連載 プラスにする中学受験

【連載第2回】「プラスにする中学受験」~親が知っておきたい大切なことは「子どもは競争が好き」ということ。そして仲間はライバルではないのだ。~

2016年3月11日 杉山 由美子

「ハイ」「ハイ」

われ先にあがる手、手、手。「早く、いちばんに僕を指してよ、と言わんばかり。圧倒的に男の子が多い。そのやかましいこと。ほかの子があてられると、くやしそうです。

しかし立ち直りも早い。あてられた子が正解でないと即座に「ハイ」「ハイ」。そのころ聡明そうな女の子がおずおずと手をあげ、講師が指すと慎重に答えていました。

「いちばんになりたい」のは男の子の習性。「困るのよ」と苦笑したのはベテラン保母さんでした。小さいときから「いちばんになりたい」のです。それに引き替え女の子は「解ける」と思わなければ手をあげない。この差は大きい。女の子の偏差値が男の子より低いのはこの慎重さが影響しているという講師もいました。力まかせに鉛筆を動かして解いていくうちに「ああ、そうか」と正解にたどりつくことも多いのです。夢中になって解こうとする力も必要です。

「クラスみんなで合格しよう」

塾を見学しておどろいたのは子どもたちは競争が大好きということ。楽しそうです。熱気あふれるクラスでは最後まで大真面目に「みんなで合格しよう」と誓いあうそうです。

クラスメイトはライバルではありません。しかし保護者の多くはテストの点やクラスの昇降にはげしく動揺します。まして学校のクラスメイトで仲よしの子より成績が悪いとなると気持ちがざわめきます。学校から帰ると塾の勉強をつきっきり見ていたというお母さんはスロースターターのわが子にじれて、なんと胃がんになってしまいました。それは極端な例にしてもストレスに苛まれる保護者ははじつに多いのです。

熱心すぎるお父さんも要注意です。とくに男の子には勉強を教えるうちにのめりこんで思わず手を上げてしまったひとは少なくありません。きびしすぎる父に「お父さんにはここまで進んだことにしておこう」なんてかばう母は「このままでは中学受験で離婚まっさかさまになりそう」となげいていました。

子どもによかれとはじめた中学受験。子どもが成長できる機会が、病気を招いたり、精神的に追い詰められたり、夫婦が険悪になったらなにもなりません。

中学受験の負のスパイラルにはまらず、子どもの健全な力を信じて、プラス思考で進んでください。

※記事の内容は執筆時点のものです

杉山 由美子
この記事の著者

出版社勤務をへて、フリーランスライターに。おもに教育、女性が働くことについて取材、執筆をしている。著書に『長男が危ない』(草思社文庫)『中学受験SAPIXの授業』(学研新書)『お金をかけずに「できる子」を育てる』(岩崎書店)など多数。