連載 しあわせな中学受験

やる気がでないときは、「そもそもなぜ中学受験をするのか」に立ち返るときかも|しあわせな中学受験にするために知っておきたいこと

専門家・プロ
2019年9月30日 中曽根陽子

「うちの子ちっともやる気がなくて、どうしたらいいでしょうか……」そんな質問を受けることが度々あります。そんなとき、皆さんだったらどうしますか? やる気が出ない原因はさまざまで、以前お伝えしたようにお子さんに疲れが溜まっているという場合もあるでしょうし、わからないところがあるのかもしれません。

まずはお子さんの様子をよく観察してほしいのですが、いろいろ手を打っても変わらない場合、目的が曖昧だからというケースもよくあります。「なんのために勉強をするのか」がはっきりしなければ、やる気が出てこないのは当然かもしれません。

とりあえず始めた中学受験。ゴールイメージがぶれて迷走

あるご家庭のケースです。そのご家庭では中学受験なんて考えていなかったけれど、ふと気づいたら周りの友達はみんな塾に通い出していて、4年生の2学期になって中学受験について考え出したそうです。

子どもも、学校で友達が話す塾の話題についていけずに困っていました。ママが「塾を見学しに行ってみる?」と誘うと、子どもは「行く!」と即答。塾の先生の授業はおもしろいし、友達も通っていたので、その塾に通うことになりました。

最初は楽しそうに通っていたお子さん。しかし、途中から入塾したのでわからないことも多く、追いつくためにやらなければならないことがたくさんある状態でした。勉強が大変になり、徐々に興味も失われていきました。

その様子に、たくさんの知識を覚えなければならない私立中学受験対策の勉強に疑問を持ちはじめたお母さん。ちょうど学校見学で訪れた公立中高一貫校に一目惚れしたこともあり、適性検査型の勉強をした方がいいのではないかと思いはじめました。

娘さんにも学校を見せて納得のうえ、5年生の冬期講習から公立中高一貫校対策の塾に転塾します。しかし適性検査型の問題に慣れるのも一苦労です。成績が思ったほど伸びないまま半年が過ぎた頃、近所の公立中学の見学に行ったお子さんは「地元の中学でもいいかな」と言い出しました。

お母さんは、「ここまで頑張ってきたのだから受検だけでもしたら」という思いと「子どもの意思を尊重して、さっさと高校受験に切り替えたほうがいいのではないか」という思いの間で揺れ動きました。

子どもは親が思うほど、自分事になっていない?

さて、みなさんだったらこの場合、どうしますか? 「せっかくここまでやってきたのだから受検はして、だめだったら地元の中学にいけばいい」と子どもを説得するという人が多いかもしれません。しかし、「とりあえず受けてみる」という気持ちでは、なかなか本番までを乗り切ることはできませんし、結果がどうあれ、それで達成感を得られるかは疑問です。

中学受験の場合、子ども自身に明確な動機があって取り組んでいるのでなければ、ほとんどの子どもは親からいわれて塾に通い、勉強しているうちに、だんだん自分事になっていくのです。

冷静に考えてみれば、自分で決めた訳でもないのに、子どもはよく頑張っています。一方親は、数字がでてくるようになると、目先の成績に一喜一憂するようになっていきます。成績が伸びて親が喜べば、子どももやる気が出て頑張れる。けれども、そうでなければなかなかモチベーションも持続せず、親はその様子をみてイライラし、子どもはさらにやる気をなくすという悪循環に陥ります。その結果、親子のバトルになることも珍しくありません。

うまくいかないときほど冷静に振り返る

うまくいかなくなったときには、なぜそうなっているのかを冷静に振り返って原因を探ることが大切です。でも、さまざまな対処で解決しない場合は、「そもそもなんのために中学受験をするのか?」というところに戻り、親子一緒に考える必要があります。

前述のご家庭のケースでは、大詰めの時期に「受験するかしないか」という選択をすることになりました。このときに初めて「今どんな問題があるのか?」、「そもそもなんのために受験をするのか?」という話をお子さんとしたのです。

その結果、お子さんは周りの友達に「そんな偏差値だと合格は無理じゃない?」と言われて、やる気がなくなったことがわかりました。でも、「今続けている習い事を、中学に入ってからも続けたい」という気持ちが強く、「高校受験を選択した場合、中学で習い事を続けられるのか不安があった」ということもわかりました。だから「地元の中学でいいかな……」といいつつ、中学受験を完全に否定することもできなかったのです。しかも「適性検査型の問題より、私立中学の教科型の勉強のほうがやりやすいと思っていた」ということもわかったのです。これにはお母さんもびっくりしました。

親子で話し合った結果、習い事に集中できる環境を得ることを中学受験の目的に、「今は受験勉強を第一優先にして、ここからやれるだけのことをやる」とお子さんとともに約束したそうです。

お母さんは、今の実力で合格可能性のある学校のなかからお子さんに合いそうな受験校を選び直して、問題を分析して対策を立てることにしました。目標が定まった結果、途中で諦めてしまいがちだったお子さんが、「思うような成績がとれないと悔しい」という気持ちを持つようになり、これまで以上に勉強に集中するようになって、成績も徐々に上がってきたそうです。

お母さんは、「自分自身が教育方針をしっかりと持てなかったために、子どもを振り回してしまった。でも、こういった子どもの成長をみられただけでも中学受験に取り組んでよかったと思える。だから、結果はどうあれ後悔はない。でも、もっと早くちゃんと子どもと話せばよかった」と話してくれました。

なぜ中学受験をしたいのか、原点に立ち返ることで見えてくることがある

このお母さんのように、「なんのために中学受験をするのか」を十分に考えないまま、取り組んでいるケースは意外と多いのではないでしょうか?

受験の準備をする間は、いろいろなことが起こります。うまくいかないことが起きたとき、それを乗り越えるためには、「そもそもなぜ受験をするのか」というところに立ち返ってみることも必要です。なぜなら、それが出発点でもあり、遠回りのようで一番の解決策になるからです。

みなさんは、なぜ中学受験をしようと思いましたか? どんなゴールをイメージしていますか? そして、そのゴールに向かってどんなやり方をしますか? お子さんがやる気がでないとき、やみくもに「勉強しなさい」と声を張り上げるのではなく、「そもそも」に立ち返ってみてはどうでしょうか。


これまでの記事はこちら『しあわせな中学受験にするために知っておきたいこと

※記事の内容は執筆時点のものです

中曽根陽子
この記事の著者
中曽根陽子 専門家・プロ

教育ジャーナリスト。小学館を出産のため退職後、「お母さんと子供達の笑顔のために」をコンセプトに数多くの本をプロデュース。子育て中の女性の視点を捉えた企画に定評がある。教育雑誌から経済誌、紙媒体からWeb連載まで幅広く執筆。中学受験に関しては「受験を親子の成長の機会に」という願いを込めて『1歩先行く中学受験 成功したいなら「失敗力」を育てなさい』『後悔しない中学受験』(共に晶文社)『子どもがバケる学校を探せ』(ダイヤモンド社)などを執筆。教育現場への豊富な取材や海外の教育視察を元に、講演活動やワークショップもおこなっており、母親自身が新しい時代をデザインする力を育てる学びの場「Mother Quest 」も主宰している。

1歩先行く中学受験 成功したいなら「失敗力」を育てなさい

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