偏差値の見方1 とらわれない覚悟を持とう|親子のための、「探究」する中学受験
日本の受験シーンに欠かせないキーワード「偏差値」。模試の結果を見るとき、志望校を決めるとき、多くの人が指標としている数値です。しかし、偏差値に注目しすぎることはリスクをともなうと矢萩先生は警鐘を鳴らします。今回は偏差値の見方について、矢萩先生にうかがいました。
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偏差値偏重の価値観の外に出よう
偏差値とは、あるテストを受けた集団の中で自分がどれくらいの位置にいるかを表す数値です。50を基準として、平均からどれくらい差があるかを示しています。自分の得点が平均点と同じなら、偏差値は50になるということです。
偏差値は点数や順位に左右されずに、ある集団の中での自分の学力の位置を知ることができるのがメリットです。しかし、その集団の人数が少ない場合は利用価値が低くなります。また、同じ集団が受けたテストの結果を比較するには利用できますが、異なる集団間では直接比べることはできません。
こうした偏差値の特性をふまえたうえで中学受験界をみてみましょう。中学の入試問題は多様化が進んでいます。共通のテストであればこそ利用価値が出る偏差値は、年々その信憑性を下げているという状況だと思います。思考力入試などが増加し、多種多様な評価基準が生まれています。ひとつの偏差値がいろいろな学校に合うはずがないのです。模擬テストひとつとっても、たとえば主催者Aの模擬テストと、主催者Bの模擬テストでは同じ学校でも偏差値が20くらい違ってくるということもめずらしくありません。また、同じ生徒が受験しても模擬テストによって偏差値は大きく変わってきます。
現状、多くの模擬テストは私立の難関校を基準にした出題傾向にあるといえます。偏差値も難関校に特化した偏差値となってくるわけです。基準となっている難関校以外の学校を志望している場合、偏差値が指標として役に立たない可能性があります。これからは受験校によって模擬テストを変えるということが、今まで以上に意味を持つと思います。
中学入試の多様化、模試での偏差値が示すもの、それらを考えると、ひとつの偏差値に注目して、わが子の学力を決めつけることのリスクがみえてきませんか? 偏差値偏重の価値観からまず脱却すること。それが親の視点として必要なことだと思います。
探究型の視点でみた偏差値
探究型の学びとは、ひと言でいえば子どもの個性・興味・関心などを軸に学習を進めることです。その観点でみれば、偏差値は個性・興味・関心とは関係のないものです。
基本的学習能力――いわゆる計算や漢字だとかの正答率などを見るためには、偏差値が役立つこともあります。しかし、あくまでひとつの数値です。その子の成長度合いや学習の理解度、合否の確率などなどすべてを表せるような数字ではありません。人と比べるのではなく個の力を伸ばすという教育の潮流のなかで、偏差値は明らかに人と比べるための数字ですから、子どもの成長、教育というシーンで健全な数字ではないなと感じてしまいますね。
ですから、偏差値の上下で一喜一憂するのは本当にナンセンスです。その偏差値が、その子にとってどんな意味を持つかを考えましょう。どこを目指した場合の、どんな集団の中の数値なのか。冷静にみるべきですし、気にしなくていいことだってたくさんあるはずです。中学受験をよき体験にするためには、偏差値にとらわれない覚悟が親子ともに必須だと思います。
これまでの記事はこちら『親子のための、「探究」する中学受験』
※記事の内容は執筆時点のものです
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