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ナメクジに塩をかけると溶けるのはなぜ? 水溶液の濃度と浸透圧の関係を理解しよう

2018年12月25日 みみずく

オーストラリアのシドニーで2010年、当時19歳だった男性がふざけてナメクジを食べ、寄生虫に感染して1年以上も昏睡状態に陥りました。その後この男性が死亡を報じるニュースが話題になり、「ナメクジは怖い」と思った人も多かったのではないでしょうか?

そんな危険なナメクジですが、有名な弱点があります。塩をかけると溶けてしまうことです。今回は、ナメクジの弱点をヒントにして、水溶液のおもしろい性質について解説します。

ナメクジに塩をかけると溶ける理由を考えよう

「ナメクジに塩をかけると溶ける」といわれますが、そもそも「溶ける」とはどうなることなのでしょうか? この疑問に答えるには、「浸透圧」について理解する必要があります。

水溶液の濃度を等しくしようとする「浸透圧」

図工などで使うセロハンには不思議な性質があります。下の図のようなU字管の真ん中をセロハンで区切って、片方に薄い食塩水を、もう片方に濃い食塩水を入れます。このとき、両側の液面の高さをそろえておくのがポイントです。

しばらくすると、薄い食塩水側の液面が下がって、濃い食塩水側の液面が上がります。水は通すが食塩は通さないセロハンがあるため、両側の濃度を等しくしようして、薄い食塩水側の水が濃い食塩水側に移動するからです。これが「浸透」と呼ばれる現象で、水の移動を引き起こす力が「浸透圧」です。浸透圧は、水溶液の濃度差が大きいほど大きくなります。

ナメクジは「溶ける」のではなく「縮む」

水は通すが食塩は通さないセロハンのような膜を「半透膜」といいます。実は、ナメクジの表面も半透膜で覆われています。そのため、ナメクジに塩をかけると、表面の食塩濃度が高くなり、浸透圧によって体内の水分が体外へと出ていきます。つまり、ナメクジは「溶ける」のではなく、体の水分を失って「縮む」のです。

日常生活や自然界で見られる浸透圧を考えよう

ナメクジに塩をかけると溶ける(=縮む)のと同じ現象は、日常生活や自然界でもあちこちで見られます。それらのいくつかを紹介します。

漬け物は浸透圧を利用して作られる

日本人の食卓には欠かせない漬け物も、浸透圧を利用して作られます。たとえば、キュウリやダイコンなどの野菜を塩漬けにすると、浸透圧によって野菜の中から水が外にしみ出します。そのため、漬け物になった野菜は、しんなりしてしまいます。また、浸透圧は、食べ物を腐らせる菌の働きも抑えるため、漬け物の保存性は高くなります。

淡水魚と海水魚の生存にも浸透圧が影響する

魚は、川に生息する淡水魚と海に生息する海水魚に分かれます。淡水魚も海水魚も体内の水分を適切な量に保つ必要があるため、自分の周りを囲む水の塩分濃度が生存に大きく影響します。

淡水魚は、川の水よりも体液の方が塩分濃度が高いため、浸透圧によって体内に水が流れ込んできます。そのため、水をほとんど飲まない一方で、大量の尿を排出します。このような淡水魚を海水に入れると、海水から水分を十分に吸収できず、脱水症状を起こして死にます。

逆に、海水魚は、海水よりも体液の方が塩分濃度が低いため、浸透圧によって体外に水が出ていきます。そのため、大量の海水を飲んで水分を補給し、エラや腎臓の機能を利用して塩分を体外へ排出します。このような海水魚を淡水に入れると、体内に水分が入り過ぎて体液が薄くなり、やはり死に至ります。

常識を理科的に掘り下げてみるとおもしろい

浸透圧に関する問題は、雙葉中学校の2017年度入試の理科で出題されました。この問題は浸透圧について知らなくても、問題文をしっかり読めば解けます。とはいえ、浸透圧を理解していた方が自信を持って解けるのは確かです。

浸透圧は、高校理科の化学や生物で学びます。しかし、雙葉中学校のように中学入試で出題されることもあります。このことから、日常生活や自然界での現象を理科的な視点で眺めたり、中学や高校で学ぶことに関心を示したりする受験生は、中学受験でも有利になる可能性が高いといえるでしょう。

「ナメクジに塩をかけると溶ける」という常識も、掘り下げてみると、中学受験につながっておもしろいのではないでしょうか。

※記事の内容は執筆時点のものです

この記事の著者

家庭教師/ライター。墨田区・台東区を拠点に活動している個人家庭教師。家庭教師を本業としつつ、ライターとしても活動しています。モットーは「好きな人を応援する」。小学生の指導科目は国語・算数(数学)・英語・理科・社会・作文など。「楽しく学びながら、中学の準備をする」ことを目標に指導をおこなっています。

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