連載 親子で疲弊しない「ノビノビ中学受験」

転塾を考えている親御さんへ ―― 親子で疲弊しない「ノビノビ中学受験」

専門家・プロ
2020年1月07日 やまかわ

中学受験と聞くと、難関校を目指す受験がどうしてもイメージされます。しかし、そうではない、あるいはそのやり方に疑問をもつご家庭は少なくないでしょう。この連載では、『ゆる中学受験 ハッピーな合格を親子で目指す』の著者である亀山卓郎先生に、親子で疲弊しない中学受験をテーマにさまざまなお話を伺います。

2月で6年生たちが受験を終えると、4年生は5年生コースに、5年生は6年生コースに上がり、塾側も新年度に向けて新しい受験態勢に入ります。その直前である1月は、転塾を考える親御さんが多い時期。今回は、転塾を検討するときに考えたいことについて解説します。

転塾するべきか迷ったときの判断軸

転塾を考えるきっかけとして多いのが「塾との相性」です。これは子どもと塾だけでなく、親御さんと塾との関係性も含まれます。親子それぞれと塾との関係性をふまえて、転塾させるべきか否かの判断をする必要があります。

子どもと塾との関係性から転塾を考える

転塾の理由の多くは、「子どもが塾の授業についていけない」というケース。授業についていけず、塾内のテストでは点数が取れずにクラスが下がり、親に怒られる……そんな循環から抜け出せないのです。

うちの子は頭が悪いから、やる気が出ないからという理由で、受験自体を断念してしまう家庭もあります。しかし、そんなときは塾を変えることを一度検討してみてほしいです。情報量の多い授業や厳しいカリキュラムをこなさなくとも、ゆったりとした塾でノビノビと中学受験をすることもできるのです。

親と塾との関係性から転塾を考える

ほかの保護者と接して、受験に対する意識に温度差を感じたり、遊びや習い事などを我慢して授業に参加しているわが子を見て「この子にとってこれが本当によいことなのかな……」と悩んだりする親御さんもいます。また、塾の先生との面談の際に「この先生はうちの子どもをちゃんと見てくれているのかな……」と思うこともあるでしょう。

たしかに、子どもと塾との関係性を踏まえて転塾を検討することは大切なこと。しかし、親自身が今の塾に納得しているのか、どのような部分に不満を感じているのかを考えることも、同じくらい大事なことです。満足していること以上に気がかりな点が多いときは、転塾を考えてもよいでしょう。

転塾前のクセは早めに拭う

塾によって、方針や教え方が異なります。塾との相性が悪いと感じたのであれば、退塾して新たな塾を探すのもひとつの手です。しかし、その前に注意してほしいことがあります。前の塾で身についたクセが、学習に影響をおよぼしてしまうことがあるのです。転塾前の考え方や習慣などを拭い去らないと、中途半端な気持ちで授業を受けることになり、思うように成績が伸びないことがあります。ここからは、はやめに取り除いておいたほうがいいクセを2つ紹介します。

前の塾で身についた敗北感や劣等感

6年生で転塾する子は、前の塾で強い敗北感や劣等感を感じていることが多いものです。不機嫌な態度で授業に臨んでくる場合もあります。たとえば「こんなの前の塾で習った」「なんでこんな塾に来なくちゃいけないの」というように、塾の先生と正面から向き合うことがなかなかできないのです。こうした敗北感・劣等感を拭いきれるかどうかは、塾の先生の力量によるところが大きいです。「受験」という壁に思い切りぶつかっていくためにも、先生は子どもにこびりついたプライドを取り除かなくてはなりません。

「前の塾では上手くいかなかった。だけど自分はこの塾でもう一度頑張るんだ!」という想いにさせることができれば、今まで以上に前向きな学習態度に変わっていくものです。この役割を先生に代わって親御さんがやろうとすると、子どもは強いプレッシャーや、家庭内での居心地の悪さを感じてしまいます。子どもに染みついた「ネガティブな感情」を拭うために親ができることは、わが子に正面からぶつかってくれる先生がいる塾を探すことです。

成績を上げるためのシステムを信じすぎない

前の塾ではわが子の成績が思うように上がらなかった、という思いを抱く親御さんもいます。そのような方は焦りがあるためか、「なんでこれができないの!」「こっちの塾でもわからないの!」という怒りを子どもにぶつけがちです。

また、成績を上げるための塾のシステム(カリキュラムなど)にわが子を乗せれば必ず成績はアップするはずだ……と思っている親御さんも少なくありません。たとえば「どの問題をどういうふうに対策したら偏差値が5以上伸びるんでしょうか?」「以前通っていた塾では子どもが苦手な単元の○○をもう扱わないから、ここの塾で徹底的にたたき込んでください!」というような考え方ですね。

もちろん、そうしたシステムに乗って勉強を続けて成績が伸び、難関校に合格できる子もいます。しかし、全員が全員そうなるわけではないのです。親御さんにはまず、成績を上げることではなく、いかにしてやる気を起こさせるのかを意識してほしいですね。それと同時に、いかに自信を取り戻させ、前向きな気持ちを持たせるのかを意識することも大事です。

新たな塾で納得のいく勉強をするために

「授業についていけない」「先生が信用できない」など、子どもが心に傷を負っている場合は多いものです。新しい塾で納得のいく勉強をするためには、そうしたネガティブな要因の少ない塾を探さなくてはいけません。そこで次回は「塾選び」についてお話します。塾選びで重要なのは、やはり信頼できる先生に出会えるかどうか。よい先生とはどんな先生なのかということや、体験授業や保護者面談で気にしておくべきポイントについても解説します。


これまでの記事はこちら『親子で疲弊しない「ノビノビ中学受験」

※記事の内容は執筆時点のものです

亀山卓郎
亀山卓郎 専門家・プロ

かめやま たくろう|明治学院高等学校、成城大学卒業。大手塾・個人塾などで教務経験を積んだ後、2007年に転居のため千葉県及び江戸川区の塾を閉鎖し、台東区上野桜木で「進学個別桜学舎」をスタート。首都圏模試の偏差値で60を切る学校への指導を専門に「親子で疲弊しないノビノビ受験」を提唱している。TJK東京私塾協同組合理事、第一薬科大学付属高校上野桜木学習センター長。著書「ゆる中学受験 ハッピーな合格を親子で目指す」(現代書林)

この記事の著者

編集・ライター。学生時代から都内で6年間塾講師を務める。塾講師時代は、おもに作文・国語・英語の科目を担当。小学生から中学生までの指導にあたる。現在は編集・ライターとして教育関連をはじめ、街歩き・グルメ記事の執筆取材をおこなう。

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