中学受験ノウハウ 連載 中学受験との向き合い方

受験勉強に励む子供とどうかかわるべきか ―― 中学受験との向き合い方

専門家・プロ
2019年6月10日 やまかわ

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首都圏の一部では、4人に1人の小学生が挑戦するともいわれる中学受験。子供の受験に親はどう向き合えばよいのでしょうか。この連載では、『中学受験は挑戦したほうが100倍子供のためになる理由』の著者である、田中純先生に中学受験との向き合い方をテーマにさまざまな話を伺います。

前回は、目標設定の方法について解説しました。今回は子供の勉強に親がどこまで関わるべきなのか、子供の頑張りをどこで判断すべきなのか、⽥中先⽣に話を伺います。

子供が質問しやすい環境をつくる

子供が自ら進んで勉強するようになるためには、「勉強するのは自分のこと」という意識を早いうちから持つことが大切です。

たとえば、ランドセルに教科書を詰めるのは誰のことなのか、宿題をするのは誰のことなのか。「それは自分事だ」と子供自身が気づくように、小学校低学年のうちから問いかけて、答えを導き出させるようにしましょう。これは自分事意識を育てることであり、未来を生き抜く大切な当事者意識の基礎をつくることでもあります。

ただ、自分でするにも、限界はあります。子供だけで考えてもわからない宿題が出てきたり、テストで低い点をとってしまったり。どう進むべきかわからず、子供が立ち止まってしまうことがあります。そんなとき、親は子供にどう関わったらいいのでしょうか。

まずはっきりさせておきたいことは、「自分事」とは「自分一人でやらなくてはいけない事」ではありません。「サポートを動員して、協力を得て実行・達成するのも自分事だ」ということです。

また警戒すべきなのは、できないことや間違えることを”悪い状態”と思ってしまうことこの考えを持っている親子はとても多いです。しかし、それは悪いことではなく、伸びしろであり、前進のチャンスと考えるべきです。失敗から立ち直る力をレジリエンスと呼びます。このレジリエンスは失敗前よりもパワーアップする可能性をもたらすのですが、レジリエンスについはまた改めてお話します。

「ちっとも出来るようになってないよね」。こういった、子供の頑張った過程を見ず、結果だけを見てすべてを否定するような発言を続けてはいけません。また、「なんでこんなに成績が悪いの?」というような「質問」はいじめになりかねません。なぜなら、「僕がこんなに成績が悪い理由は3つあるんだよ、お母さん。第1に……」なんて答えられる子供は稀有でしょう。答えられないと知ってそんな問いをぶつけることはいじめです。それで子供を苦しめたなら、精神的虐待です。

子供が困ってSOSを発したときに「こんなこともわからないの?」と親自身の苛立ちや不安を子どもにぶつけるのもNGです。これが積み重なると、子供は親に正直にものを言えなくなってしまうでしょう。

苦手な分野を克服する、間違えた問題にもう一度立ち向かって正解にたどり着くためには、まず子供が親に質問しやすい環境をつくる必要があります。

わからないことや、できないことを打ち明けて質問をするのは、とても勇気がいることです。子供自らがSOSのサインを出してきたならば、まずは「よく聞いてくれたね」「わからないことをわからないって、はっきり伝えるのは大事なことだよ」と声をかけてあげることが大切です。そして、できなかったことができるようになった、わからなかったことがわかるようになったときには、その頑張りを肯定してあげましょう。

水面下の努力を肯定するために必要なこと

子供が自律的に勉強をして、わからないことを大人に質問するようになっても、それが結果に結びつく時間はそれぞれです。努力がなかなか結果につながらない場合、周囲の人は「ちゃんと勉強していないんじゃない?」「まったく結果が出てないけど……」というネガティブな言葉をかけてしまいがちです。そうならないために、子供へのどんな眼差しが必要なのでしょうか。ここで次のイラストを見てください。

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田中純

田中純

  • 専門家・プロ

開成中学校・高等学校、国際基督教大学(ICU)教養学部教育学科卒業。神経研究所付属晴和病院、中高教諭、学校カウンセラーを経て公文国際学園開講準備に参加。現在は赤坂溜池クリニックやNISE日能研健康創生研究所、コミュニティ・カウンセラー・ネットワーク(CNN)などでカウンセリングやコンサルテーションを行っている。相性はDon先生。著書「ストレスに負けない家族をつくる」「中学受験は挑戦したほうが100倍子供のためになる理由」(みくに出版)。公式YouTubeはこちら

やまかわ

  • この記事の著者

編集・ライター。学生時代から都内で6年間塾講師を務める。塾講師時代は、おもに作文・国語・英語の科目を担当。小学生から中学生までの指導にあたる。現在は編集・ライターとして教育関連をはじめ、街歩き・グルメ記事の執筆取材をおこなう。