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100度でも沸騰しない? 沸点上昇のふたつのケースをイメージでつかもう

2020年9月29日 ゆずぱ

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理科で学ぶ現象は、イメージをつかむと理解度がグッと上がります。「水の状態変化」もそのひとつ。液体の水は100度で気体の水蒸気になりますが、実は100度になっても沸騰しない場合があるのです。この現象は「沸点上昇」といわれ、以下のふたつのケースで発生します。

■「沸点上昇」が発生するケース
・まわりの気圧が上がったとき
・水に何かを溶かしたとき

イメージで押さえつつ、沸点上昇を論理的に理解していきましょう。

そもそも「沸点」とは?

沸点とは、水が沸騰する温度のことを指します。私たちが生活する環境では、水の沸点はおよそ100度。水が水蒸気になることは「蒸発」と呼ばれます。実は、水の表面からは“水の粒”が常にゆらゆらと空気中にのぼっています。そして沸点を超えると、水の内部からもブクブクと水蒸気がのぼっていくのです。

沸点上昇のふたつのケース

私たちの生活環境では、水の沸点は約100度です。水の温度は、基本的にはそれ以上は上がりません。しかし、その沸点が上昇してしまうケースがあります。

【ケース1】まわりの気圧が上がったとき

まわりの気圧が上がると、水の沸点が大きく上昇します。つまり、水の温度が100度を超えるのです。

まわりの気圧が高いということは、空気がギュウギュウに詰まっているということ。上の図(右)をみると、“水の粒”が空気中に飛び出しにくそうな様子がわかりますね。このままだと水は蒸発しづらいので、沸騰させるにはもっと温度を上げる必要があります。これが、沸点が上昇するイメージです。

【ケース2】水に何かを溶かしたとき

水に何かを溶かしたときも、沸点は上昇します。たとえば、食塩を水に溶かしたときなどですね。この場合、100度になっても水蒸気がのぼらず、水の温度はさらに上がりつづけます。

食塩は、気体になりにくい物質です。つまり食塩水は、水だけの状態に比べて“蒸発しにくい液体”。食塩の濃度が高いほど、蒸発しにくくなります。結果として、食塩水を沸騰させるにはもっと温度を上げる必要があるのです。これが、水に何かを溶かしたときに沸点が上昇する仕組みです。

「沸点の上昇」は、教科書に載っていない!

「沸点の上昇」は、実は高校生が習う単元です。しかし中学入試では、沸点の上昇が問題として出ることがあるのです。このように、中学入試では小学校の教科書に載っていない領域の出題がよく見られます。

そこでここからは、沸点の上昇のように、小学校の教科書に載っていない領域がどのように出題されるのかについて解説します。

■中学入試は、教科書の範囲を超えている
理科では、小学校の教科書では扱わない「物理科学現象」や「気象現象」が出題されたことも。「ニホニウム」(113番目の元素)が命名された時期の入試では、元素すら教わっていない小学生に対し「元素合成」の問題が出題されたこともありました

“教科書に載っていない”問題の3つのタイプ

“教科書に載っていない”問題は、一般的に以下の3つのタイプに分けられます。

【1】時事問題

普段から世の中の動きに興味を持ち、ニュースを見ていないと解けない問題が出題されることもあります。ある中学校の理科の問題では、「チバニアン」(新しく発見された地層の名称)を答えとして書かせる問題が出されたことも。日ごろからニュースをしっかり見ていないと、解くことができませんね……。

【2】読み取り問題

大人ですら知らない数値が示されたデータなどが渡され、その結果からわかることを論理的に答えさせる問題の出題も少なくありません。ある中学校の入試では、「イトヨ」という魚が敵と味方を見分ける方法を実験結果から読み取らせる問題が出題されました。

【3】先取り問題

専門的な語句などを問題文で説明したうえで、中学校や高校で習う単元を解かせる問題も目立ちます。「沸点の上昇」も高校の化学の範囲です。ある中学校の入試では、外気圧と沸点を調べた実験データを示し、沸点上昇に関する設問を答えさせる問題が出題されました。

知識がなくても解けるけど……

“教科書に載っていない”問題は、時事問題をのぞき、その知識を持っていなくても解けるようにつくられています。しかし、中学校・高校の先取り問題に関しては、あらかじめ知識として知っているほうが有利であることは否めません。中学受験を目指す子たちのなかでは、こうした知識を何らかの形で習得してしまうのが定石にもなっています

■算数や理科は、教科書以外の知識を押さえておくと特に有利?
中学入試では、中学校で習う「連立一次方程式」が「消去算」と名前を変えて出題されています。理科の力学分野で学ぶ「力のベクトル」、生物分野で学ぶ「動物や植物の分類学」の出題もあります

まとめ

沸点上昇について、「水が100度になっても蒸発しない」というイメージをもとに紹介しました。理科で登場する物理科学現象や気象現象は、イメージで押さえると理解が進みます。そしてイメージで捉えると、その現象の背景が論理的につかめることも少なくありません。つまり一度イメージしてしまえば、頭のなかに知識としてしっかり定着できるのです。特に沸点上昇のような、教科書に記載のない範囲については、あらかじめイメージとして理解できているか否かで入試本番の対応力が変わってくるでしょう。

※記事の内容は執筆時点のものです

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