受験勉強に励む子供とどうかかわるべきか ―― 中学受験との向き合い方
前回は、目標設定の方法について解説しました。今回は子供の勉強に親がどこまで関わるべきなのか、子供の頑張りをどこで判断すべきなのか、⽥中先⽣に話を伺います。
子供が質問しやすい環境をつくる
子供が自ら進んで勉強するようになるためには、「勉強するのは自分のこと」という意識を早いうちから持つことが大切です。
たとえば、ランドセルに教科書を詰めるのは誰のことなのか、宿題をするのは誰のことなのか。「それは自分事だ」と子供自身が気づくように、小学校低学年のうちから問いかけて、答えを導き出させるようにしましょう。これは自分事意識を育てることであり、未来を生き抜く大切な当事者意識の基礎をつくることでもあります。
ただ、自分でするにも、限界はあります。子供だけで考えてもわからない宿題が出てきたり、テストで低い点をとってしまったり。どう進むべきかわからず、子供が立ち止まってしまうことがあります。そんなとき、親は子供にどう関わったらいいのでしょうか。
まずはっきりさせておきたいことは、「自分事」とは「自分一人でやらなくてはいけない事」ではありません。「サポートを動員して、協力を得て実行・達成するのも自分事だ」ということです。
また警戒すべきなのは、できないことや間違えることを”悪い状態”と思ってしまうこと。この考えを持っている親子はとても多いです。しかし、それは悪いことではなく、伸びしろであり、前進のチャンスと考えるべきです。失敗から立ち直る力をレジリエンスと呼びます。このレジリエンスは失敗前よりもパワーアップする可能性をもたらすのですが、レジリエンスについはまた改めてお話します。
「ちっとも出来るようになってないよね」。こういった、子供の頑張った過程を見ず、結果だけを見てすべてを否定するような発言を続けてはいけません。また、「なんでこんなに成績が悪いの?」というような「質問」はいじめになりかねません。なぜなら、「僕がこんなに成績が悪い理由は3つあるんだよ、お母さん。第1に……」なんて答えられる子供は稀有でしょう。答えられないと知ってそんな問いをぶつけることはいじめです。それで子供を苦しめたなら、精神的虐待です。
子供が困ってSOSを発したときに「こんなこともわからないの?」と親自身の苛立ちや不安を子どもにぶつけるのもNGです。これが積み重なると、子供は親に正直にものを言えなくなってしまうでしょう。
苦手な分野を克服する、間違えた問題にもう一度立ち向かって正解にたどり着くためには、まず子供が親に質問しやすい環境をつくる必要があります。
わからないことや、できないことを打ち明けて質問をするのは、とても勇気がいることです。子供自らがSOSのサインを出してきたならば、まずは「よく聞いてくれたね」「わからないことをわからないって、はっきり伝えるのは大事なことだよ」と声をかけてあげることが大切です。そして、できなかったことができるようになった、わからなかったことがわかるようになったときには、その頑張りを肯定してあげましょう。
水面下の努力を肯定するために必要なこと
子供が自律的に勉強をして、わからないことを大人に質問するようになっても、それが結果に結びつく時間はそれぞれです。努力がなかなか結果につながらない場合、周囲の人は「ちゃんと勉強していないんじゃない?」「まったく結果が出てないけど……」というネガティブな言葉をかけてしまいがちです。そうならないために、子供へのどんな眼差しが必要なのでしょうか。ここで次のイラストを見てください。
とじる
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