連載 脳を育てる勉強法|ドクター吉田

「受験うつ」を招く丸暗記の勉強法には要注意! 受験医学のカリスマ、ドクター吉田の脳を育てる勉強法(10)


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勉強の成果が上がらないので時間の無駄。さらに、やりすぎると「受験うつ」になってしまう。なのに、多くの子供がやっている……。それが、丸暗記をする勉強です。

丸暗記は「受験うつ」を招く危険な行為

丸暗記が学力のアップにつながらないのは常識かもしれませんが、「受験うつ」を招く危険な行為でもあることに注目してください。こんな愚かな習慣は、ただちに止めさせましょう。

学校の定期テストなら丸暗記でしのげます。それで悪いクセがついた子供は、受験も丸暗記で突破しようとします。でも、受験で要求される記憶量は定期テストより遥かに多く、脳に不自然なストレスが加わり、大事な入試の直前に「受験うつ」に陥ってしまいます。そうすると、極端な意欲の低下、イライラの暴走、思考力の病的な低下が起こるのです。合格できないどころか、対処を誤れば一生を棒に振ってしまいます。

丸暗記は、科学的には「単純リハーサル」といいます。この場合、脳内で短期記憶にはなりますが、長期記憶には変換されにくいので、2週間以内にほとんど忘れ去られてしまいます。実験データでは、「忘れやすい」といった生ぬるい話ではなく、「ほとんど忘れる」という致命的な結果になっているのです。世間で思われているより、はるかに深刻な弊害です。

さらに、脳の一部に不自然な疲労を与えてしまうため、「受験うつ」にもなりやすいのです。私のクリニックに来院する子供についても、診察して「受験うつ」だとわかった場合、詳しく尋ねると、90%以上は丸暗記に偏った勉強をしています。

いろいろ考えながらの暗記が長期記憶を形成する

一方、丸暗記の対局にあるのがいろいろ考えながら暗記することで、「精緻化リハーサル」と呼ばれています。この場合は、脳内で長期記憶に変換されやすいので、勉強はすべてこちらで行うべきです。

たとえば、「織田信長⇒比叡山焼き討ち」を暗記する場合、頭の中で「織田信長⇒比叡山焼き討ち」「織田信長⇒比叡山焼き討ち」と単純に繰り返して暗記するのが典型的な丸暗記です。これは絶対にやってはいけません。

それに対し、「比叡山を焼き討ちするなんて、織田信長は怖い人だな……」などと、自分なりにいろいろ考えながら暗記するのが精緻化リハーサルです。長期記憶に変換されやすいだけでなく、脳が自然な形でイキイキと機能するので、ストレスがたまりにくく、「受験うつ」を予防する効果もあるのです。暗記はすべてこちらに切り替えましょう。

※この記事は、「マイナビ家庭教師」Webサイトに掲載されたコラムを再編集のうえ転載したものです。


吉田たかよし(医学博士・心療内科医師)

灘中学、東京大学、国家公務員上級経済職試験、医師国家試験などの合格体験を元に、日本で初となる受験生専門の心療内科、本郷赤門前クリニックの院長を務める。カウンセリングと最新の磁気刺激治療を組み合わせ、「受験うつ」から早期回復を図るプログラムを開発。脳科学と医学を応用した受験指導にも取り組む。『今どきの大人を動かす「ほめ方」のコツ29』(文饗社)など著書60冊を上梓。

本郷赤門前クリニック
https://www.akamon-clinic.com/


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※記事の内容は執筆時点のものです

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