中学受験ノウハウ 連載 親子のノリノリ試行錯誤で、子供は伸びる

子どもにもできる簡単マインドフルネス 5選―― 親子のノリノリ試行錯誤で、子供は伸びる

専門家・プロ
2024年5月08日 菊池洋匡

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自ら伸びる力を育てる学習塾「伸学会」代表の菊池洋匡先生がおくる連載記事。「親子で楽しく試行錯誤することで、子供が伸びる」ということを、中学受験を目指す保護者さんにお伝えします。

こんにちは。中学受験専門塾 伸学会代表の菊池です

前々回の記事

「早いけど雑!」VS「ていねいだけど時間がかかる」どっちが中学受験に有利?

で触れた「マインドフルネス瞑想」について、もっと詳しく知りたいというリクエストをいただいたので、今回は子どもでもできる簡単なやり方をいくつかご紹介しようと思います。

瞑想というと「怪しい」「スピリチュアルなもの」「宗教っぽい」というイメージを持つ方もいるかもしれませんが、科学的に効果が立証されている立派な脳トレです。

スティーブ・ジョブズ、ビル・ゲイツ、マーク・ザッカーバーグら世界的な成功者が習慣として取り入れており、AppleやGoogleは社員研修としてマインドフルネス瞑想を取り入れています。

こう言うと今度は、とても高度で難しく、子どもにはできなさそうに感じてしまうかもしれませんね。

しかしそんなことはありません。

子どもでも簡単に実践できます。

そして効果は抜群です。

実際に子どもを対象にしてマインドフルネス瞑想を実践させた研究においては、

  • 子どもの社会性が高まった
  • 子どもの攻撃性が減った
  • 子どもの問題行動が減った
  • 授業を集中して受けられるようになった
  • テストの成績が上がった

といった結果が示されています。

いいことづくめですね。

興味が湧いてきたら、ぜひ今日から取り入れてみてください。

1.マインドフルネスとは?

まず最初に、マインドフルネスとは何かをあらためて説明しておきます。

マインドフルネスとは、今この瞬間の自分自身の状態に意識を向け、ありのまま受け入れることです。

瞑想や呼吸法はそのための手段の1つでしかありません。

簡単な方法の1つとして呼吸法が注目されていますが、他にもいろいろな方法があります。

身体の感覚に意識を向けるものや、身体を動かすものもあります。

マインドフルネスというと座って動かずに呼吸に集中し、意識を無にする、というイメージがあるようで、身体を動かすマインドフルネスというのは少し意外とおっしゃる方もいるかもしれません。

静止して無にならなければいけないという思い込みを、まずは取り払いましょう。

「うちの子には大人しく座っているのは無理そう…」と思ったら、別の方法をチャレンジしてみてください。

2.簡単マインドフルネス実践法5選

それでは早速、マインドフルネスを実践する方法をご紹介していきましょう。

「うちの子に合いそう!」というものからチャレンジしてみてください。

2-1. 呼吸瞑想

一番メジャーなのが、この呼吸瞑想です。

まずは姿勢を正して座りましょう。

イスに座っても良いですし、地面に直接座っても構いません。

寝る前に寝そべってやっても構いません。

眠くなったらそのまま寝てしまうのもありです。

鼻からゆっくり息を吸って、口からさらにゆっくりと息を吐きます。

吸う時間の2倍の時間をかけて息を吐きましょう。4秒かけて吸って、8秒かけて吐くくらいのペースを目指すと良いでしょう。

息を吸った後、少し息を止めてから吐くというやり方もあります。4秒かけて吸って、7秒息を止めて、8秒かけて吐くというのがスタンダードです。

もちろん、慣れないうちは、吸うのも吐くのも止めるのももっと短い時間でも大丈夫です。

苦しくなるようなら無理はしないでください。

そして、呼吸をしている間、心の中で「吸って」「吐いて」とくり返しましょう。

お子さんが小さい場合には、あなたが「鼻からゆっくり息を吸いましょう。お腹が膨らんでいくのを感じるね。次に口からゆーっくり息を吐きましょう。お腹がだんだんしぼんでいきます…」といった感じで声をかけて、呼吸と身体の感覚に意識を向けるのを手伝ってあげてください。

そうやって、頭の中からなるべく余計な考えを追い出し、呼吸の感覚に集中することを目指しましょう。

もし余計な考えが浮かんでしまっても大丈夫。

「あ、他のことを考えてしまった」と自分で気付いて、呼吸に意識を戻すことがとても良い脳のトレーニングになります。

3分、5分と続けていくと、身体がかゆくなってくるのかもぞもぞ動く子も多いです。

そうした場合にも、「あ、動いちゃった」と気付いて、また姿勢を正すのが良いトレーニングになります。

集中できないと効果が無いなんて思わず、気が散って、戻ってを繰り返しながら、少しずつ上手にできるようになっていこう、と声をかけてあげてください。 

ちなみに私は生徒達にこの呼吸瞑想をやらせるときには「地蔵コンテスト」と称して一番かっこいい姿勢でピタッと静止できていた子を表彰しています。

iPadで録画しておいて、それをみんなで見てお互いに投票でNo.1を決める事が多いです。

じっと動かないように我慢するのは子どもにとって苦行になることも多いのですが、こうした「遊び」にすると子どもたちも楽しく前向きに取り組めます。

▼伸学会での瞑想の様子はこちらでご覧いただけます。伸学会_瞑想中

あなたのご家庭でやるときにも、そうした楽しめる工夫をしてみてくださいね。

また、最近は瞑想をサポートするアプリもいろいろありますよね。

私もオーラリング(指輪型のヘルストラッカー)やAppleウォッチのアプリについていた瞑想機能をよく使っています。

アプリが「鼻から4秒息を吸ってください。1、2、3、4、、、」といった具合にガイドをしてくれるので、自分はその音声に合わせて呼吸に意識を集中するだけ。とてもやりやすいですよ。

2-2 ボディスキャン瞑想

この瞑想も初心者向きで、子どもでもやりやすいです。

まず、仰向けになって寝そべり、身体をリラックスさせて姿勢を整えます。

目は閉じた方がやりやすいでしょう。

そして、呼吸に意識を向けていきます。

呼吸を無理にコントロールしなくて良いので、自然に呼吸をしてください。

そして、身体の各部位をスポットライトで照らすようなイメージで、普段は意識していない身体の感覚に意識を向けます。

順番は特に決まっていないので、頭から順番でも足から順番でも構いません。

今回は頭からやってみましょう。

頭に意識を集中してください。

どんな感覚があるでしょうか? むずむずするところはありますか?

後頭部はどうでしょうか? 普段あまり意識することがない、頭の重さがかかっていることに気付きますか?

こうした要領で、おでこ、まゆ、目、鼻、耳、ほっぺ、口……と順に意識を向けていきましょう。

これもまた、お子さんが小さい場合には、「肩はどんな感じ? 何を感じている?」と問いかけてイメージさせてあげてください。

普段まるで気付いていないですが、意識を向けると、私たちの身体は様々な感覚を感じ取っています。

例えば、服を着ているときに、肌に触れている服の感触を意識することってあまり無いですよね。

でも、意識を向ければ確かにそれはあるはず。

そうした、「今この瞬間に自分自身が感じていることに意識を向けること」がマインドフルネスなのです。

2-3. 食べる瞑想

「学力アップ」からは少し離れてしまいますが、食べる瞑想(マインドフル・イーティング)なんてものもあります。

あなたのご家庭では、普段の食事はどんな様子でしょうか?

YouTubeを見ながら食べたりしていませんか?

そうした食事の在り方も楽しいもので、決して悪いとは言いません。

しかし、食事とYouTubeの「マルチタスク」はどちらにも集中していない「心ここにあらず」な状態です。

こうした食事の仕方は、つい食べ過ぎてしまったり、噛む回数が減ったりして、肥満にもつながります。

たまにはマインドフルな食事をしてみるのはいかがでしょうか。

方法は、次の4ステップです。

 1. まずは口に入れる前に、形や色やにおいや温度などを五感で味わいます。

 2. 次に口に入れて、噛む前に舌で感触や味を感じます。

 3. ゆっくり噛んで、味の変化を感じます。

 4. ゆっくりと飲みこみます。このとき、食べ物がのどを通り胃に入っていく感覚をじっくり感じ取ります。

食事をまるまるすべてこんな食べ方をしていたら時間がかかって仕方ありません。そんなめんどくさいことは続けられませんよね。

ですから、最初の一口目だけ、こうしたやり方でじっくり味わうというのをときどきしてみてください。

集中力アップや幸福度アップといった効果があるそうですよ。

2-4. 歩く瞑想

最初にお話しした、動く瞑想の一種です。

ヨガ瞑想よりも手軽にできるので試してみてください。

なお、マインドフルネスは、「今この瞬間に集中する」という取り組みなので、逆に言えば周囲に意識を払うことをやめることです。

歩くことに集中しすぎて、周囲の人や車にぶつかったりしたら大変!

ですから、やる前にまずは安全な場所を選んでくださいね。

最初は家の中で、リビングのテーブルの周りを歩くとかでOKです。

やり方は次の3ステップです。

 1. 力を抜いて深呼吸し、リラックスします。

 2. 足裏の感覚に意識を向けながら歩きます。

かかとからつま先にかけて、どこが地面に触れていて、どこに体重がかかっているかを感じましょう。アスファルトや土など、地面ごとの固さや、小石などを踏んだ時の感覚など、普段意識しない感触を楽しんでください。

 3. 歩きながら身体の動きやパーツに意識を向けます。

足の裏だけでなく、脚の筋肉の感覚や関節の動きなどに意識を向けましょう。呼吸瞑想と同じく、余計な考えが頭に浮かんでくるものですが、そのたびに身体の感覚に意識を戻しましょう。「吸って」「吐いて」と心の中で繰り返したのと同じように「右足を出して」「右足を着地」「左足を出して」……と心の中で身体の動きを実況中継するのも、集中するための方法としておすすめです。

これを5分くらいを目標に続けてみてください。

この歩く瞑想にも、不安やストレスに強くなる効果や、集中力がアップする効果があるとされています。

近年では、集中するのが苦手な傾向のあるADHDの方向けの注意を持続するための訓練として、歩く瞑想が取り入れられたりもしているそうです。

もしお子さんが注意散漫なところがあるなと思ったら、歩く瞑想にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

2-5. 聞く瞑想

これも子どもでも簡単にできて効果的なマインドフルネスの方法です。

「チーン」と長めに音が鳴るベルや音叉を用意しましょう。

瞑想アプリにも、こうした音が入っているものが多いので、アプリを用意してもOKです。

まずは、姿勢を正して座って目を閉じます。

そして、ベルなどで音を鳴らします。

音が完全になくなるまで集中して聞きましょう。そして、音が完全に消えたら手を上げましょう。

子どもの手が上がったら深呼吸に移ります。

手を自分の胸かお腹にあてて、呼吸に意識を集中します。

ここからは呼吸瞑想の要領です。

数回深呼吸を繰り返したら、最後にまたもう一度ベルを鳴らして終了です。

この聞く瞑想は、私は幼少期から自然とやっていたものでした。

我が家には仏壇があり、朝晩祖父母・両親と一緒にお経をあげていたのです。

お経の際には、「鈴(リン)」を「チーン」と鳴らします。

音がきれいで、耳を澄ませて聞いていました。

深呼吸をしていたわけではありませんでしたが。

知らずに毎日ちょっとしたマインドフルネス瞑想をしていたんですね。

意外なご利益がありました(笑)

まとめ

以上、子どもでもできる簡単マインドフルネス瞑想5選でした。

あなたのお子さんにはどれが合いそうでしょうか?

とりあえず一通りやってみて、無理なく続けられそうなものを続けていってくださいね。

そうすれば、心身共に健康になり、頭も良くなりますよ。

 

※記事の内容は執筆時点のものです

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