連載 親子で疲弊しない「ノビノビ中学受験」

理科・社会の取り組み方 ―― 親子で疲弊しない「ノビノビ中学受験」

専門家・プロ
2019年10月11日 やまかわ

中学受験と聞くと、難関校を目指す受験がどうしてもイメージされます。しかし、そうではない、あるいはそのやり方に疑問をもつご家庭は少なくないでしょう。この連載では、『ゆる中学受験 ハッピーな合格を親子で目指す』の著者である亀山卓郎先生に、親子で疲弊しない中学受験をテーマにさまざまなお話を伺います。

前回は、「国語の取り組み方と復習の方法」について解説しました。今回は理科・社会の取り組み方について解説します。

理科・社会は、暗記科目ではない

私は「理科・社会は暗記科目ではない」と考えています。理由と理屈さえ分かっていれば、知識が自然と頭に入るはずだからです。理屈を抜きにして「覚えよう覚えよう」とすると、記憶に定着するのに手間がかかり、忘れやすくなります。大事なのは、頭に入れておきたい重要事項に「情報のタグ」をたくさんつけること。「日本三大急流」を例に、情報にタグをつけることについて解説します。

語呂合わせに頼らない

日本三大急流は、「富士川・球磨(くま)川・最上(もがみ)川」の3つです。私が生徒たちに日本三大急流を教えるときは、「急流」について解説するところから始めます。それから「富士川の河口あたりに新幹線が通っている」、「球磨川は熊本県にあって、同じ‟くま”と読むけど球磨と熊では漢字が違う」など、各急流に関する豆知識を伝えながら、写真や地図を使って授業をおこないます。

おすすめできないのは、語呂合わせだけを覚えて勉強を終わりにすることです。たとえば、日本三大急流の有名な語呂合わせに、「ふじみのくまさんもがいてる」というものがあります。

しかし、この語呂合わせを覚えるだけでは、 「ムキムキの熊さんがもがいているイメージ」だけが印象強く記憶に残るでしょう。そのため、急流の正しい名称や漢字、地図上の詳しい位置を答えさせる問題が出たりしたときに、パッと答えるのが難しくなります。どうしても覚えられなかったら、語呂合わせに頼ってもよいとは思います。しかし、最初から語呂合わせで覚えてしまうと、記憶の定着としてはもろいのです。

知識にたくさんのタグをつける

理科と社会の知識を覚えるうえで大切なのは、ひとつの知識に対していろいろな情報を絡めて、セットでアタマに入れることです。「タグづけ」の作業ですね。ちなみに、関連知識を絡めて覚えるだけでなく、授業で先生が説明していたときにこんな音が鳴っていたとか、こんな絵を見せてくれたとか、そういった些細なことと紐づけて覚えるのもよいでしょう。

暗記が苦手な子は、覚える知識に関連した情報を伝えると、「そんなにいっぱい言わないで! 忘れちゃうから!」と言うことが多いです。ひとつの情報にたくさんのタグがつくと、「忘れてしまいそう……」と思ってしまうんですね。しかし、頭に入れる知識は多くなるものの、関連した情報を覚えるほうが、長い目で見ると記憶には効率的です。一方で、ひとつの知識にひとつの情報しかリンクさせていないと、実際の試験で答えるべき内容を鮮明に思い出せず、不正解になることも多いのです。

たとえば「ふじみのくまさんもがいてる」という語呂合わせは思い出せても、「富士川だったっけ? それとも富士見川? なんていう川の名前だったかな……」と悩んでしまう子もいます。しかし「日本三大急流」を覚えるときに、「富士川の河口あたりには新幹線が通っていること」も一緒に覚えていれば、イメージとともに「富士川」にたどり着くことができます。知識を思い出す‟手掛かり”を増やすために、関連知識も一緒に覚えることが大切です。

「タグづけ」のチャンスは、日常のなかにたくさんある

知識を定着させるには、日ごろの生活のなかで、関連する知識をつなぎ合わせてあげることが必要です。社会の範囲である「お米の産地」を学ぶときには、実際にスーパーに行って「あきたこまち」「コシヒカリ」といったお米の銘柄を見てみることが効果的ですし、「和歌山産」と書かれたミカンのラベルを見たときに、「和歌山は日本でも有数のミカンの産地なんだよ」といったことを子どもに伝えてあげることもできます。

理科も同じです。冬に玄関のカギを開けると静電気が走ったり、月の満ち欠けが一日ごとに違ったりと、日常で見かける‟不思議”はたくさんあります。こういった日常的な経験を、勉強の知識とつなげていけるといいでしょう。

しかし、子どもによっては「勉強させるぞ!」という親御さんの姿勢が見えると、「勉強したくない」と反抗してしまうことがあります。ポイントは「教えてあげる」という姿勢ではなく、「一緒に楽しむ」といった姿勢を大事にすること。そして子ども自ら疑問を持つように促してあげることです。

たとえば親子でスーパーで買い物しているときに、「国産の鶏肉をとってきてくれる?」と子どもに頼んでみるのもいいですね。「比内地鶏とやまがた地鶏があるけど、どっちがいいの?」と子どもが疑問をもてば、そこから会話を始められます。子どもは、授業やテストなどで「これ、お母さんがこの前話していたことだ!」と思い出すことがあると、「勉強は楽しいもの」と思えるようにもなります。

理科・社会の勉強のポイント

理科と社会は、覚えるべき範囲が細かくカテゴリーに分けられています。そこで、理科と社会を勉強するときは、「もぐらたたき」をイメージするのがおすすめです。「もぐらたたき」のもぐらを叩くように、一つひとつのカテゴリーを丁寧に攻略していくんですね。すると、点数が安定してとれるようになります。

また中学入試では、全科目で6~7割の点数をとれれば合格ラインに達することが多いので、「理社は絶対に100点をとる!」というようにストイックになる必要はありません。そもそも、理科と社会は、知らないことが出題されたらまったく点数が取れない科目でもあります。手を広げ過ぎるよりも、たとえば理科と社会の模試を受けて、点数が取れなかった単元がはっきりしたら、まずはその単元を勉強し直して「知識の穴」を埋めることを優先させましょう。とくに理科と社会に苦手意識がある子は、焦らず少しずつ知識を増やしていき、理解した範囲を増やしていけば大丈夫です。

知的好奇心を大切にし、やがて「線」になる知識を増やす

私が願うのは知的好奇心を忘れず、知らないことに触れるたびにキラキラと瞳を輝かせる子がたくさん育つこと。そして、知的好奇心をもって「点」となる知識を増やしていけば、いつか点と点が「線」となってつながります。それは大人になっても忘れない‟大切な財産”になります。

とくに理科と社会に関しては、親子で知識を増やすチャンスが日常にたくさん転がっています。関連する知識を紐付けて覚えていきながら、楽しく学習を進めていきましょう。


これまでの記事はこちら『親子で疲弊しない「ノビノビ中学受験」

※記事の内容は執筆時点のものです

亀山卓郎
亀山卓郎 専門家・プロ

かめやま たくろう|明治学院高等学校、成城大学卒業。大手塾・個人塾などで教務経験を積んだ後、2007年に転居のため千葉県及び江戸川区の塾を閉鎖し、台東区上野桜木で「進学個別桜学舎」をスタート。首都圏模試の偏差値で60を切る学校への指導を専門に「親子で疲弊しないノビノビ受験」を提唱している。TJK東京私塾協同組合理事、第一薬科大学付属高校上野桜木学習センター長。著書「ゆる中学受験 ハッピーな合格を親子で目指す」(現代書林)

この記事の著者

編集・ライター。学生時代から都内で6年間塾講師を務める。塾講師時代は、おもに作文・国語・英語の科目を担当。小学生から中学生までの指導にあたる。現在は編集・ライターとして教育関連をはじめ、街歩き・グルメ記事の執筆取材をおこなう。

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