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国際連盟と国際連合の違いとは? 経緯や日本との関わりもポイント

2018年11月21日 兵藤 かおり

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混同しやすい国際連盟と国際連合。中学受験では、歴史や現代社会の総合問題で出題されることがあります 。「国際連盟と国際連合? どっちがどっち?」と迷うお子さんには、「今、国連っていわれているのはどっちかな?」と質問してみてください。 今あるのが国際連合、もうないのが国際連盟で、1番目第一次世界大戦後にできた国際連盟2番目第二次世界大戦後にできた国際連合です。迷わないためにも、まずはここからスタートするのがおすすめ。 そして、それぞれの機関が生まれた経緯と特徴、中学受験でよく出題される「切り口」をおさえていきましょう。

国際連盟は設立の経緯・日本の脱退がポイント

「国際連盟」が登場しやすいのは、第一次世界大戦後に成立した経緯と、日本の脱退に関する問題です。他の歴史的事件と絡めて出題されることが多い ので、キーワードを整理して関連付けましょう。

国際連盟は第一次世界大戦により生まれた

まず、国際連盟が設立された経緯として、第一次世界大戦1914年-1918年)の流れを押さえましょう。きっかけ、主要な戦争参加国、新兵器の登場、講和条約の順に整理します。とくに日本の参戦は重要ポイントです!


第一次世界大戦が勃発したきっかけは、1914年、サラエボ(セルビアの都市)オーストリア皇太子が暗殺されたことでした。すかさずオーストリアはセルビアに宣戦布告。 サラエボ側についたロシア・イギリス・フランスvs.オーストリア・ドイツの戦いとなり、日本は日英同盟(1902年)を理由に参戦します。 アメリカもイギリス側で参戦、最終的には何十カ国も巻き込んだ「世界大戦」となりました。航空機、戦車、潜水艦などの新しい兵器が登場し、熾烈な戦いとなりますが、結果はドイツを中心とする同盟国の負け。講和条約としてフランスのパリでベルサイユ条約(1919年)が結ばれます。 そこで1920年、アメリカ大統領のウィルソンの提唱で平和維持機構の役割を持つ「国際連盟」が設立されます。本部はスイスのジュネーブでした。しかし、肝心のアメリカは、国内で共和党の反対にあい、国際連盟に参加しませんでした。ヨーロッパの戦争に介入せず、ヨーロッパからの干渉を受けない「孤立主義」を原則としていたのが理由です。

日本は満州事変をきっかけに国際連盟を脱退

日本の国際連盟からの脱退も受験で取り上げられやすい事項です。並べ替え問題などで出てくる ので、覚えておきましょう。


日本は、国際連盟の常任理事国で、事務局次長には新渡戸稲造が選出されるなど主要な役割を担っていました。ところが1931年、日本は満州を占領し(満州事変)、1932年満州国を建国することで状況が一変。 国際連盟より派遣されたリットン調査団の調査により、満州国の存続を認めない勧告案が採択され、1933年、日本は国際連盟を脱退します。 その後、ドイツ、ソ連、イタリアなど脱退国が続出。これは、のちに勃発する第二次世界大戦を解決できなくなった理由のひとつとなりました。

国際連合は設立経緯と仕組みをチェック

国際連合は、第二次世界大戦を防げなかった反省を踏まえ、設立された機関です。旗には平和の象徴であるオリーブの葉と北極を中心にした世界地図が描かれています。中学受験では旗に関する問題も出ることがあるので、上記の画像を見ながら注意を促してください。 国際連合で覚えておくべきポイントは、設立の経緯と日本の加盟、仕組みと問題点です。

第二次世界大戦から生まれた国際連合

国際連合は第二次世界大戦が終結した1945年に設立されました。まず、出題されやすいポイントとともに、第二次世界大戦について大まかに説明します。


1939年、ドイツポーランド侵攻をきっかけに第二次世界大戦が始まります。ドイツ、日本、イタリア日独伊三国同盟を中心とする枢軸国陣営vs.イギリス、ソ連、アメリカ、中華民国などの連合国陣営の戦いでした。 イタリア→ドイツ→日本の順で降伏し、1945年、第二次世界大戦が終結。同年、戦勝国の「連合国」、すなわちアメリカ、イギリス、ソ連、中華民国が中心となって、「国際連合」が生まれました。なお、講和条約は1951年、アメリカのサンフランシスコで結ばれました(サンフランシスコ平和条約)。


少し脱線しますが、お子さんが混乱する「日本の戦争」についても整理してみましょう。一連の流れが並べ替え問題などでよく出題されます。

1931年 満州事変
1932年 満州国建国
1937年 日中戦争 開始
1939年 第二次世界大戦 開始
1940年 日独伊三国同盟 締結
1941年 太平洋戦争 開始(vs.アメリカ・イギリス・オランダ)
1945年 第二次世界大戦 終結

国際連合の仕組みと問題点

国際連合第二次世界大戦戦勝国が主導して設立されました。本部はアメリカ・ニューヨークに設置。最初に加盟した国(原加盟国)は51カ国、2017年5月現在の加盟国は193カ国 です。 国連の主要機関は、国連総会、安全保障理事会、経済社会理事会、信託統治理事会、国際司法裁判所、事務局など。このうち、出題されやすい のが、国連総会安全保障理事会です。それぞれの要点は以下の通りです。


国連総会

全加盟国で構成。国連の活動範囲全ての事項について、討議・勧告をおこないます。総会の議題に対して、各国が1票ずつ投票権を持ちます。国際平和と安全を維持する勧告や、新加盟国の承認などの重要問題には出席した国の3分の2以上の賛成が必要。重要問題以外は多数決で決めます。

安全保障理事会

5カ国の常任理事国中国、フランス、ロシア、イギリス、アメリカ)と、10カ国の非常任理事国で構成。国際平和と安全の維持において重要な役割を担い、次のようなことを決定します。

・国連平和維持活動(PKO)の設立
・多国籍軍の承認
・テロ対策、不拡散に関する措置の促進
・制裁措置の決定等

「安全保障理事会の役割とは?」という問題で出題されやすいです。


また、問題点として、常任理事国に「拒否権」があることがよく出題されます。安全保障理事会の議決において、常任・非常任理事国のうち9カ国以上の賛成で可決しますが、常任理事国のうち1カ国でも拒否すれば、その案件は成立しません。国益を重視して拒否権を行使することがあるので問題となっています。 なお、非常任理事国の議席はアフリカ、アジアなど地域ごとに配分され、選挙で選ばれます。任期は2年で、日本はこれまで加盟国最多の11回当選。最近では、2017年まで非常任理事国の任期を務めました。

日本の国際連合加盟について

日本の国際連合加盟についても出題されやすいので、押さえておきましょう。 日本は、1956年、80番目の加盟国となりました。1952年に申請を出しましたが、東西冷戦の中、常任理事国の中国とソ連が加盟に反対。しかし、1956年、日ソ共同宣言ソ連との国交回復によって国際連合に加盟することができました。 「日本の国際連合加盟と日ソ共同宣言はセットでおぼえよう!」とお子さんに念を押してください。

国際連盟と国際連合の違いをおさらい

ここまで国際連盟と国際連合について、設立の経緯や仕組み、日本との関わりにフォーカスして説明してきました。以下に覚えておいてほしい事柄をまとめます。これを参考に「これは国際連盟、国際連合どちらのこと?」とクイズを出してみてはいかがでしょうか。

国際連盟まとめ

きっかけ 第一次世界大戦
設立年 1920年
本部 スイスのジュネーブ
提唱者 アメリカ大統領ウィルソン
原加盟国 日本を含む41カ国

・日本は常任理事国(1933年に脱退)
・総会の決定方法は全会一致が原則
・紛争を解決するための軍隊を組織することができなかった

国際連合まとめ

きっかけ 第二次世界大戦
設立年 1945年
本部 アメリカのニューヨーク
主導国 アメリカ・イギリス・ソ連・中華民国
原加盟国 51カ国
現加盟国 193カ国(2017年5月)

・日本は1956年に加盟
・総会は全加盟国で構成 重要課題は3分の2以上の賛成、その他は多数決
・安全保障理事会は5カ国の常任理事国(中国、フランス、ロシア、イギリス、アメリカ)と、10カ国の非常任理事国で構成
・常任理事国には拒否権あり
・紛争を解決するため国連平和維持活動(PKO)の設立、多国籍軍の承認などの手段をもつ

国際連盟・国際連合に関連づけて覚える

国際連盟と国際連合は、成立の経緯や日本の関わり、現代の役割などを切り口に問われることが多いです。今回紹介したキーワードは暗記必須のものばかり。お子さんとクイズを出し合いながら、国際連盟、国際連合に関連づけて知識の定着を図ってください!

※記事の内容は執筆時点のものです

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