連載 学ぶ力を伸ばす「合格する親子の勉強」

「応用がきく子」の育て方#23 子供のタイプに合った対応法を考える|学ぶ力を伸ばす「合格する親子の勉強」

専門家・プロ
2019年11月28日 松本亘正

子どもに「よい勉強習慣」を身につけさせたい。そのために親ができることとは――。中学受験専門塾 ジーニアス 代表、松本亘正氏の著書『合格する親子のすごい勉強』から、わが子の学ぶ力を伸ばすヒントを紹介します。

【10歳以降なら】わが子のタイプを見極められる親は子どもを劇的に伸ばす

― Point ―

ホームランバッタータイプか、ヒット量産タイプかは、子どもによって違う

小学校高学年になってくると、少しずつ親が教えられることも減っていきます。

中学受験や高校受験を目指す子の勉強内容が難しくなり、親では教えられないということも増えてくるでしょう。

そんな状況のなか、まわりと比較して「◯◯が足りない」「こうしなければならない」と親が思うのは避けたいことです。

現在のわが子にとって「できる限り」の学力をどう身につけさせるかを考えることが、結局、一番伸びる方法なのです。

たとえば、コツコツ勉強できて、基本問題はほとんど解けるのに、応用問題になると手も足も出ないタイプ。

親はどうしても不足しているところに目がいくので、もっと応用問題に取り組ませたいと思ってしまいます。

でもそれは、せっかくヒットを量産できる野球選手に対して、無理にホームランバッターになることを要求していることと同じです。

基礎がしっかりできている状況を変えないで、少しだけホームランも打てるように指導したほうが、いい結果が出ます。バッティングフォームが崩れて打率が下がったり、自信を失わせてしまってはいけません。

以前、こんなケースがありました。

子どもの算数の偏差値が50で、親は偏差値60の難関校を目指させたいと考えているものの、本人にはそこまでのモチベーションがありませんでした。

でも、親は難関校に合格してほしいという思いが強いので、こちらが「基礎をしっかりと固めて、あわよくば結果がついてくる、というスタンスがいいですよ」と伝えたのですが、あまり理解されませんでした。

その後、ご両親は、ほとんど解けない難問ぞろいの過去問をたくさん解かせていました。すると、120点満点で20点や30点が当たり前。

復習させて同じ問題を二度解かせる徹底ぶりでしたが、それでも50点か60点しか取れないので、本人の自信がつかないどころか、かなりの時間かけて勉強しているのに模試の偏差値が48、45と下がっていってしまったのです。

難問を解こうとする時間が増えた分、基礎問題に触れる時間や演習量も減り、結果、基礎もがたがたになってしまいました。

その時点でようやくこちらの意図をくんでいただけたのですが、最終的な偏差値も50ちょっとにとどまってしまいました。

「ホームランを狙わずにヒットをコツコツ積み重ねるような勉強法」だったら、偏差値55までは引き上げられたのではないかという後悔が残ります。

逆に、基本問題でつまらないミスをたくさんしてしまうものの、ときに難しい問題をぽんと解ける子がいます。

こんなときには、もちろんミスを減らすために、いろいろと手を打つのはいいのですが、ミスばかり指摘しては、伸びる芽を摘んでしまいかねません。

ホームランバッターに、いつも細かいことを言っては、才能も発揮できなくなってしまいます。

以前、偏差値70以上の開成中学校・筑波大駒場中学校に合格した子がいました。

その子は偏差値60の問題でもミスが多く、合格点を超えられないこともたびたびありました。親も再三注意しましたが変わりません。

しかし、難問をぽんと解いたり、集中すると一気に難しい宿題でも片づけてしまえるところがあったのです。

四谷大塚が実施している模試の算数でも、100点(150点満点)くらいと決して悪い点数ではないのですが、とても最難関校を目指せる成績ではありません。

では、どうやって彼の集中力を引き出したのか。

「今回の演習はしっかりできてほしい」という「ここぞ!」というときに、満点が取れたらコンビニで1品、少し難しいテストで80点以上だったらコンビニで1品という「ごほうび」を与えることにしたのです。

塾が入っているビルの1階にローソンストア100があったため、そこで1品買ってあげるというものでした。

そのときの彼の集中力はすさまじいものがありました。いつもは見直しをしているつもりでも、見落としがあったり、気が入っていないこともありましたが、「コンビニ1品」がかかった演習では、鋭い目で見直しも行い、自分のミスに気づきます。

彼はだいたい「コンビニチャレンジ」には勝利し、ジュースや文房具を買ってもらっていました。

じつは受験前日にも、「受かったらコンビニ1品だよ」と送り出したら笑っていましたが、自分でも集中力の発揮の仕方を覚えたようです。

受験は全勝。これが、毎回コンビニ1品だったら効果は出なかったでしょう。「ここぞ!」というタイミングを選んだからこそ、効果が出たのだと思います。

別の例です。偏差値65ほどの武蔵中学校に合格した子は、模試でも偏差値50を切るような厳しい状況でした。

しかし誰よりも弁が立つ、知性が感じられる子でもありました。その子は記述問題でも光るものがありました。ただし、ほとんど判読不能で×ばかりでしたが……。

さらにこの子はほとんど勉強しませんでした。読書、レゴ、YouTubeに逃げるタイプで、親御さんも手を焼いていました。

そこで、ゆるめるところはゆるめて、「この課題だけはしないといけない」というときだけ強制するようにしました。

本人もこのままでは受からないとわかっている。でもなかなか努力ができない。そんな状況のなか、「これだけは絶対やって。そうしないと受験は無理だから」とこちらが言うと取り組みました。

つまり、納得すればやる。ただ、納得させるのが難しいという子でした。

受験当日、ぎりぎりまで暗記教材を見直す受験生のなかで、彼は(彼のために私が用意した)暗記プリントを数分眺め、あとはぼーっとしていたそうです。それでも受験会場に向かう姿は堂々としていたと、後日おかあさんから聞きました。

偏差値は最終的に10足りない状態でしたが、見事合格。精神力、タフさは抜群でしたから、少なくとも自分の力はしっかり出せたはずです。

かなり賭けのような受験になってしまいましたが、彼のようなタイプに受験までの間ずっと強制力を働かせても、きっと潰れてしまうか、家出でもしてしまったでしょう。

なかば受験をあきらめながら、それでも「最低限これだけはやってね」と応援し続けたおかあさんの接し方もよかったのだと思います。

人によってアプローチは異なりますし、絶対的な正解はありません。

あなたのお子さんはどんなタイプでしょうか?

よく観察して、対応法を考えるのが親の務めになってきます。

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※記事の内容は執筆時点のものです

この記事の著者
松本亘正 専門家・プロ

まつもとひろまさ|中学受験専門塾ジーニアス運営会社代表|ラ・サール中学高校を卒業後、慶應義塾大学在学中に中学受験専門塾ジーニアスを開校。現在は東中野・自由が丘・日吉・芝浦港南など、6校を展開している。「伸びない子はひとりもいない」をモットーに、少人数制で家族のように一人ひとりに寄り添う指導を徹底、毎年超難関校に合格者を輩出している。生徒は口コミと紹介だけで9割を超える。これまでののべ指導人数は2200名以上。第一志望校への合格率は一般的に25%といわれるなか、ジーニアスは約60%超の第一志望校合格率を誇る。中学受験だけでなく、高・大受験時、就職試験時、社会人になっても活きる勉強の仕方や考える力の育成などに、多くの支持が集まっている。