中学受験ノウハウ 連載 塾のトリセツ

同じ塾に子を通わせる他の保護者との付き合い方│中学受験塾のトリセツ#45

2024年9月03日 天海ハルカ

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中学受験を志すお子さんを持つ保護者同士は、情報交換などで心強い味方となるでしょう。

しかし、子どものクラスに差が出たり受験が近づいたりすると気まずくなってしまうケースもあります。

保護者同士の付き合い方に正解はありませんので、塾講師としての立場では、保護者同士の付き合い方に口をはさむことも原則ありません。

一方で、受験生を持つ親という立場では、メリットとリスクを考え、「ある程度の距離をもって付き合う」選択が心地よいと考えています。

今回は、多くの中学受験家庭を見てきた経験から、私が親として他の保護者さんとどう付き合っているかとその理由についてお話ししてみたいと思います。

世間話程度の付き合いは息抜きになる

中学受験を志す子を持つ保護者同士、同じ悩みを抱えていることは多いでしょう。

「勉強をしない」「成績が上がらない」「宿題が終わらない」といった悩みを感じたことがない保護者はまれだと思います。

もちろん小学校の保護者同士でも似た悩みはあるでしょうが、やはり中学受験を志す家庭とは温度感が異なるんですよね。

「塾があって寝る時間が遅くなる」「送迎が大変」などは、中学受験塾に通う保護者同士ならではの悩みで共感もしやすいのではないでしょうか。

私の場合は、共働き家庭の保護者さんとは時間の使い方の難しさで共感することが多かったです。

子どもと家事と自分の仕事に対して、どう時間をやりくりするか。解決策は出なくとも、「大変ですよね」と言葉をかけ合うだけで少し気持ちが軽くなりました。

中学受験の愚痴というのはなかなか外に出しづらいもの。かといって、家庭内で溜め込んでしまうと、突然爆発してしまうこともあるでしょう。

同じ環境に身を置く者同士、適度に発散できる場所があるのは、精神的な息抜きになると思います。

自分と相手を比べないのは至難の業

世間話程度の愚痴を保護者さんと話すのは心が楽になりますが、少し踏み込んで具体的な話になると、安心だけではなくリスクも高まります。

というのも、受験には偏差値や合否などがつきまとうんですよね。

たとえば最初は塾で同じクラスということで話が合ったのに、相手の子がどんどん上のクラスへ上がり、自分の子はむしろ下がってしまった……というケースも考えられます。

反対に、自分の子だけが上がっていっても気まずさを感じるケースもあるでしょう。

こういった状況は、低学年では笑って話せていても、学年が上がるにつれて笑ってはいられなくなってしまいます。

同じ年に受験する場合、相手の子と自分の子を比べないというのは非常に難しいことだと思います。

かといって、お互い中学受験を志しているにもかかわらず、成績や受験の話題を避けるのも不自然ですよね。

相手の子と自分の子の成績や偏差値に差がつくのはよくあることで、それに対してどちらかがネガティブな感情を持ってしまうのも当然のこと。

であれば、最初からある程度の距離を保った付き合いにしておいたほうが、ストレスを感じにくいのではないかと思うのです。

余計なストレスを抱えないことが重要

ただでさえ受験は、子どもも保護者もストレスを感じやすいものです。

ストレスの可能性はできるだけ減らしておきたいので、私はママ友との関係もほどほどの距離を保っています。

受験の話を一切しないということはありませんが、具体的・個人的な話を避けるだけでだいぶストレスは感じづらくなるように思います。

具体的・個人的な話とは、塾でのクラスや偏差値、志望校などですね。

勉強時間や家庭での勉強量に関しても、あまり具体的な話はしないようにしています。

数字の話はさらに具体的な話に発展しがちですし、自分と相手を比べやすくもあります。

「算数に力を入れている」とは言っても、「算数は毎日2時間割いている」とは言わない感じですね。

数字を避けることで、お互いの話に適度な距離を保てるように思います。

まれにグイグイ聞いてくる人や話してくる人もいて、どうしても避けられないときは、親である自分の話にすりかえるとうまく話題を変えられることが多いです。

たとえば「漢字テストで100点が取れないがあなたの子はどうか」という話に対して、「私もよくトメハネで減点を受けて100点取れなかったんですよね、難しいですよね」と返すなどですね。

子どもの話より親同士の話のほうが、ストレスになりづらいだけでなく、距離も縮まるように感じています。

情報源は保護者だけではない

志望校やテスト対策など、他の保護者からの情報は有益ですが、何かしらの感情が入った情報は使い方が難しいとも感じます。

「あの子はこの勉強量をこなせるのに我が子はできない」「あの子がこのぐらいなら我が子はそれ以上を」というように、情報に振り回されるのも避けたいです。

中学受験の情報源は保護者に限りません。

当たり前のことを話すようですが、志望校の情報はその学校のホームページや説明会から入手できますし、塾にも相談できます。

受験情報誌も、偏差値だけでなくさまざまな情報が得られますよね。

また、信頼度はまちまちですべてを鵜呑みにするのは危険ですが、インターネットで得る情報の中にも役に立つものは多いでしょう。

情報を得たり精査したりする手段は多くあるので、保護者から得られる情報にこだわらなくても良いと思うのです。

受験情報は中学校などから直接自分で集め、必要なら塾を頼るように動いたほうが気持ちが楽だと私自身は感じました。

受験生の親ではなく同い年の子を持つ親というスタンスが心地よいかも

「保護者同士の付き合いはある程度の距離を保つ」というのが私のスタンスです。

やはり自分の子より「成績が良い」「勉強量が多い」「進学に対して多く動いている」という話を聞くと、不安になってしまいます。

かといって他の子の成績が低いと聞いても、実際に戦う相手はその子だけではないので、安心材料にはなりません。

塾の送迎などで話す時間ができてしまう場合は、たとえば最近子どもが気に入った食べ物の話や自分のストレス発散法などを話すようにしています。

「受験生の保護者同士」ではなく「同い年で似たような生活サイクルとなっている子を持つ保護者同士」というスタンスのほうが余計なストレスを抱かず、良い関係でいられる気がするんですよね。

もし今、保護者同士の関係に悩んでいる人がいれば、一度距離をとってみることを提案します。

「情報に追いつけなくなるのでは」という不安もあるでしょうが、他の家庭と比べなくて済むことで精神的な落ち着きが生まれ、入試へのスケジュールを冷静に見つめ直すなど、建設的な行動がしやすくなるかもしれません。

受験はストレスがつきものですが、少しでもそのストレスが緩和され、落ち着いて受験に挑めますように!

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※記事の内容は執筆時点のものです

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