連載 下剋上受験

ミスの多くは防ぐことができるミス|桜井信一コラム「下剋上受験」

専門家・プロ
2014年11月26日 桜井信一

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今夜は「ミスの多くは防ぐことができるミス」がテーマです。よろしくお願いします。

ある方からの相談で、「どうしてもミスが減らない」という話がありました。その方は具体的にどんなミスなのか列記していたのですが、すべて『防ぐことができるミス』だったのです。

「だからミスには気をつけなさいといってるでしょ!」

で防げないことはもう皆様もご存知だと思うのですね。何か具体的な防御策が必要なのです。

三角形の面積を求めるときに、2で割るのを忘れた。

これを防ぐために三角形の面積の公式を変形させたりしたんですね。

他にもあります。

例えばこの円すい台ですが、桜蔭学園の過去問にもでています。

過去問のように台形を回転させたときにできる立体の表面積を求めるのであれば、あまりミスは起きないと思うのですね。

図のように円すい台が書いてあってその表面積を求める場合もミスは起きにくい。

しかし、円すいが書いてあって、下から何㎝のところで切断するときにできる円すい台の表面積だと、見た目では上のフタがないものだから、底面積と側面積を求めて終わってしまうことがあります。

もちろん我が家の話ね。(#^^#)

これを「十分気をつけよう」という反省で済ませていたら学習になっていないと思うのです。

ミスが起きること自体は恥ずかしいことではなくて、ミスを防ぐ対策をしていないことが恥ずかしいことなのでしょう。

例えば、円すい台を見た瞬間に、「いやあ~、その手に乗らないよ~。どうせ上のフタを忘れないか確かめたいんでしょ?」という感覚を持つこと。

このケースのミスに懲りていて出題意図に警戒できること。

そして次の動作で「1つの式にする」と機械的に足し忘れを防ぐことになります。

 

(上のフタ+下のフタ)+(側面積)

これが円すい台の表面積の公式なんだと自分のスタイルが決まっていて、いつも同じ解き方をするのであれば、上のフタは忘れないのです。

忘れやすい方から先に計算する。

このルールに従って、すべての計算式を自分のスタイルに変える。

問題を見てから、「えーっと、どこから計算しようか」となっているのでは、

 

(1)ある部分を足し忘れることがある
(2)どことどことが終わったかややこしくなる

こんな風にミスを誘っているような解き方になるわけです。

先程の相談の方のケースでは、台形の面積を2で割っていなかったり、円すいの体積を3で割っていなかったりするそうです。

こうして起きるミスは、毎回ではないから「次から注意しよう」という反省で終わるのです。5回に1回しか起きないミスであれば、やはり「注意しよう」となるのが普通だと思うのです。

逆に考えれば、10回に1回しかミスが起きない子の方が対策を怠ってしまう可能性があるのです。

難関中学の算数はとにかく計算が面倒なものが多い。計算が速いとかそういうことで何とかなる話ではなくて、ミスが起きるケースを研究しているのかなと思うほど、差が出てしまう。

2回目でマルにするのであれば比較的簡単な問題が多いのです。「あっそっか」で解ける問題。

これを1発目で命中できるかどうかを問うのが算数なんだと考えると、やはりミスが起きるたびにその対策を考えておきたい。

ミスが起きていないときに、机に向かって「さあミスが起きる場合に備えて」と考えてもあまりリアルじゃないわけです。

6年生だってまだまだこれからいくつかのミスをするかもしれません。5年生なんてあと1年ちょっとの期間でたくさんのミスがあるでしょう。

ミスに気づいたとき、慌てて消しゴムで消さない。そのミスの機会を『対策を講じるチャンス』だと考えて、その計算式をもう一度見る。

 

「わたしはこういうとき、こうしちゃう。だからこの式から先に解くようにしよう」

そう考える対策の数々が、入試本番に強い子となってミスなく試験会場から出てくることにつながると思います。

ミスは当然起きる。ヒューマンエラーなんて言葉を持ち出すと、ミスは当然の権利みたいに感じて堂々と行使しちゃいそうです。

しかし、その対策を講じていないことはやっぱり恥ずかしいのです。

小学生には厳しい注文ですが、これができる子がいる以上、そして学校側が要求している以上、負けてられないのです。

2014.11.26 am 0:00

桜井信一

※記事の内容は執筆時点のものです

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