中学受験ノウハウ ストレス対策・メンタルケア

中学受験で「燃え尽き状態」にならないため必要なこと

2018年6月06日 中里太一

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ひとつのことに打ち込んで、それが「達成されなかったとき」、あるいはその逆で「達成されたとき」に、目標ややりがいがなくなってしまう「燃え尽き状態」。

中学受験を終えたあと、この「燃え尽き状態」に陥る子供が多いといわれています。家庭環境、子供の特性、塾での過ごし方、志望校の特性など、さまざまな要因が複合的に絡み合った結果だと思いますが、筆者は大きく次のような傾向があると感じています。

子供の意思が不確かな状態で中学受験勉強をはじめる

小学生、特に低学年の段階では、精神的な成長がまだまだ未熟です。中学受験に、はじめから前向きな子もいますが、多くの場合、保護者が「中学受験がうまくいけば、その後の人生が変わる」「私立中学校にいけば、勉強の苦労から解放される」といった話で、子供を中学受験へ誘導します。そして、子供は自分の意志が不確かなまま、保護者の期待に応えるべく勉強することが多いのです。

急激な勉強時間の増加

子供の意思が不確かな状態で、中学受験勉強に突入し、実際に通塾をはじめます。中学受験に向けた塾通いは、小学3、4年生での入塾が一般的です。はじめのうちは塾でも楽しく勉強をするという要素が大きいですし、実際にカリキュラムにも、多少の「ゆとり」があるといえます。

ですが、小学校5年生からは塾のカリキュラムが大きく変わります。一般的に週3~4回の授業と、土日には毎週テストがあるといったケースが多いでしょう。すると子供の過ごし方も一変します。

学校が終わった15時半から17時までの間に宿題をして、急いで塾に行き、21時ころに授業が終わったら、帰宅後、23時くらいまで宿題をします。塾がない日や、テストがない週の土日には溜まっていたテスト直しや、終わっていない宿題などをこなします。

夏休みなど長期休暇には講習会のほかに、特別講座があります。塾によっては「泊り」の勉強合宿があるほどです。そこから志望校別対策講座も加わり、その講座からも宿題がでます。宿題を終わらせるために、寝る時間を削ることもある程です。小学校6年生の入試直前期には学校も休み、朝から過去問やその直しで対策に追われることもあります。

中学受験をする子供とその保護者は、これだけ「エネルギー」と「時間」を使います。そして、その結果が不合格。または、合格したものの、進学した中学校が、保護者の方がいうようなバラ色の世界ではなかったとしたら……。子供が「燃え尽き状態」に陥るのも無理はありません。

「燃え尽き状態」にならないために必要なことは?

中学受験は前述のように多くの「エネルギー」と「時間」を使います。保護者が中学受験をさせる理由と、子供の意思がかけ離れた状態で、中学受験勉強に突入する。そして勉強量が増加し、過密スケジュールに追われるうちに、「中学受験そのものがゴール」になってしまうのでしょう。

ですが、本来受験は「ゴール」ではなく、その後の人生の「手段」であるはずです。ですから、中学受験を志すとなった場合、子供を「燃え尽き状態」にさせないために、保護者がまず気をつけるべきことは「なぜ受験するのか?」を明確にし、子供と共有することだと思います。

たとえば、中学受験をする理由として、以下のようなことが考えられるのではないでしょうか。

  • 公立校では教わらないような、深い内容を学べる
  • 数字や図形に関するセンスを磨くことができる
  • 高い学習意欲、学力を持ったクラスメイトと一緒に勉強できる
  • 多くの文章に触れることで、感性を高める。知識と関心の幅を広げ、精神的に成熟される
  • 中高一貫校では、高2までに高3のカリキュラムを消化できるので大学受験に有利になる

もちろん、これらは言葉だけで小学生の子供に、簡単に伝わるものではありません。実際に志望校へ見学に行って意欲を再確認したり、模試や、テストの結果だけでなく、子供の努力のプロセスを褒めるなど、モチベーションを保つための保護者の働きかけがとても重要になります。

中学受験は「あくまで通過点」です。受験後に「燃え尽き状態」にならないよう、保護者は子供に寄り添い、子供の意思を確認しながら、適切なサポートと、後押しをする必要があります。

※記事の内容は執筆時点のものです

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