中学受験ノウハウ 連載 中学受験との向き合い方

勉強に必要な目標設定のしかた ―― 中学受験との向き合い方

専門家・プロ
2019年6月03日 やまかわ

首都圏の一部では、4人に1人の小学生が挑戦するともいわれる中学受験。子供の受験に親はどう向き合えばよいのでしょうか。この連載では、『中学受験は挑戦したほうが100倍子供のためになる理由』の著者である、田中純先生に中学受験との向き合い方をテーマにさまざまな話を伺います。

前回は、疲れがたまりにくい勉強サイクルや心身の休めかたについて解説しました。今回は中学受験における目標設定のコツについて⽥中先⽣に伺います。

目標設定のときに意識すべき4つのポイント

目標というのは、人が努力を続けて前進していくために役立てる道具です。遠くの目標としての「長期目標」途中の道標としての「中期目標」、そして“ヘッドライトの届く先”としての「短期目標」、さらに一日一日「日課」に細分できます。

それぞれをどんな内容にするかはご家庭次第。大切なのは「努力を続ける」本人が当事者意識を持って目標を立てることです。たとえば長期目標を「がんの新薬を開発する」と設定するのであれば、「医薬系の研究職に就く」が中期目標。「○○大学に入れるような学力を7年後に身につける」という短期目標が考えられます。

また、長期目標として「中学入試までにこの問題集をやり終える」という規模の目標もあります。その場合、「10月末までに第4章まで解き終える」が中期目標、「夏休みが終わるまでに第1章を解き終える」が短期目標になりうるでしょう。日課は「毎日4ページ、解答して自己採点する」という具合です。

目標という道具の最大の役目は、学びの進捗を感じられるということです。進捗が感じられればやる気が持続し、そして「がんばれば、どうにかなりそうだ」と思え、やり抜く原動力になります。

ここで目標設定するうえで意識すべきポイントを4つ提案します。

1、具体的で行動で示せる目標
2、必ず実現できる目標
3、どこまで進んだか測定できる目標
4、期限を示した目標

これらの条件を満たして目標設定をすれば、ゴールに向けてやるべきことが見えてきます。また、これまでの勉強の進み具合を振り返ったときに、何が足りないのかがわかりやすくなるでしょう。そして何よりも「今日なすべきことが終わった」という達成感とともに日々を送ることができるのです。

ときには高めの目標設定が必要

志望校合格を長期目標のゴールとしたときに、「この学校だったら楽に入れるだろう」、「背伸びすればもうちょっと難しいところでもいけるかもしれないな」、という思いもあるでしょう。しかし、子供の人生は中学受験後も長く続いていきます。今後の成長も視野に入れて目標を設定すべきですね。ここで、以下の図を見てください。

コンフォートゾーンは、現状の自分の手が届くエリア。この範囲内に目標を置くと、ストレスがかからない分、目標達成が簡単です。その反面、自分自身の限界に挑戦する機会はなく、成長に結びつきません。

これは前述した4つのポイントのうち、2番目の「必ず実現できる目標」ともいえます。疲れているときや自信を失いかけている時などはこの範囲に日課や短期目標を設定します。いわば、リハビリモードとして活用します。

ストレッチゾーンは、背伸びすれば届くエリア。がんばれば実現できる目標を設定する領域です。自分がいるコンフォートゾーンからストレッチゾーンに手を伸ばすのは、ストレスがかかりますが、大きな成長を期待できる機会になります。

このコンフォートゾーンとストレッチゾーンの使い分けることが大切なんですね。

前述の「毎日4ページ、解答して自己採点する」という日課を例に説明します。学校行事や習い事で疲れて4ページも進められない日があるでしょう。そのなかで、どんなに疲れていても1ページならできるのであれば、何が何でも1ページは終えましょう。

たとえ紙一枚分とはいえ、「無」と「有」とは大違いです。「無」はいくら重ねても0ミリのまま、しかし「有」であれば続けて重ねていけば百科事典のような厚みになります。心身ともに充実している日には1日5ページ進めてみるのもいいでしょう。つまりストレッチゾーンに踏み込むということですね。子供自身が「今日はもう少し頑張ってみようかな」と考えられるようになるのが理想的です。

ちなみに、「今はまだ目標の偏差値まで届かないけれど、小学6年生の2月までにはきっと届く……!!」といった具合に、偏差値を目標にする人がいます。しかし、前述の4つのポイントに基づいた目標設定にふさわしいやり方ではありません。なぜなら、「偏差値を上げる」は「具体的で行動で示せる」ものではないからです。スローガンや掛け声としては使えますが、「がんばれば、どうにかなりそうだ」に必ずしも結びつかないので、ストレスに負けず艱難を乗り越えていくツールとしてはおすすめできません。

目標はかならず達成しなくてはいけないものではない

目標を設定して努力をしても、うまくいかないこともあります。たとえば、「来月の国語のテストで80点以上をとる」「今月中に算数のドリルをすべて終わらせる」という目標が達成できなかったとします。そのときに重要なのは、目標の何パーセント達成し、本人がどれくらい満足しているかどうかです。

達成できなかった部分もあるけど、達成できている部分もある。子供自身がそれに対して、どう思っているのか、満足度を聞いてみましょう。

満足しているのであれば、次の目標に向けて進めばいいし、満足していない場合は、目標への取り組みに対してなにかしらの問題意識を抱えているということです。目標の再設定も視野に入れて、問題意識を解消できるように話し合いましょう。

そのうえで前提として親子で共有してほしいのが、「目標が目的ではない。目標はぜったいに達成しなくてはいけないものではない」ということです。達成できなくても、何%達成できたのかということを測定して、残りを達成するためにはどうしたらよいのかを考えてください。

そのためにも、つねに親子で前向きな気持ちを持っておくべきです。「40%達成できなかった」ということに目をつけるのではなくて、「60%も達成できた」と思うこと。その方がお子さんも自信を身につけ、次の目標につなげる活力にもなります。

日課を達成したら○を付ける

目標達成のための日課は、TO DO LISTを作成したり、ノートをつくったりするといいですね。日課も目標と同じように具体的、測定可能、達成可能という要素を取り入れましょう。「算数をたくさんやる」のではなくて、算数のどの範囲をどのような方法でやるのか、何ページの何番を解いてノートに書いて丸付けをするのかどうか、正解していたらどうするのか、間違えた問題はどうするのかというように、アクションが具体的であるとよいでしょう。

TO DO LISTといえば、1日の日課を達成するごとにチェックを入れるイメージが一般的ですが、中学受験生におすすめなのはチェックを入れるのではなく、○(丸)をつけること。30日間頑張って、日課を達成していけば30個の○が並びますよね。1年なら365個。小学4年生から始めれば受験本番までに1000個を超える○が並ぶんです。受験前日にこれまでの努力を振り返ったときに、この事実が自信にならないはずがありません。丸印をつけることは、1日を頑張った自分へのご褒美にもなるし、未来の自分を励ますエールにもなります。

目標を設定するスキルを身につければ、自律的に前進できるようになる

今回は中学受験での目標設定についてお話ししました。「目標を設定したけれどなかなかうまくいかない」というときは、焦らずに目標を再設定して調整を重ねることが大切です。目標を使いこなせば、日々前進できるようになります。中学受験を機会に、子供自身が目標の定め方を身につければ、それは将来的にも大きな財産になるでしょう。

次回は受験勉強に励む子供とどう接するべきかについてお話しします。


これまでの記事はこちら『中学受験との向き合い方

※記事の内容は執筆時点のものです

田中純
田中純 専門家・プロ

開成中学校・高等学校、国際基督教大学(ICU)教養学部教育学科卒業。神経研究所付属晴和病院、中高教諭、学校カウンセラーを経て公文国際学園開講準備に参加。現在は赤坂溜池クリニックやNISE日能研健康創生研究所、コミュニティ・カウンセラー・ネットワーク(CNN)などでカウンセリングやコンサルテーションを行っている。相性はDon先生。著書「ストレスに負けない家族をつくる」「中学受験は挑戦したほうが100倍子供のためになる理由」(みくに出版)。公式YouTubeはこちら

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この記事の著者

編集・ライター。学生時代から都内で6年間塾講師を務める。塾講師時代は、おもに作文・国語・英語の科目を担当。小学生から中学生までの指導にあたる。現在は編集・ライターとして教育関連をはじめ、街歩き・グルメ記事の執筆取材をおこなう。