
子供の疲労度を測るよい方法は? ときには勉強を休ませる勇気を ―― 中学受験との向き合い方
前回は親子のコミュケーションをとるうえで⼤切な、リラックスした状態をつくるための⽅法について解説しました。今回は受験勉強中に出てくる疲労について⽥中先⽣に伺います。
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勉強を続けると出てくる兆候は疲れのサインかも
まずは上のグラフを見てください。縦軸は頑張ることの効率(パフォーマンス)、横軸は頑張り度を表します。
はじめは集中して勉強を続けることができますが、頑張り続けていると、ある境目で縦軸の効率が落ちてくるのがわかると思います。グラフの黄色い部分にさしかかってきたタイミングですね。
これは横軸の頑張りに伴う疲労度が一定の程度に達すると、頑張ろうとしても効率が少しずつ下がることを表しています。疲労が表面化すると、次のような兆候がみられます。
■受験生にあらわれる兆候
①「頑張らなくちゃ」と思っているのに、やる気が出ない
②ため息・あくび・眠くなってくる
③不機嫌になる
④休憩時間が長くなってくる・動作が緩慢になる
⑤覚えようと思っても頭に入らない・覚えたことが思い出せない
⑥日常生活の“うっかりミス”やボーッとしていることが増える
⑦テスト中にミスが増えて、時間内に問題を解き切れない
こういった兆候がみられる状態は、黄色信号。つまり注意が必要です。この「注意」とは、勉強を後押しすることではありません。
もし黄色信号のときに「もっと頑張らなきゃダメでしょ!」と背中を押してしまうと、それは赤信号に向けて子供を追い込むことになってしまいます。「赤信号」は、さらなる身体的不調があらわれる領域を指します。こうなると、受験勉強どころではなくなってしまいます。
黄色信号のときに「注意すること」とは、子供の体調に注意する・気づいてあげることを指します。「黄色信号かな?」と感じたときには、素早く休憩をさせましょう。これは子供に限らず大人にもいえることです。誰でも頑張った分だけ疲れが出ます。この理解が大切です。
ただ、精神的な疲労というのは目に見えないものです。親としてはイメージがつかみにくいし、子供が怠けているだけなのか、疲れているのかの区別をつけるのもむずかしいですね。ここからは、受験生の精神的な疲労をどう測ればよいのか解説していきましょう。
受験勉強の精神的疲労。親子でどう判断する?
受験生の精神的疲労の度合いを測るには、親の観察と本人の自覚を参考にします。いずれも、目の付け所は、前項の「受験生にあらわれる兆候」です。
グラフを使って疲労の度合いを確認する
この目の付け所を参考に、先ほど紹介したグラフを使ってみましょう。子供にグラフを見せて、「青信号では効率よく頑張れるけど、黄色信号から右側にいくと疲れが出てきて、これらの兆候が表れるようになる。そして、思うように勉強がはかどらなくなってしまう。あなたは今どの位置にいると思う?」と聞いてあげてください。
「まだ青信号のところかなー」と子供が答えるのであれば、励まして応援してあげればいい。「頑張ってね」と伝えてもいいでしょう。ただ、黄色信号に差し掛かっているのであれば、そうはいきません。黄色信号から青信号に戻るための唯一の手段は「休まること」です。次に「休む」と「休まる」の違いをお話しします。
「休む」と「休まる」とは大違い。大切なのは心身共に「休まる」こと
・活動をすれば必ず疲れる
・疲れへの唯一の処方は「休まる」こと
この2つは心身を「休める」ための基本原理です。休息も休憩も学校(仕事も)のお休みも休まってこそ、その価値があります。逆に言えば、形は休んでいても、休まらなければ休息や休憩の価値がありません。
たとえば、学校を欠席したり、会社を欠勤して家に居ても、勉強や仕事の遅れが気になったり、先生、友達や職場の上司、家族にどう思われるかが気掛かりだったとすると、気が休まりません。
子供たちは親の顔色を窺います。学校を休んだり、勉強の合間に休息をとっているときも、親に気を遣ってやる気のある風を装ったり、“親に睨まれている”などと感じて、気疲れしてしまうことすらあります。精神疲労からの回復のためには、「気が休まる」ことが最優先です。
「休まること」は次の活動をより質の良いものにします。この認識を親子で持ち合わせて、スッキリ爽やかに休息をとることをおすすめします。親はそのために少しだけ勇気を奮い起こしてください。
休むことに罪悪感を抱く必要はない。疲れたときは思い切り休息をとる
今回は疲労が蓄積されたときに出てくる兆候と、それを発見するための方法について説明しました。親子で意識してほしいことをまとめると、以下の3つです。
・人は活動すると、必ず疲れる
・疲れるのは悪いことではない
・休まることが大切である。だから正々堂々と休もう
無理して頑張り続けると、子供の自尊心・自己効力感が下がり、「もうやっても意味がない」と意欲が減退してしまうこともあります。赤信号の領域に進む前に、休息で疲れをちゃんと取り除きましょう。
これまでの記事はこちら『中学受験との向き合い方』
※記事の内容は執筆時点のものです