中学受験ノウハウ 連載 親子のノリノリ試行錯誤で、子供は伸びる

よかれと思った口出しで喧嘩勃発!? 子どもの勉強を見守るときの親の心構え―― 親子のノリノリ試行錯誤で、子供は伸びる

専門家・プロ
2024年9月11日 菊池洋匡

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自ら伸びる力を育てる学習塾「伸学会」代表の菊池洋匡先生がおくる連載記事。「親子で楽しく試行錯誤することで、子供が伸びる」ということを、中学受験を目指す保護者さんにお伝えします。

こんにちは。中学受験専門塾 伸学会代表の菊池です。

先日ライブ配信中に、視聴してくださっていた塾生の親御さんから、「子どもの勉強を見ているとお互いにイライラしてしまうのですが、見ないようにして塾にお任せした方が良いでしょうか?」というご質問がありました。

こうしたお悩みって、多くの親御さんにとってあるあるですよね。

子どもは未熟ですから、正しい勉強のやり方を実践するためには大人のサポートが不可欠です。子どもが自走できるようになるまで、やり方を教えるためにも、やる気にさせるためにも、さまざまな後押しが必要になります。

でも、子どもの学習をどうサポートすればよいのか、どこまで関わるべきなのか、迷うことも多いですよね。

字が汚かったり、式やひっ算が雑だったりすると、私たち大人の側がイライラしてしまうこともあります。

そして、つい口を出してしまって、子どもと喧嘩になる、なんてこともあるものです。

子どもの自主性を育てたい、気分良く勉強させてあげたいという思いがある一方で、間違っているところ、できていないところは直してあげなければいけないという思いもある。

果たしてどうすれば良いのでしょうか?

そこで、今回の記事では、子どもの勉強を見守る際に気をつけるべきポイントを解説します。親子でのより良い学習環境作りに役立ててください。

子どもの勉強を見守る際に大切なこと4つ

まずは、勉強を見守る際に、あらゆる場面を通じて心がけることからお話しします。

①:口を出すタイミングを見極める

つい口を出したくなる瞬間、ありますよね。

「あっ、今、計算間違いしてる!」とか「誤字がある!」と気づくと、親としてすぐに指摘したくなるのは自然な反応です。

でも、まずはグッとこらえましょう。

子どもが自分で気づく事ができれば、その方が成長につながります。

自分で間違いに気づく力を、子どもに身につけさせたいですよね。

また、自分で間違いに気づくことができれば、自信もつきますし、次からの学習にも活かせます。

②:指摘はポジティブに

間違えたところは直しをして、正しい答え、正しいやり方を覚えることが成長への道です。

ですから、子どもには間違えているところを教えてあげなければいけません。

でも、間違いを指摘されるのって嫌なものですよね。

私たち大人だって、仕事のときにミスを指摘されると嫌な気持ちになりますよね。

子どもであればなおさらそうした間違いの指摘を受け入れられず、癇癪を起こしてしまうなんてこともありがちです。

そこで大事になってくるのが間違いの指摘の仕方です。

否定的な言い方ではなく、「ここまでは合ってるから、ここから先を直すと正解にたどり着けるよ!」といった感じで、できているところにフォーカスするポジティブなアプローチを心がけましょう

大事なのは、間違いを「悪いこと」としてではなく、「成長の機会」として捉えることです。

③:子どもの考えを尊重する

子どもが遠回りな解き方をしていたりすると、見ていてついつい「こうやって解くんだよ!」と教えたくなるものですよね。

ですが、これもグッとこらえて、まずは子どもの考えを尊重してみてください。

「どうしてそういう解き方をしようと思ったの?」と質問して、子どもが自分の考えを説明できるよう促しましょう。

自分の答えを説明する過程で、間違いに気づいたり、もっと良いやり方にたどり着くことがあります。

これを繰り返すことで、子どもは「自分で考える力」を身につけ、自信を持って問題解決に取り組めるようになります。

親は、子どもが試行錯誤するところを見守り、ときには問いかけて、考えをうながしてあげましょう。

④:ヒントの与え方に気をつける

手が止まっているときや、明らかに悩んでいるときには、ヒントを出したいと思うこともありますよね。

そういうときには、いきなり答えに直結するヒントを出すのではなく、「どこまではわかっているか」「どこでつまずいているのか」を子ども自身に考えさせるようなヒントが効果的です。

たとえば「今わかっていることを説明してみて」「まだ使ってない問題文の条件は何がある?」「次はどうすればいいと思う?」といった問いかけです。

これにより、子どもは自分で解決するための思考力を養うことができ、ヒントに頼りすぎることなく学習を進められるようになります。

子どもが自信をもって学べるように

このように、子どもの勉強を見守る際には、指摘やサポートのタイミングと伝え方を工夫することが大切です。

早く勉強を終わらせて寝かしつけなきゃ!睡眠大事!とか思っていると、つい気持ちが逸って、口出ししたくなってしまいますよね。その気持ちはわかります。

でも、「終わらせること」ではなく「成長すること」が勉強の目的ですから、そのためには子どもが自ら考え、成長できる環境を整えることが大切です。また、そうすることで、学習の楽しさを感じられるようにもなります。

親としては、そのプロセスをサポートしながら、子どもが自信をもって学べるように見守っていきましょう。

こんなときどうする? 声かけのタイミングと考え方

続けて、ここからは具体的な状況ごとに「こんなときはどうする?」ということを考えていこうと思います。

総論として、「ポジティブに」とか「本人の気付きを待とう」とかいう考え方はわかっても、それでもつい言いたくなってしまう状況ごとに具体的なアドバイスをしていきます。

状況①:誤字があったり字の書き順が違ったりした場合

子どもが字を書いているのを見守っていると、誤字や、書き順の間違いに気づくことがありますよね。

正しく直すために、すぐにその場で指摘したくなるものです。

しかし、長期的な視点に立って先々の伸びを考えたら、「正しく書けること」よりも、「子どもが文字を書く楽しさや学ぶ喜びを感じること」の方が重要です。

書き順や誤字に気づいたときには、すぐにその場で細かく直すのではなく、総論でお話しした「②指摘はポジティブに」を実践しましょう。

つまり、書き順が違っている場合であれば、まずは「正しい形を覚えられたね!」とできていることを認めて褒めたうえで、「こういう書き順で書くともっときれいに見えるよ!」と伝えてみましょう。

線が足りないとか、点が多いとか、字の形自体が間違っているようでしたら、「このパーツは合ってるね!」といった感じで、部分ごとにできているところを褒めると良いでしょう。

ネガティブな指摘をしてしまうと、子どもが書くこと自体を嫌がるようになったり、さらには親の前で勉強するのを嫌がるようになったりしてしまうので、ポジティブな声かけをするように気をつけましょう。

状況②:問題を読み間違ったまま解いている場合

問題を読み間違えるのは、特に長い文章題でよく起こりがちです。

算数では「三行の壁」という言葉があるくらい、問題文が長くなると何を言っているのかわからなくなる子が多いです。

ですから、大人の感覚で「正確に読めるのがあたりまえ」と思わないように気を付けてください。

問題文の読み間違いをしているときも、親が指摘して正しい意味を言うと、子どもは嫌な気持ちになるものです。

本人が自分で気づけるように、問いかけを通じて誘導しましょう。

「問題文にはどんなことが書いてあった?」「今わかっていることを教えてくれる?」「この問題、何が問われているのかな?」といった感じで問題文をもう一度読み直してもらうよう促し、子どもが自分で気づくチャンスを与えましょう。
自分で間違いに気づくことで、次からの問題も丁寧に読む習慣が身につきます。

また、読み間違いが頻発する場合には、本人に「次からはどんなことに気を付けて問題文を読むか」という作戦を先に決めておくようにうながしましょう。

そして、次に問題を解く前に「前回どんなことに注意しようと決めたっけ?」問いかけて思い出させることで、注意深く読むように促すことも有効です。

状況③:計算間違いに気づいたとき

「あっ、今計算間違いした!」とすぐに指摘したくなる瞬間、ありますよね。

でもここも、指摘せずに見守るべきポイントです。

子どもが問題を解き終えた後に答え合わせをして、間違っていることを確認したうえで、どこで間違えたか自分で探すようにうながしましょう。

もう一度やってみて正しい答えにたどり着けたら、間違えたときと見比べてみるというやり方も、どこが違っていたか簡単に見つけられるのでおすすめです。

こうした練習は成長のチャンス! 前向きに見守りましょう。

また、高学年の子であれば、問題を解く途中で計算ミスをすると、答えの数字がやたら大きくなったり、明らかにおかしな分数・小数になったりすることも多いです。

そうしたときには、「きっと計算間違いしたな」と自分を疑ってみると、ミスを見つけて直せるチャンスです。

私も計算ミスが多いので、こうしたことはよくあります。

普段からこういうときに自分でミスを見つけて直す練習をしておくと、テストのときにも直せるようになります。

親が先に指摘して、自分でミスに気づけるチャンスを潰してしまうのはもったいないので、ぜひ見守ってくださいね。

もし頻繁に計算ミスが続くようなら、自分がやりやすい計算ミスの傾向を考えるよううながしてみるのも有効ですよ。

まとめ

以上、子どもの勉強を見守る際の親の心構えでした。

あらためて総括すると、「正解すること」よりも「勉強が楽しいこと」の方がずっと大切です。

親が子どもの勉強を見守るときに、親子のどちらかがイライラしているようであれば、それは黄色信号だと思いましょう。

両方がイライラしていたら赤信号です。

勉強がつまらなくなり、嫌いになれば、子どもの学力は頭打ちになります。

どうすれば前向きな気持ちでお子さんが勉強したくなるか、まずはそこから考えるようにしてくださいね。

その前提をふまえた上で、子どもが自分の間違いに気付き、正しい方向に進めるように誘導していきましょう。

※記事の内容は執筆時点のものです

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