか。早めに進路を変更するべきだった、しくじったと思っているのだろうか。そう思って見ています。プロ野球選手になった○○選手と共に甲子園を沸かせたというOBが観戦にきていることがあります。野球をやめていま何をしているのか、それでよかったのか、心の中でそう問いかけることがあります。抜ける勇気はなかったのだろうか。
塾も野球チームも補欠で成り立っているのです。大量の補欠の月謝が支えているのは同じ。レギュラーが結果を出す役目なのです。だから私は塾銀座で気付いた。ここに入ると、少年野球と同じ後悔をし、抜けられなくなる。だって、娘の能力からして補欠は確定だったから。そして、私は親子でキャッチボールする道を選んだのです。
いま娘は、頭のいい子たちには劣るけれど、勉強というものを武器にして医師を目指しています。これは小5のあの分岐点で判断を間違わなかったからだと思っています。確かにレスポンスは悪かった。でも、頭をカキカキしながらテキストにしがみつく姿を見て思いました。この道が一番可能性があると。どう考えても勉強が一番追いつきやすい。トップ10に入る必要なんてない。上位1割でなくてもいい。こんな楽な道がありますか?
授業についていけないという時点で、ほぼ理解できていないはずです。マルになった問題は見真似でできただけで、2週間後には忘れているはず。正解した問題を2週間後に間違う娘を目の当たりにしてきましたから。
出来ない子はここがわかってない。ここを教えないと進まないというポイントがあります。そこを親が教えないといけません。しかも繰り返し染みこむまで伝えるのです。我が子ですから、どれくらい繰り返せば染みこむかわかると思います。
親の予習が必要なのです。テキストを一緒にやっていませんか。それではダメです。数分先を考えながら、ペースはちょっぴり遅れるのがコツ。先生になってはいけません。子どもを勉強の道に進ませたいのであれば、こっそり先生になるのです。
まだ諦めていませんよね。ここ分岐点付近です。
※記事の内容は執筆時点のものです
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