連載 プラスにする中学受験

【連載第3回】「プラスにする中学受験」~東大まっしぐら、エリートを育てる「サピックス」「鉄緑会」。今や塾歴社会になってきたけれど~

2016年3月25日 杉山 由美子

合格発表まもない頃、東大合格者を輩出する女子トップ校桜蔭に合格した母子を取材しました。小柄でかわいい感じのお母さんは満面笑みという感じでした。受験直前にインフルエンザにかかって心配したこと、幼い頃鉄棒に夢中になって公園から帰りたがらなかったことなど次々話してくれました。少女が現れたのはずいぶん後でした。

「鉄緑会の手続きに行ってきました」えっ?受かってすぐ大学受験の準備に向かうの?聞くと桜蔭に合格した生徒にも会ったそうです。サピックスから鉄緑会に直行する生徒は少なくないらしい。教育ジャーナリストとして活躍するおおたとしまささんは『名門校とは何か』などの著書があり、近著の『ルポ塾歴社会』(幻冬舎文庫)で、東大合格者には小学校時代はサピックス、高校時代は鉄緑会に通った生徒が多いことに注目し、東大までの最短コースに位置する二つの受験塾を調べました。もはや卒業した学校ではなく、どの塾から東大に合格したのかが問われる時代だというのです。

もちろんその塾に入れればどんな子でも東大OKとはいきません。サピックスはかつて入塾テストがあったが今は塾もふえ入りやすくなっています。しかし鉄緑会は名門中学、高校に限る指定校制度をとっていて、ここでみっちり塾の勉強と宿題をやると東大合格に至る道はかなり近くなります。

親は子どもにいい塾を選んでいます。同じ塾でも何々先生のいる塾に遠くても通わせたりしています。情報通の保護者は、ネットや本、雑誌、口コミを駆使してわが子にとってのいい塾を探しています。もはや独学で勉強する子はほとんどいません。

かつて四谷大塚の予習シリーズを自学自習で解き、日曜日の模擬試験を受けるだけで受験した子もいましたが、ほんとうに少数です。これは大学受験でも同じ。「出来のいい子」を選りすぐって鍛えれば合格率はさらにあがります。だがそれでいいのか、おおたさんは問いかけています。

鉄緑会から東大に行った学生があまりにいい子なのが気になるというおおたさんは、それ以上に「宿題をこなしきれず、学校の勉強もおろそかになり、クラブ活動もできなかったふつうの子」のつらさが気になるといいます。現行の受験制度そのものも疑問視している本です。

※記事の内容は執筆時点のものです

杉山 由美子
この記事の著者

出版社勤務をへて、フリーランスライターに。おもに教育、女性が働くことについて取材、執筆をしている。著書に『長男が危ない』(草思社文庫)『中学受験SAPIXの授業』(学研新書)『お金をかけずに「できる子」を育てる』(岩崎書店)など多数。