連載 しあわせな中学受験

教育改革のKW「思考力・判断力・表現力」「主体的に学ぶ態度」は、子どもたちに必要不可欠な力|しあわせな中学受験にするために知っておきたいこと

専門家・プロ
2019年11月01日 中曽根陽子

2020年度から大学入試が変わり、小中高の学習指導要領も順次改訂されます。そのキーワードとしてよく見かけるのが「思考力・判断力・表現力」という言葉です。中学受験でも思考力入試と呼ばれる新型入試が増えています。なぜ今この力が求められているのでしょう。今回は、私立中学校で行われている事例を紹介しながら、その理由を読み解きます。

学力の3要素

AIの進化で、今後10~20年で今ある仕事の半数が自動化されるといわれるように、子どもたちは親世代が経験したことがないような急激な変化と、さまざまな課題に直面することになりそうです。そんな時代を生きる子どもたちは、これまで以上に自分で未来を切り開く力が必要になります。

そこで、今教育が大きく変わろうとしています。来年から実施される学習指導要領では、これから学校で育みたい学力の要素として、次の3つを掲げています。

1)基礎的な知識や技能を身につけること
2)それらを活用して課題を解決するために必要な力、思考力・判断力・表現力を育むこと
3)主体的に学習に取り組む態度を養うこと

これまで学力というと知識や技能を指し、それを身につけるための教育が主流でした。しかし、もはやそれはAIにはかないません。人にできるのは、その知識を活かして新しいことやものを創り出すことです。新しい価値を創り出していくためには、誰かの指示を待つのではなく、自ら考えて動く必要があります。そこで、子どもたちがこれから生きていくための土台づくりとして、思考力・判断力・表現力、そして自分からやってみようという意欲を育むために、教育が変わろうとしているのです

私立中学ではすでに新しい教育が行われている

実は私立中学では、すでに数年前からこうした動きを見据えて、新しい教育へシフトする学校が出始めています。例えば、かえつ有明中学では、物事を多面的に考える能力を養うことを目的に、サイエンス科という授業を10年以上続けています。同校では中1から、ブレインストーミングやマンダラートなど、企業でも用いられるような手法を取り入れた授業を行っています。

思考のスキルを獲得したうえで、商品開発に取り組み、自分たちのプランを企業に提案したり、自ら課題を設定して探究に励んだりしています。その過程で、テーマに沿って専門家にアポイントメントをとり取材に行く、現場を見学するなど学校内外で情報を集めているのです。

自らの力でプロジェクトを進めていく――こうした、プロジェクトベースドラーニング(PBL)という学びのスタイルを取り入れる学校は、これからますます増えていくでしょう。

中学入試が大学入試改革を先取り、思考力を問う問題が増加

こうした流れのなかで、中学受験でも思考力や表現力を問う出題が増えています。今まで麻布や武蔵、栄光学園、フェリスなど、一部の難関校で見られましたが、最近は中堅の難易度の私立中にもそうした力が問われる問題が出題されるようになっています。今後もその傾向は続くといわれています。

また、もうひとつの傾向として、私立中学の入試で公立中高一貫校の適性検査問題と共通する、「適性検査型入試」「総合型入試」「記述・論述型入試」「思考力入試」「自己アピール(プレゼンテーション型)入試」といった、いわゆる「新タイプ入試」を取り入れる学校が増えていることが挙げられます。2018年は、こうした新型入試を実施した学校が、前年の120校から136校に増加しました。こうした入試で問われる力は、まさに今後大学入試で求められる力と同じであり、中学入試は大学入試を先取りしているともいわれています。

中学入試でも思考力・判断力・表現力が問われている。こういわれると「受験で求められるから身につけなくては……」と考える方は少なくありません。しかし、受験に必要な力ではなく、子どもたちが生きていくうえで必要な力です。学校教育や入試で問われる力が、社会で生きていくために必要な力を育むものになってきたと考えた方がよいでしょう。なんのために勉強をするのかという疑問にも、答えやすくなったといえるのではないでしょうか。


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中曽根陽子
この記事の著者
中曽根陽子 専門家・プロ

教育ジャーナリスト。小学館を出産のため退職後、「お母さんと子供達の笑顔のために」をコンセプトに数多くの本をプロデュース。子育て中の女性の視点を捉えた企画に定評がある。教育雑誌から経済誌、紙媒体からWeb連載まで幅広く執筆。中学受験に関しては「受験を親子の成長の機会に」という願いを込めて『1歩先行く中学受験 成功したいなら「失敗力」を育てなさい』『後悔しない中学受験』(共に晶文社)『子どもがバケる学校を探せ』(ダイヤモンド社)などを執筆。教育現場への豊富な取材や海外の教育視察を元に、講演活動やワークショップもおこなっており、母親自身が新しい時代をデザインする力を育てる学びの場「Mother Quest 」も主宰している。

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