試し受験はするべき? メリットとデメリットは?│中学受験塾のトリセツ#48
第一志望校の受験に先立って、試し受験(前受け受験)をするべきか。
受験当日の雰囲気に慣れておくなど、試し受験は子どもにとって多くのメリットがありますが、一方でデメリットもあります。
体力や健康面だけでなく、不合格のリスクも考えなければなりません。
メリットとデメリットを天秤にかけ、子どもにプラスとなる選択をしたいものですね。
今回は試し受験のメリットとデメリットについてお話しします。
Contents
試し受験とは
試し受験とは、第一志望校受験のシミュレーションとして臨む受験のことです。
受験は子どもにとって未知の世界。知らない学校で知らないテストをし、その結果となる合格・不合格を後で確認する、という一連の流れを、本番である第一志望校受験の前に経験するというわけです。
首都圏の中学受験においては、1月に入試が始まる埼玉・千葉の学校が試し受験をしやすいのですが、最近では同じ時期に出張入試を行う地方の学校も増えてきました。
合格しても進学はしないと割り切っている場合や、逆に地方への進学も選択肢に入っている場合は、出張入試も選択肢に入りますね。
試し受験は合格しやすい学校を選ぶ
試し受験には、偏差値が安全圏にある学校を選ぶのが一般的です。
お試しとして割り切るなら、偏差値は低ければ低いほど良いでしょう。
抑え校(第一志望校に不合格だった場合に進学する学校)としての役割も兼ねるなら、自分の偏差値から少なくともマイナス5、または模擬試験でA判定(合格の可能性80%以上)が目安になります。
試しとはいえ受験なので、ここで合格を得て、第一志望校受験への自信とやる気につなげたいものです。
一方で、子どもによっては受験に対していまいち真剣になりきれず、塾のテストの延長のような気分で1月を迎える子も少なくありません。
試し受験は、そんな子どもに緊張感と危機感を与えるためにも使えます。
緊張感と危機感を持たせるという意味では、合格しやすい学校ではなく、第一志望校と偏差値が近い学校を受けさせるというのも、ひとつの手ではありますね。
試し受験のメリット
試し受験の最大のメリットは、第一志望校の受験へ向けてシミュレーションができることです。
口コミや過去問などで知識として調べておくことはできますが、やはり実際に自分の目で見て、肌で感じたほうが得るものは多いでしょう。
試験の雰囲気や環境をシミュレーションできる
知らない場所で試験を受けるというのは、なかなかない機会です。
入試日の朝や教室の雰囲気、緊張感を知っておくことも役に立ちますね。
現地に行くと想像以上に緊張して頭が回らなくなるかもしません。
教室が寒かったり、トイレが異様に近くなったりする可能性もあります。
一度受験をして経験を積むと、脱ぎ着ができる服装で、トイレはこまめに行くなどの対策がとれます。
環境が変わると力が出しきれないタイプの子は、とくにこのメリットが大きいですね。
試験以外のシミュレーションも
試し受験のシミュレーションは、当日のテストだけではありません。
たとえば入試後の子どもの体力。午前受験の後、午後受験を組み込める程度に体力は残っているでしょうか。
子どもによっては目の覚めない午前より、午後のほうが力を発揮できそうという気づきがあるかもしれません。
また、最近は合格発表をインターネットで確認することが多くなりました。
実際の手順や見方を一度体験しておくと、第一志望校でも落ち着いて見られるようになるというのもひとつのメリットになりますね。
ほかには、付き添いの保護者のシミュレーションができるのもメリットです。
学校によっては子どもが受験しているときに保護者が待機できる場所を設けてくれますが、ない場合は周辺で時間をつぶすことになります。
これは卒業生から聞いた話ですが、入試が終わってからの親子の待ち合わせにも手間取ることがあるそうです。
受験生が多い学校では帰りの動線が決まっていて、入ったときとは違うところから子どもが出てきて、想定していた待ち合わせ場所では会えなかった……なんてことも。
こういった試験以外のことは、意外と頭から抜けがちなんですよね。
一度受験を経験することで、第一志望校の受験前に調べておきたいこともわかってくるでしょう。
合格で自信と安心を
安全圏の学校であれば、合格を得る可能性は高いと思います。
進学するつもりはほとんどないとしても、合格を手にしたというのは大きな自信と安心につながりますよね。
第一志望校までのラストスパートにも身が入るのではないでしょうか。
たとえ第一志望校の結果が振るわなくとも、公立中学校と試し受験で合格した学校のふたつから進学先を選べるというのは、保護者にとっても安心材料になると思います。
試し受験のデメリット
シミュレーションができることは大きなメリットですが、試し受験にもデメリットはあります。
貴重な時間を削られるというデメリット
試しとはいえ入試に挑むのであれば、準備は必要で、一度くらいは過去問に手をつけておきたいもの。
さらに入試は体力的にも精神的にも疲れるため、当日の午後もいつも通りの勉強をするというのは難しいでしょう。
第一志望校の受験まで1カ月を切っている状態で、優先度の高い志望校対策を後回しにして試し受験に時間を割くことは、時間的なデメリットと考えられます。
健康面のリスク
入試には人が集まるため、寒さによる風邪だけでなく感染症のリスクも考えられます。
入試の時期は真冬でインフルエンザが猛威を振るううえ、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の脅威も収まっていません。
人が集まり、防寒で換気が難しいとなれば感染症のリスクも低くはないでしょう。
感染症予防のため、1月以降は塾へ行かない選択をする子も過去に何人かいました。
試験でもらったかは定かではないものの、実際に第一志望校の入試直前でインフルエンザに罹患してしまった子もいました。
健康面でリスクを抱えないために、試し受験はしないという考え方もわかりますね。
試し受験をする場合は、日ごろの手洗いうがいの徹底、たっぷりの睡眠と栄養に加えて、気温に対応する服装やマスクなど、できる限りの対策をして送り出しましょう。
合格は確実ではない
都内が志望校の子が試し受験として受ける学校でも、当然ながらそこを第一志望とする子もいます。
近年では難関校以外の人気も高まっているため、安全圏の学校を試し受験に設定したとしても、油断はできません。
本番の雰囲気に飲まれて実力が発揮できない可能性もあります。
試し受験で合格を得るというのは確実ではないため、不合格にショックを受けて自信喪失してしまう可能性もゼロではないのです。
受験の厳しさを経験したとポジティブに受け取れれば良いのですが、繊細な子には心構えとして、「受験に絶対はない」と言っておくと良いかもしれません。
「当然合格するはず」という雰囲気で受験するのではなく、緊張感をもって試し受験に臨めるようにしたいですね。
子どもにプラスがあるなら試し受験を組み込んでみよう
行くつもりがない学校を試しで受験するのは抵抗があるという人もいるかもしれませんが、1月入試を行う学校は、試し受験の受験生がいるということもわかっていて、辞退者が出ることを前提に合格最低点を設定します。
実際に埼玉の中学校の説明会へ行ったとき、「我が校は試しで受けられる方も多いので」と試し受験者がいる前提での話も出ました。
子どもの受験にプラスとなるなら、試し受験はためらわなくて大丈夫です。
試し受験にはメリットもデメリットもあります。
メリットとデメリットを比べて、お子さんに合った受験スケジュールを組んでみてくださいね。
※記事の内容は執筆時点のものです
とじる
お気に入り機能は
会員の方のみご利用できます
会員登録のうえログインすると
お気に入り保存できるようになります。
お気に入りのコンテンツは、
マイページから確認できます