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「なんとなく」、「周りがやっているから」で決めてはいけない中学受験!|書籍『中学受験はやめなさい 高校受験のすすめ』著者のじゅそうけんさんにインタビュー【前半】

専門家・プロ

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「受験総合研究所」、略して、「じゅそうけん」さん。

早稲田大学在学中より受験情報を発信し続けた結果、SNSの総フォロワー数10万人と受験界隈では大きな注目を集めています。

この4月には書籍『中学受験はやめなさい 高校受験のすすめ』を実業之日本社より上梓し、加熱する中学受験に一石を投じましたが、その真意とは?

今回はじゅそうけんさんに「中学受験」のリアルについて伺いました。

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首都圏の中学受験は過半数が納得いく結果を得ることができない

——まずはじゅそうけんさんが思う中学受験の現状とその印象を教えてください。

じゅそうけんさん(以下、じゅそうけん) 現状としては中学受験の割合は過去最多・最高と言われており、その数字は年々更新し続けています。首都圏だと23%の子どもが受験している状況で、小3や小4のうちから進学塾に入塾している子が増えています。

親御さん本人が中学受験を経験されていて、そのしくみを熟知されている家庭もありますが、「周りがやっているから」、「公立がなんとなく危ない印象があるから」という理由で中学受験をする家庭が増えている印象です。

——決定的な理由があるのではなく、「なんとなく」という理由で中学受験を経験されている家庭が増えていると。

じゅそうけん 日本は中学まで義務教育なので、地元の公立中学に進む場合、試験はなく全員が入学できます。それでも私立中学への進学を希望する場合は、メリット・デメリットを把握してから参戦したほうがいいと思います。

実際、首都圏の中学受験で第一志望に合格できるのは男子の場合は4人に1人(25%)、女子の場合は3人に1人(33%)と言われています。このように、「なんとなく」という理由で中学受験に参戦することは、厳しい結果になる場合もあるということを理解しておく必要があると思います。

我が子は中学受験向き?不向き?を考える

——実際は、思うような結果を得られないお子さんのほうが割合的には大きいと実感できていない保護者も多いかもしれませんね。

じゅそうけん 男子の場合は4人のうち3人、女子は3人に2人が第一志望校には入学できません。このように数字を見るとドキリとするかもしれませんね。首都圏の中学受験の場合、過半数の子どもは本来望んだ結果を得ることができないのです。

ですから、中学受験を視野にいれる場合、まずは現状を知るということ。そして、お子さんが受験に向いているかどうかを見極める必要があると思います。

——「中学受験に向いている子」とはどんなお子さんでしょうか?

じゅそうけん 中学受験は基本、ペーパーテスト一発勝負です。社会適応性がやや未発達でも早熟で認知能力が高く、勉強ができれば志望校の試験を突破できます。また、早い段階で中学受験のメリットを親子でよく理解し、目標が定まっている場合は向いていると思います。

——じゅそうけんさん自身は私立中学へ進学されたのでしょうか?

じゅそうけん いえ、私は愛知県の豊田市出身ですが、この地域の中学受験の割合は当時2%ほどだったので、ほとんどの子どもが中学受験をしません。よって、なんの疑いもなく地元の公立中学に進学し、高校受験を経験したのち都内の大学に進学しました。

しかし、振り返ってみると私は算数がかなり得意な小学生だったので、「内申点」が重要な高校受験よりも、ペーパーテストだけで勝負ができる中学受験のほうが向いていたかもしれないと、実のところ思っています。

中学受験のメリット、デメリットとは?

——じゅそうさんは塾の講師を経験があるとのことですが講師時代、実際に首都圏の子どもたちと触れ、どんなことを感じましたか?

じゅそうけん 私が10歳のときは大学と言えば、東京大学と地元愛知の名古屋大学くらいしか知りませんでした。

でも、首都圏の子どもたちは、国公立の大学から早慶やGMARCH など、私立大学の情報をある程度知っています。10歳の時点で解像度の違いを感じました。

また、将来は大学に行ってどこどこに就職したいなど、夢がより明確な子が多かった印象があります。

——中学受験を目標にすることで10歳の時点で自分の将来の目標が定まることはメリットの一つと言えるでしょうか。

じゅそうけん 早い段階で自分の進路を見据えることができるという点は、メリットだと思います。中高一貫校では大学受験の先取りや、大学受験に合わせたカリキュラムを取るところが多いので、大学入試への対応力は高いと言えます。

一方で、親主導のもとで勉強している子どももいました。「我が子をこの学校に入れたい」という親の熱量についていけていない子どもも見てきました。「なぜ勉強をするのか」ということが腑に落ちていない状態で勉強しても、当然、良い結果は出せません。ですから、本人が成熟し、勉強をすることに納得した時期に受験をしたほうがいいのですが……。

——中学受験を目指す家庭に一番大事なことはどんなことだと思われますか?

じゅそうけん ここまでお話ししたように中学受験は周りの環境や親御さんの想いにも影響されますが、どこにゴールを置くかと言うことが大事だと思います。

たとえば、医者になりたい、東大に入学したいとゴールが親子間で一致するならば、中学受験はすべきだと思います。なぜなら医学部や東大に入学する人は、過半数が中学受験を乗り越えてきた人たちばかりだからです。中学受験率を考えると、これは大きな数字です。

また、中高一貫校は医学部や東大受験に合わせたカリキュラムをおこなう学校が多いので、6年間しっかり勉強できて、難関大学の受験に有利です。

一方、親子間で意志の疎通ができないまま本番を迎え、思うような結果を得られなかった場合は双方にとって大きなダメージになります。

また、書籍の中では数字をあげてくわしく解説していますが、GMARCHクラスの大学進学を目指すなら、少子化の進む現代においては、親子ともに非常に大変な思いをして中学受験をさせるメリットは小さいことが多いと考えています。

よって、中学受験を目指す前にお子さんの適正を見極め、中学受験の正確な情報やデータを把握してから「やるか」、「やらないか」を決めたほうがいいでしょう。

今回は中学受験に焦点を当ててお話をうかがいました。次回は高校受験に焦点を当てて、中学受験と比較した場合の高校受験のメリット、どういう子に向いているか、中学受験と比較した場合の話などを、お伺いしていこうと思います。

 

▼書籍『中学受験はやめなさい 高校受験のすすめ』についてはこちらの記事で紹介しています。

※記事の内容は執筆時点のものです

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