子供に寄り添うこと、子供と向き合うこと ―― 中学受験との向き合い方
前回は、学ぶことの意義について解説しました。今回は、寄り添うことと向き合うことの大切さについて、田中先生に伺います。
Contents
「向き合う」と「寄り添う」の違い
中学受験を控えた子供には、多くの試練が訪れます。毎日の宿題や苦手科目の克服、模擬試験の結果に対する一喜一憂など、さまざまなハードルに直面するものです。ときには上手くいかなくて落ち込んでしまうこともあるでしょう。そんなとき、親御さんが子供に対してすることは、“向き合うこと”と“寄り添うこと”です。どちらも相手の気持ちを考えるうえで、とても大切な行動です。この2つにはどんな違いがあるのでしょうか。
“向き合う“と“寄り添う“をイラストで表すと、上の図のようになります。このとき、お互いに見えているもの、見えていないものは何なのでしょうか。
「向き合うこと」は相手を見守ること
向き合うというのは、“相手を正面から見つめて見守る”行為のこと。今現在どんな気持ちを抱えているのかということを、相手の表情やしぐさを見て汲み取るアクションです。しかし、相手の背中や相手が見ている景色を見ることはできません。
「寄り添うこと」は相手の気持ちを推しはかること
寄り添うというのは、“相手のそばで相手と同じ景色を見る”というアクションです。たとえば、相手がなぜ嬉しい気持ちなのか、傷ついているのかを想像すること―― 寄り添うことは“向き合うこと”とは対照的に、相手の表情を見ることはできません。
「向き合う」と「寄り添う」を使い分ける
“向き合うこと”と“寄り添うこと”、どちらか一方が正しいというわけではなく、両方を上手に使い分けなくてはなりません。相手の表情は向き合うことでしか見えてこないし、なぜ悲しんでいるのかを考えるには相手の気持ちに寄り添って思いを巡らせる必要があります。
相手にとってあなた自身がどのように映っているのかを考えることも大切です。安心したり、孤独感が和らいだり、逆に鬱陶しく思われていたり……。相手が自分をどのように思っているかを考えながら、向き合ったり寄り添ったりを繰り返して関係を深めていく。これが、人と関わることの基本形といえるでしょう。
距離感や接し方を誤らないためには
“向き合うこと”と“寄り添うこと” ―― これらは距離感を誤ったり対応を間違えてしまったりすると、相手に不快感をもたらします。それぞれの注意点について説明しましょう。
自分自身の眼差しを顧みながら相手と向き合う
相手と向き合うときには、自分自身のわずかなしぐさや態度が意図しない形で相手に伝わり、いたずらに勘ぐられてしまうことがあります。
たとえば、あなたが立ち上がっていて、相手は座っているとき。この状況では、あなたが視線を下ろす形になるため、相手を圧迫している印象を与えることがあります。また、洗濯物の片付けや夕飯の準備など、何かをしながら子供の話を聞くとき。こんなときは、「ちゃんと話を聞いてくれない……」という失望感を相手に抱かせてしまう可能性はあります。
子供と向き合うために大切なのは、「相手に対するリスペクト」を忘れないことです。相手に敬意が伝われば、上から目線で見られていると思われるリスクも減るでしょう。わが子といえどもひとりの人間です。敬意をもって接することが肝心です。
寄り添うときには距離感が大切
寄り添うという言葉には“添う”という文字が入っています。このことからわかるように、寄り添うときは相手との距離感がとても大事になってきます。相手が「自分の身になって考えてくれている」と思ってくれるかどうかがポイントです。
しかし、物理的な距離が近すぎると、「なんでこの人がここにいるんだろう?」と相手に思われてしまう場合もあります。「ひょっとして鬱陶しいと思われているのかな?」と思ったら、いったん相手と向き合ってみましょう。“寄り添う”という行動に対してネガティブな感情を抱いているのか、安心感を持っているのかが、相手の表情から見えてくるかもしれません。向き合うという行為も、効果的なフィードバックをもらう方法のひとつなのです。
子供が助けを求めるサインを見逃さない
“向き合う”と“寄り添う”という姿勢はまるで武道のようにダイナミックに変化します。ひとつの姿勢に固まらず、相手の様子に対応して柔軟であることを心がけてください。とくに小学校高学年の場合は自我に目覚める時期です。親のやさしいまなざしが必要な場面はたくさん出てくるでしょう。相手の情報をより多く受信するには向き合う姿勢が好適です。そして子供が出す微かなサインに気づいたら、スっと相手のそばに寄り添って「私がついているよ」とテレパシーを送るつもりになってみてはいかがでしょう。次回は「不合格だった場合の心のケア」について解説します。
これまでの記事はこちら『中学受験との向き合い方』
※記事の内容は執筆時点のものです
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