連載 中学受験は親と子の協同作業

大手中学受験塾 クラスのアップダウンをどう受け止める?|中学受験は親と子の協同作業! 正しい理解がはじめの一歩 Vol.31

専門家・プロ
2019年4月11日 石渡真由美

テストや模試の結果で、クラスが決まる大手中学受験塾。クラスアップは励みになるけれど、クラスダウンはモチベーションダウンに……。塾のクラスの変動を親はどう受け止めればいいのでしょうか?

上位クラスにいるほど有利な中学受験塾のシステム

大手中学受験塾では、成績順にクラスが設定されています。例えば、SAPIXなら、最上位クラスが「α(アルファー)クラス」。その下にアルファベットのクラスが続き、一番下が「Aクラス」といったクラス分けです。

SAPIXの場合は、月に1度「マンスリーテスト」というテストがあり、その結果でクラスが変動します。マンスリーテストはクラスのレベルに関係なく、基礎から応用・発展問題まで“くまなく”出題される共通テストです。

塾に入れば、どのクラスにいても高得点・クラスアップが狙えると思われるかもしれませんが、実際はそうでもありません。

上位クラスの授業というのは、基礎を理解しているという前提でかなり早く進みます。授業の内容も応用・発展問題が中心です。そのため、上位クラスの子は、授業で習ったことをしっかり復習すれば、それがテスト後半の対策につながります。

しかし、それ以外のクラスの子は、授業では基礎を中心に学習し、応用・発展はあまり触れていませんから、得点源が前半だけになってしまいます。そのため、高得点をとることが難しく、クラスアップのチャンスも得にくいのです。このように中学受験塾のシステムは、上位クラスほど有利になっています。

一時的なクラスダウンなら、基礎をもう一度学べるというメリットも

テストで好成績を出して、クラスアップすると子どもも親も嬉しいものです。しかし、クラスアップする子のなかには「テストで “たまたま” 得意分野が出て好成績が取れただけ」という子もいます。こういった場合、いざクラスアップして授業を受けてみると、授業のスピードが早くてついていけず、次のテストでクラスダウンしてしまうといったこともあります。

一方、一時的にクラスが下がっても、そのクラスの授業でしっかりと基礎を固めて、成績が上がっていく子もいます。ですから、一概にクラスダウンがマイナスだというわけではありません。

6年生まではクラス変動をあまり深刻に捉えなくてもいいでしょう。成績分布表が小さくギザギザしている程度なら、心配はいりません。上下にギザギザしながら、大雑把にみて上向きなら順調ととらえて間違いありません。

ただ、成績が下がったときに「どんな単元の問題が出て、どこでつまずいてしまったのか」は、ぜひメモに残しておいてほしいと思います。塾の授業は、どんどん先へと進んでいきますから、苦手単元を振り返る時間的余裕はあまりありません。夏休みなどの長期休みのときに、メモした苦手単元を振り返る時間をつくり、しっかりと克服していきましょう。

「毎回下位クラスにいる」という状況は要注意

クラスがひとつ上がったり下がったりといった変動を過剰に心配する必要はありませんが、「毎回、下位のクラスにいる」という状況であれば、なんとか早く脱するように頑張りましょう。

下位クラスは授業の進みがゆるく、子どもがその環境に居心地の良さを感じてしまうと、なかなか伸びていきません。また、塾によっては、クラス崩壊に陥っているようなところもあり、学習環境として理想的と言い難いケースもあります。

コース別に分かれる“週テスト”はそのレベルにあった対策が大事

SAPIXではクラスのレベルに関係なく、マンスリーテストという共通問題が出題されますが、四谷大塚の場合はクラスのレベルによってテストの内容が異なります。

四谷大塚の週テストは、A・B・C・Sの4つのコースに分かれます。Aは基礎問題で、B、C、Sの順に難易度が高くなります。こうしたテストでは、まずそのコースのテストで高得点を目指すのが鉄則です。

ただし、気をつけなければならないのが、クラスアップしたら、そのクラスのレベルに応じた勉強にシフトチェンジしなければならないということです。「そろそろ上のクラスに上がれそう」という状況になったら、少し難しめの問題に挑戦し、クラスアップ後の授業に備えておきましょう。

基礎理解が不十分なのに、応用問題に時間をかけたり、上のクラスにアップしたのに、基礎学習ばかりに力を入れて、応用問題の演習不足だったりすると、テストでよい結果を出すことはできません。

また、もうひとつ親御さんに気をつけて欲しいことがあります。Aコースで高得点を取れていて、Bコースで得点が下がると、「学力が下がった……」と勘違いする親御さんが多いのです。

コースが上がれば、テストの難易度も上がり、高得点を取るのは難しくなります。母集団が変わるので、当然順位も下がります。点数を主観で見て、「なんでこんな点数なの!」と目くじらを立ててはいけません。わが子が「どのレベルにいるのか」「どのコースのテストを受けたのか」「“今は”このくらいの点数を取っている」と客観的に見るようにしてください。

親の声かけで子どもを前向きにさせるには

さて、ここまで2つの塾を例にクラス分けテストについて説明してきました。

「小学生の子どもを成績順で振り分けるなんて残酷だ」と批判的な親御さんもいると思いますが、受験はやはり勝負です。遊びたい盛りの子ども達を引っ張っていくには、意欲をかき立てる仕組みが必要な面もあります。

クラス変動や競争を楽しいと感じたり、励みにできたりする子は、中学受験に向いています。しかし、その一方で競争に疲れ、クラスダウンに傷つく子ども達もいます。ですから、親御さんはわが子の成績に一喜一憂せず、いつも応援してあげるスタンスでいて欲しいのです。

親御さんは成績が上がると「やったね! ○クラスになったね!」とその結果だけをほめてしまいがちです。でも、そういうほめ方ばかりしてしまうと、成績不調だったときに子どもは「僕はダメなんだ……」という捉え方をしてしまいます。ですから、どんな成績を取っても、結果だけに目を向けるのではなく、それまでの過程に注目しましょう。

テストで高得点を取り、クラスアップができたら、「春休みに頑張って苦手単元を勉強した成果が出て本当によかったね。この調子で頑張っていこうね」と、これまでの学習を認めたうえでほめてあげるといいでしょう。

もしクラスダウンしてしまったら、「どうしてこんな点数を取ったの!」と叱るのではなく、「なぜそうなってしまったか」に注目してください。もしかすると勉強のやり方が間違っていたのかもしれないし、お子さんが勉強に集中できない悩みを抱えていたかもしれません。また、惜しいところまで解いていたのに最後のツメが甘かった問題が多かったのかもしれません。

そうやって、一つひとつ点検し、成績が下がってしまった原因を探っていきます。そして、点数を上げていける要素を見つけ出すとともに、子どもには「ちょっと○○すれば、○○できそうだね」と前向きな声かけを続けていきます。

また、たとえわずかでも頑張っていたら、認めてあげてください。「その程度はやって当然よ!」という親御さんの冷たい態度は、子どものモチベーションを大きく下げてしまいます。親御さんがありのままのお子さんをしっかり見て、心から応援してあげると、子どもは「よし! 次は頑張ろう!」と前向きな気持ちを持つことができます。


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※記事の内容は執筆時点のものです

西村則康
西村則康 専門家・プロ

プロ家庭教師集団「名門指導会」代表
中学受験情報局「かしこい塾の使い方」主任相談員

にしむら のりやす日本初の「塾ソムリエ」としても活躍中。40年以上中学・高校受験指導一筋に行う。コーチングの手法を取り入れ、親を巻き込んで子供が心底やる気になる付加価値の高い指導が評判。暗記や作業だけの無味乾燥な受験学習では効果が上がらないという信念から「なぜ」「だからどうなる」という思考の本質に最短で入り込む授業を実践している。また、学習指導だけでなく、受験を通じて親子の絆を強くするためのコミュニケーション術もアドバイスする。「中学受験は日常生活を犠牲にしてまで行うものではない」「主役は塾の先生や家庭教師ではなく、お子さんとご家庭だ」という「生活の延長線上の受験」を理想に掲げている。著書に『中学受験は親が9割』(青春出版社)、『中学受験基本のキ! (日経DUALの本)』(日経BP社)など、20冊を超える。

西村則康公式サイト http://www.nishimuranoriyasu.com/
名門指導会 https://www.meimon.jp/
中学受験情報局「かしこい塾の使い方」 https://www.e-juken.jp/

この記事の著者

フリーライター。子供の誕生をきっかけに、わが子の成長に合わせ、ベビー雑誌、育児・教育雑誌、塾専門誌で取材執筆。6年前に子供の中学受験を経験したものの、国立大学の附属中学で併設高校が無かったため、その3年後に“高校受験生の母”、またその3年後に“大学受験生の母”も体験。中・高・大の3つの受験を知る受験ライター。