連載 しあわせな中学受験

入試本番前の過ごし方 トラブルも前向きに捉えて乗り越えよう|しあわせな中学受験にするために知っておきたいこと

専門家・プロ
2020年1月27日 中曽根陽子

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入試本番直前ともなると親の緊張感が高まってくると思います。体調管理から精神面でのケアまで、いろいろ気になりますよね。万全を期したつもりでも起こるトラブル。よその家庭ではそのときどうしているのでしょうか? お子さんの中学受験を経験した先輩ママのエピソードをもとに、その時期をどう過ごしたらいいかを考えます。

1月入試の結果が不合格。親の心は不安でも振る舞いは明るく

入試本番前までカウントダウンの日々。子どもたちは、毎日頑張っています。これまでは「子どもがなかなかやる気にならない」とイライラしていたお母さんも、「最近は顔つきも変わってきて、本当に頑張っている。でも、その様子を見ていると、今度はこんなに頑張っているのに、もし合格できなかったらどうしようと逆に不安になる」と言います。親心というのは本当に複雑です。

実際に中学受験を経験したAさんは、当時の心境を振り返って「塾の先生からは、いつも通りに過ごすようにと言われていました。でも、もし本命もダメだったらどうしようと心配になって、子どもに何と声をかけたらいいかわかりませんでした。私のほうが緊張していたんです」と話してくれました。実はAさんのお子さんは、1月に受けた学校が不合格。でも、子どもの前で心配を口にするわけにはいかないので、気持ちの切り替えをするのが大変だったそうです。

一方、塾の先生は「入試1週間前でも、子どもたちの様子は意外にいつもと変わりません。授業中の集中力は高まっていますが、不安というよりみんなで頑張ろう!という意気が高まっている感じです。お試し受験で失敗したとしても、『本番でなくてよかった』とあくまでもポジティブに捉えて声をかけてほしい」と言います。

直前期は親力が試されます。不安なときこそ、空を見上げて「なんとかなる!」と自分に言い聞かせて、子どもの前では明るく振舞いましょう。実際、口角をあげて上をみるだけで幸福度があがるという研究があります。ぜひやってみてください。

試験直前にインフルエンザに罹ってしまったけれど、その分過去問をする時間ができた

入試前は親御さんも、子どもの体調に気を使います。しかし、それでも体調を崩してしまうことはあります。Bさんのお子さんは、2月入試の2週間前にインフルエンザを発症してしまいました。「手洗いとうがいを欠かさず、栄養のあるご飯をつくり、予防接種もした。ぬかりはなかったはずなのに……」と落ち込んだそうです。

どんなに注意していても罹ってしまったら仕方がありません。幸いBさんのお子さんは、通院、投薬後に比較的早く熱が下がったといいます。出席停止でできた時間は、やり残した過去問を解きながら過ごしたそうです。結果、志望校に合格。「宿題に追われてなかなか過去問ができなかったけれど、インフルエンザで休んだ間に取り組めたことが、かえってよい結果につながったと思う」とBさん。「災い転じて福と成す」です。

このケースは入試までに2週間あったので幸いでしたが、もし試験前日に体調を崩したらさすがに慌てるでしょう。しかし、最近は即効性のある薬も出ていますから、慌てずにまずは病院へ行くことです。深呼吸をして冷静に対応を考えましょう。受験校によっては、相談すれば保健室での受験も対応してもらえます。そのときにできる親の最善を尽くすことです。

「やれるだけのことをやった」「気持ちが落ち着く」という状態をつくる

Cさんは「受験勉強で取り組んできた塾のプリント、ノート、テキストを全部積み上げて、過去の努力を可視化した」と言います。積み上げられた、“これまでの努力の高さ”は子どもの背を超えたそうです。Cさんは「子どもと一緒に『ほんとうに頑張った』事実を確認し合った」といいます。

わが子の成長を一番近くで見守ってきたのは親御さんです。自信を持って試験に臨むには、わが家流のやり方で「やれるだけのことをやった」と思える状態をつくること、「気持ちが落ち着く」状態をつくることです。そのための表現は言葉だけではなく、カタチ・モノでも表せます。

たとえば、塾の先生のメッセージが書かれた手ぬぐいや、最後にまとめたノート、合格鉛筆などのグッズ、お守りなどもそういったものでしょう。子どもにとって「これがあると安心する」という”宝物”がきっとあるはずです。試験前日、持ち物を用意する際は、子どもと一緒に受験票や文房具など必要なものを確認しながら、それらをカバンに入れてあげるといいですね。そのときに「これまでよく頑張ってきたね」と努力をねぎらい、「明日は頑張ろうね」と気合を入れすぎない程度に励ましてあげてください。

結果はどうあれ、ここまでやってきたことはすべて、お子さんのこれからを支える力になります。最後の最後まで諦めずに、お子さんと一緒に走り抜けてください。


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※記事の内容は執筆時点のものです

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