連載 下剋上受験

速さを克服するということ|桜井信一コラム「下剋上受験」

専門家・プロ
2014年4月26日 桜井信一

0
桜井信一ブログ『父娘の記念受験』で過去に掲載されていた記事から、一部を編集して掲載しています。この記事の内容は 書かれたものです。

今夜は算数の中でも「速さを克服するということ」についてお話しさせていただきたいと思います。

中学受験に興味のない方、また受験を終えられた方はちょっと旬のお話しではありませんがどうかご容赦ください。

本の中でご紹介しましたが、我が家は算数の特殊算のうち「速さ」からとりかかりました。これが最も克服しにくいと考えたわけです。

最も地頭の差が出るのが「速さ」と考えたわけですが、予想通りそう簡単には解決しませんでした。

まず「計算力」がなさすぎたためにサクサクと問題演習ができない。だから急いで計算力を磨きました。

これも本の中で計算力を鍛える我流の手順をご紹介しましたが、苦労はしたものの結果的には解決しました。

しかし、私たち父娘のように、地頭がイマイチだとたとえ計算力がついても解決しないのが、この「速さ」という単元です。

では少し具体的に……。

100mをA君は12.5秒、B君は14秒で走ります。A君がB君の11m後ろから同時に同じ方向に走るとき、A君はB君に[    ]秒後に追いつきます。

【答え】12と6分の5秒

この程度まで辿り着くのに相当苦労しました。速さの問題をすべてすごろくに改題してまで取り組んだおかげで、ちょうど小6の今の時期(4、5月)にはこのレベルは難なく正解していました。

速さの解法を「は・じ・き」のように公式で丸暗記させようとしている参考書がありますが、あれは良くないですねぇ~。

できる子はそれでいいと思います。できない子もその場しのぎにはいいと思うんです。

しかし、私たちのようにできない子が大幅に出来るようになりたい場合、つまり後々かなりの応用問題を解く予定がある場合は、単に公式で済ませず、掛け算する理由、わり算する理由を理解しておくべきだと思うんです。

掛ける理由、割る理由がわかっていないと瞬時に線分図やダイヤグラムがうまく書けないですから……。

そこでこのレベルの問題をちょっと見てください。

兄と弟は、家から[    ]mはなれた図書館まで歩いていきました。弟は兄より2分早く家を出発し、図書館に着くまで11分かかりました。兄が家を出てから4分後、弟は兄よりも100m先を歩いていたので、兄はそこから速さを毎分13mだけ早くしたところ、弟と同時に図書館に着きました。

【答え】704m

この問題はどちらも私たちが使わせていただいていた馬渕教室のテキストに掲載されています。毎日のウォーミングアップに使う10題15分の小問集合なんです。

難関になるとこんなのが小問集合ですよ! 15分で10題も解けるかって! もう呆れましたよ。実は焦りましたが…(汗)

私たちはこのレベルに手こずりました。今の時期には解けませんでした。このレベルが解けるようになったのは夏を過ぎていたんです。

でもこれ、夏を過ぎて解けりゃいいってもんじゃないんです。

実はこれ、初見で解けず復習のときに解けてもあまり意味がないんです。このレベルになると、解き方を覚えているだけでは類題に対応できない。

私は「解きなおし」こそ重要な算数の勉強だと信じていたために、復習する本来の意味を勘違いしていました。

このレベルの問題をあっさり解ける子とそうじゃない子の差は、場数の違いだと思っていたんです。たくさん解いて解法パターンをたくさん覚えれば出来るようになると思っていました。

今、お子さんが算数に躓いている皆さんにぜひ伝えたい。

まさにここが分岐点。

どの参考書にも書いていません。なぜならば、参考書を作っている人たちの頭が良すぎて、基礎を学べば応用がきいて当たり前と思っているんです。

詳しい解説を読んで「ふむふむ、なるほど~」と納得すればできるようになると思っているのでしょう。

私は声を大にして言いたい。

私たちレベルは応用がききませんよーー!

だって解説は理解できたけど、本質は理解できていないですもん。

この問題の解説を見て納得したからといって、残念ながら類題まで解けるようにはならないんです。

そこからかなりの時間を費やして、「なるほど~、速さって何かが一定だから比較できるのね。そりゃそうだよね。よく考えるとそういうことを今まで解説に書いていたのね…」ということに気付きました。

そこまで辿り着くと類題まで解けるんです。類題というか解ける範囲が大幅に増えました。

それでもまだまだ足りないんです。もっと上のレベルなんです。最難関の過去問は……。

なんか違うんです。最難関の問題はどうも様子が違う。さっと条件整理できたときは、計算がかなりややこしい。計算が簡単なときは、条件整理がかなりややこしい。

「そんなに臨機応変にやれるか!このやろー!」

って感じなんです。

この訓練に数ヵ月必要です。だから夏までに基礎的なことができていないと間に合わない。

いやぁ~、中学受験って不公平ですよぉ。

地頭のいい子はそんなに苦労せずにできちゃうんです。
おそらく算数の大問3だけこっそり公民と差し替えておいてもあっさり解いちゃうんじゃないですか?

それからもうひとつ忘れてはいけないことがあります……。

超難関校や人気校を狙う受験生は気を付けなければいけないことがあるんです。

いやぁ、これ有料メルマガレベルの話しですよ。ホリエモンなら864円は取りますよ。それがなんと中卒が話すだけでタダになるんです。

いやぁ~、悔しいですね~。

「えっ、早く言えって? 」

タダの話しに催促するなっていいたいですが……。

いや、実はそんな大したことじゃないんですけどね。

超難関校や、人気校の過去問というのは市販されている問題集によく使われているんです。

あちこちの問題集に掲載されている。

秋になって、さあ過去問に取りかかろうってときに解いたことがある問題が含まれている確率が高くなるんです。

横着な子っているじゃないですか。あまり勉強しないのにできる子。

そういう子はあまり頑張ってないから逆に解いてないんですが、頑張っている子ほど解いちゃってるんです。うちみたいに無茶苦茶頑張っちゃうと二度も三度も解いたことがあるようになっちゃいましてね…。いやぁ理不尽ですねぇ~。

つまり、過去問のデキが実際の学力より高めにでちゃうんです。

これマズイです~。

過去問を10年分解くとするでしょ。できる年とできない年があるんです。

できない年は、解いたことがないだけなんです(笑)。

いやぁ~、馬鹿ですね~。

下手に最難関なんて目指すからあちこちに過去問が掲載されている。受験前にはもう手品のたねあかしは済んでますぅ~って状態(笑)。

もう、どうしていいかわかりません。

だから、問題集を解くときはじゅうぶん注意してください。先に親がチェックして、その学校の問題だけを厚紙でも貼って隠すんです。

でもその学校の傾向に沿った問題を解きたいでしょ?

そこが親の出番。

探すんですぅ~。類題を。

「えっ? オマエと違ってそんな暇がない?」

皆さんは私がない物を持っているでしょ。

カネですよ。カネ。

カネさえあれば家庭教師でもなんでも雇うことができる。探してもらんです。類題を。

今までそうしてカネで解決して生きてきたでしょ?

では、今夜もこのへんで。

2014.4.26 am 1:00

桜井信一

※記事の内容は執筆時点のものです

0