子供の考える力が伸びる能動的な話の聞き方―― 親子のノリノリ試行錯誤で、子供は伸びる
こんにちは。中学受験専門塾 伸学会代表の菊池です。
前回の記事では、子どもとの信頼関係を深める話の聞き方についてお話ししました。
今回はそれをさらにもう一歩進めた、子どもの発達を加速させる「能動的な話の聞き方」についてお話しします。
「能動的な聞き方」とは、相手の話の意図をしっかり受け止める聴き方のことです。
この能動的な聞き方を親にしてもらうと、子どもは自分の考えが尊重されていると感じ、もっと自分で考えて決断して実行していこうという意欲がわきます。
その結果、やる気も高まるし、考える力もわくし、良い行動を増やし悪い行動を減らしていくことができるようになります。
自分の力でより良い自分になっていくことができる、まさに「自立」のための力を子どもが身につけていくというわけです。
子どもに自立する力を身につけさせることは、子育てにおける大きな目標の1つですよね。
「うちの子、どうしたらやる気が出るんだろう?」
「どうして、すぐに諦めてしまうのかな?」
「なんで同じ失敗を何度も繰り返すんだろう?」
そんなふうに悩んでいるお父さんお母さんは、これからお話しする能動的な聞き方を実践していただくと、子どもの考えや行動が変わってくるはずですのでぜひ試してみてください。
Contents
親が「自分の意見」を言ってはいけない
能動的な聞き方を実践するうえで、まず前提となるのは「自分の意見を言わない」ということです。
この自分の意見を言ってはいけないというのが、前回お話したことでした。
子どもの話を聞いて、それに対してお説教をしたり評価を下したりと親が意見を言えば、子どもは自分の意見・考えは尊重されていないと感じます。
親が言ってしまいがちな、子どもから会話を拒絶される12の発言の型をぜひ再度チェックしてみてください。
このような発言をせず、子どもの話に耳を傾けることが重要なのですが、そこでさらにもう一歩踏み込んでできると良いことが、今回のテーマである能動的な聞き方です。
能動的な聞き方=相手の気持ち・考えを代弁する
この能動的な聞き方は、端的にまとめると「相手の気持ち・考えを代弁する」という事です。
言葉には文字通りの意味と、その言葉の裏に隠された意味があります。
例えば、あなたがお子さんに「今何時だと思ってるの!?」と言ったとします。
それに対してお子さんが、「今は夜の10時だね」と答えたらどうでしょうか?
この答えはあなたの気持ち・考えをくみ取った答えでしょうか?
違いますよね。
あなたが「今何時だと思ってるの!?」という言葉に込めたのは、「早く寝ないと体に悪くて心配だ」という気持ちや、「急いで寝る準備をして布団に入るべきだ」という考えですよね。
もし「10時」という答えがお子さんから帰ってきたら「そういうことを言ってるんじゃない!」とブチ切れモードになっちゃう方も多いんじゃないでしょうか。
それと同じで、子どもの言葉にも文字通りの意味とは別の、隠された意味があります。
例えば、お子さんが「なんで勉強しなきゃいけないの?」とあなたに言ったとします。
これに対してあなたはどう答えますか?
「勉強をすると将来役に立つからよ」とか「将来やりたいことをやれるようになるから、選択肢が増えるからよ」とか言っちゃったりしてませんか?
それって「今何時だと思ってるの?」に対して「10時」と答えるのと同じです。
言葉の裏にある子どもの気持ち・考えが理解できていません。
「10時」と言われてあなたが「そうじゃない」と怒るように、「将来役に立つから」と言われた子どもは失望します。
あるいは怒りを感じます。
お母さんは、お父さんは、私の気持ちをわかってくれていないんだ、と。
子どもの気持ちへ思いをめぐらせよう
能動的な聞き方とは、子どもの言葉から、子どもの気持ち・考えを読み取ることです。
「この子は今、どんな気持ちでこの話をしているんだろう」
「どんな考えをわかってほしいのだろう」
ということに思いをめぐらせるのです。
「なんで勉強しなきゃいけないの?」と言われたら、「勉強がわからなくてつらいのかな?」あるいは「もっと遊びたいという気持ちなのかな?」と、子どもの普段の様子も踏まえて推察をするんですね。
そうして自分の気持ちや考えをお父さんお母さんは理解してくれているとわかると、子どもは安心するし、親を信頼するようになります。
この安心感は子どもの健全な成長のためにとても重要なものです。
こうした安心感があることで、何か問題があったときには、解決策を自分で考えて行動していくこともできるようになります。
やってはいけない3つの行動
では、この能動的な聞き方をする上で、やってはいけないことを3つお話ししておこうと思います。
これをやってしまうとせっかくの子どもの成長のチャンス、親子関係を深めるチャンスを台無しにしてしまうのでお気を付けください。
やってはいけないこと①否定や説教
能動的な聞き方をしてホンネを出させておいて、それを否定したりお説教したりする。
最初のうちにやってしまいがちな失敗の典型がこちらです。
「なんで中学受験をしなきゃいけないの?」に対して、「塾に行くせいで友達と遊べないのがつらいのかな?」とあなたが返したとします。
これは子どもの言葉の裏にある気持ちを代弁する能動的な聞き方ですね。
それに対してお子さんが「そうなんだよ。みんな楽しそうに公園で遊ぶ約束をしてるのに、自分だけ行けないのが嫌なんだ」と言ったとします。
そこであなただったら次になんと言うでしょうか?
ここで「でも、中学受験をして私立に行くと、設備が整ってるからできることが増えるよ」とか「中学受験をすると将来の選択肢が増えるから、今は我慢するのが大事だと私は思うよ」とか言ってしまうと、前回の記事でお話しした子どもに拒絶される12パターンに戻ってしまうわけですね。
これって「怒らないから本当のことを言ってごらん」って言われて本当のことを言ったら怒られた、みたいな状態なわけです。
そんなことされたら、やっぱり怒ったじゃん!もうだまされないぞ!本当のことなんか二度と言うもんか!てなりますよね。
それと同じで、能動的な聞き方で本音を引き出しておいて、それに対して否定したりお説教をしたりしたら、子どもは裏切られたと感じて親を拒絶するようになります。
「みんなと一緒に遊びたいよねー」「誘いを断るのはつらいよね」と、子どもの気持ちに寄り添った能動的な聞き方を続けていくことを心がけましょう。
やってはいけないこと②オウム返しを多用する
相手が言ったことをそのまま復唱することは、効果的な方法の1つです。
少なくとも、「ちゃんと聞いていた」という事は相手に伝えられます。
しかし、この復唱・オウム返しは、その言葉の裏にある本当の意味、すなわち気持ちや考えを理解したと伝えることにはなりません。
言葉の裏にある本当の意味が分かっていなくてもオウム返しはできてしまうからなんですね。
ただオウム返ししてるだけだと、だんだん子どもも「本当にわかってんの?」「もしかしてバカにしてるの!?」って思います。
多用し過ぎないように気をつけましょう。
やってはいけないこと③親の自己同一化
最後の1つは、子どもの問題を自分の問題として抱え込んでしまうことです。
これは言い換えると、自分の思うように子どもを動かそうとするということです。
この能動的な聞き方に限った話ではなく、子どものやる気を引き出す方法とか、親子関係を良くする方法についてYouTubeや公式LINEやメルマガでお伝えすると、これを使えば子どもを自分の思い通りに動かせる!と期待してしまう方がいらっしゃるんですね。
でもそれは間違いです。
能動的な聞き方は、子どもがなりたい自分・理想の自分になる後押しをすることはできても、親の思い通りに動かす手段とはなりません。
勉強をすることも、ピアノの練習をすることも、野球の練習をすることも、全て子ども自身の問題です。
受験に合格するか、発表会で成果を出せるか、試合で活躍し勝つことができるか、結果は子どもが自分で引き受けるべきことです。
子どもが勉強しないと困る、受験に合格しないと困る、とあなたが感じているとしたら、それは子どもの問題を自分の問題として奪っていることに他なりません。
自分の都合を押しつければ、子どもの反発を招くことになります。
あなた自身も、きっと他人の都合を押しつけられたら反発をするのではないでしょうか?
例えば、実の両親・義理の両親から「この子は家の後継ぎとしてしっかり育ててもらわないと困る」と言われたら。
あるいは、あなたが母親だとして「嫁は家庭を守るのが大事だから、仕事はセーブして家庭を大事にしてもらわないと困る」とか。
逆に、「夫の収入ばかり頼りにしていないで、今どきは女性もしっかり働いて稼いでもらわないと困る」とか。
もしあなたが父親だとして「上司からワークライフバランスなんて言ってないで、男たるものバリバリ働いてくれないと困る」って言われたら?
このように自分の問題を誰かが奪っていこうとしたら、あなたは抵抗を感じるのではないでしょうか。
率直に言って、相手を嫌いになりますよね?
同じことを子どもに対してすれば、子どもから拒絶されるのは当然だと思いませんか?
アドラー心理学でも、こうした他人の課題に土足で踏み入ることをしてはいけない、自分の課題と他者の課題を分離しなければいけない、と言っています。
同じことを言っているんですね。
子どもが自分の力で自分の人生を切り開く後押しを
能動的な聞き方は、問題を持っている人が自分で解決策を見つけることを後押しする強力な方法ですが、これが効果を持つためには、後押しする側、つまり聞き手が、問題は相手のものであることを認め、自分で解決策を探すのを一貫して見守る必要があります。
こうした姿勢を保てるようにするために、ゴードン博士は親業訓練に参加する親たちに次のような問いを投げかけているそうです。
「子どもはあなたと同じような考え方をしなければならないのか?」
「あなたの意見と異なった意見を認めることはできないのか?」
「この複雑な世の中で、子どもが自分なりの見方できるように助力することが、あなたにはできないのか?」
「未熟でも自分で問題を解決しようとしている姿をそのまま認めてやれないのか?」
「あなたは自分が子どものとき、世の中の問題に対して自分なりの面白い考え方をしていたのを忘れてしまったのか?」
こうした問いかけに対して、理性的に考えれば、「はい」という答えはおそらく出てこないと思います。
繰り返し自問自答し、能動的な聞き方とは自分の思う通りの行動を子どもにさせるためにあるのではなく、子どもが自分で前に進むのを後押しする、勇気づけるためにあると確認しましょう。
そして、実践していきましょう。
そうすれば、子どもは自分で考え、自分の力で自分の人生を切り開いていくことができるようになります。
それこそがあなたが本当に求めているものではないでしょうか?
ぜひ、今日から、子どもの発する言葉の本当の意味を考える「能動的な聞き方」にチャレンジしていってくださいね。
まとめ
それではここまでのまとめです。
子どもの自分で考える力が伸びる「能動的な聞き方」とは、子どもの言葉の裏にある本当の意味を考える聞き方です。
子どもが「今日のごはんは何時にできるの?」と言ったときに返す能動的な聞き方の言葉は「19時だよ」ではありません。「お腹がすいて何か食べたいの?」です。あるいは、お子さんが受験生なら、「勉強のスケジュールを立てるためにごはんの時間を把握したいんだね」かもしれません。言葉の裏にある気持ちや考えを推察してください。
そして、能動的な聞き方を機能させるためにやってはいけない注意点が3つありました。
①能動的な聞き方をしてホンネを出させておいて、それを否定したりお説教したりしてはいけない
②オウム返しを多用し過ぎてはいけない
③子どもの問題を自分の問題として抱え込んではいけない
の3点です。
後で見返してみましょう。
そして、それぞれ具体的にどんな内容だったか、誰かに説明してみて、どれくらい覚えているか、理解できているか、確認してみてくださいね。
最後に、あなたへの大切なメッセージです。
私はこれまで1000人以上の受験生親子と面談を行ってきました。
その経験の中で痛感するのは、子どもの話を聞くことは大切だと頭ではわかっていても、なかなかそれを実行できない親御さんが多いということです。
「子どもの話を聴いてあげましょう」とお話しすると、「私はちゃんとこどもの話を聞いています」と言う方もたくさんいらっしゃいます。
でも、子どもの方の話を聞いてみると、会話とは名ばかりのお説教だったり、一方的な指示命令になっていたりで、子どもにとって苦痛な時間になっていることもしばしばあります。
はっきりお父さんお母さんと話したくないという子も多くいました。
どの親御さんも、わが子がかわいい、心配で仕方ない、そんな気持ちを持っています。
だから「自分がいい方向に導かなければ」という思いがあふれるほどあります。
その愛情はとても尊いものですが、こうなってほしい、こういう行動をしてほしいという気持ちばかりが先走って、「どう言えば子どもがわかってくれるだろうか」ばかりに心が向いてしまい、子どもの話を聞くことを忘れがちです。
「子どもは何を伝えたくて話しているのか」を考えるのを忘れてしまうのです。
そして自分の気持ちを押しつけて、自分の思い通りに子どもを動かそうとすれば、子どもの自分で考える意欲を奪い、考える力を奪い、幸せな人生を奪ってしまうことになります。
子どもを思う気持ちが裏目に出てしまう、とても残念な状況です。
親の伝えたいことを何十回と伝えるよりも、子どもの話をしっかり聞く方が、子どもの能力を育てることにつながるとぜひ覚えておいてください。
そのために、まずは親のこうなってほしいという願望をわきに置いておくようにしましょう。
どんな我が子もありのまま受け止める。
そういう気持ちで話を聞くことができれば、能動的な聞き方を正しく実践できますよ。
それにより、良好な親子関係を築き、子どもの能力が開花していくのを楽しんでくださいね。
それでは。
※記事の内容は執筆時点のものです
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