連載 しあわせな中学受験

中学受験と子どもの反抗期がぶつかる。そのときの対処法|しあわせな中学受験にするために知っておきたいこと

専門家・プロ
2020年1月28日 中曽根陽子

小学校高学年から中学生にかけては、第二次性徴期といわれ、子どもから大人へと大きく成長する時期です。成長が早い女子は小学校4年生くらいから、男子はそれより2年ほど遅れて変化があらわれ始めます。体と心のバランスが崩れ不安定になりがちな時期と、中学受験が重なることでストレスがたまり、ちょっとしたことから反抗的な態度をとるようになるケースも少なくありません。そんなとき、親はどうしたらいいのでしょう。

反抗的な娘の態度にイライラして、つい感情的に

あるお子さんのケースを見てみましょう。

A子ちゃんの反抗期は6年生から始まりました。事の発端は、それまで学校のクラスで仲の良かった友達から、急に仲間はずれにされるようになったこと。どうも、受験をしない子がグループをつくっているようです。最初は「気にしない」と言っていたA子ちゃんもだんだん辛くなってきたようで、急に赤ちゃん返りしてお母さんに甘えたり、妹にちょっかいを出して喧嘩になって叱られることが多くなっていきました。

反抗的な態度をとることが多くなってきたA子ちゃん。勉強にも身が入らず、それまで安定していた成績も下がってしまいました。そんなA子ちゃんに対して、「かわいそうだとは思ったけれど、娘の態度にイライラして、つい感情的になってしまった」とお母さん。親子バトルがヒートアップし、ギクシャクした親子関係は、受験が終わるまで続いたそうです。

女の子は男の子に比べて成長が早く、問題も複雑化しやすい

これは特に女の子に多いケースかと思います。女の子は成長が早いので、生理が始まっているお子さんもいるでしょう。すると余計に心身のバランスも不安定になりがちです。ただでさえ不安定な時期に受験のストレスが加わり、親子のバトルが悪化するというケースはよく聞きます。

一方男の子はもっと単純で、「遊べない」といっているのに、遊びに誘ってくる友達をどうやって追い払おうか……とか、塾に行ったはずが、サボって公園で遊んでいたのが発覚するとか。同じ受験期のトラブルでももう少し単純なことが多いです。

自分に余裕がなく、子どもの気持ちも受け止められなくて関係悪化

実際、私にも同じような経験がありました。友達関係でぐずぐずしている娘に、最初は励ましていたものの、少々げんなりして「友達はその子だけじゃないでしょう。ほかの子と遊べばいいじゃない」と言ってしまい、「ママはわかってくれない!」と、親子ゲンカになったのです。

今考えてみれば、学校では気丈に振る舞っていても実際は悲しかったのだろうし、甘えられるのは母親だけだったのです。今では、そんな子どもの気持ちもわかるのですが、当時は私にそれをおもんばかる余裕がなく、親子関係がギクシャクしていきました。

もし当時に戻ることができたら、私は娘の愚痴を「悲しかったんだね。いやだったんだね」と、ひたすら共感してくり返しながら聴くと思います。大人からすれば、「今だけの我慢だよ! それより、今は勉強に集中して!」と言いたい事でも、子どもには今がすべてだからです。

共感しながら聴く。それだけ子どもの心は安定

実は私は、その時の苦い経験からコーチングを勉強しました。そして、日常生活にとりいれることで、娘との関係はどんどん良くなっていきましたので、紹介しますね。

コーチングの基本的なスキルとして、①共感する ②承認する ③聴くというものがあります。子どもの話しを遮らず、最後まで聴くというのは、皆さんも案外できていないことかもしれません。

すぐにアドバイスしたくなる気持ちを抑えて、相手の話しを理解しようと思って聴いてください。そのときに役に立つのが、オウム返しです。例えば、お子さんが「○○といわれて嫌だった」と言ったら、「○○といわれて嫌だったんだね」とそのままくり返します。くり返されることで、まず子どもは受けとめてもらえたと感じて安心し、心が満たされます。

同時に、自分で自分の言葉を聴くことになるので、子ども自身が考え始めます。これをコーチング用語でオートクラインといいます。こちらはただ聴いているだけなのに、そのうちに自分で解決策を思いつき、解決してしまうなんていうことも結構あります。ぜひやってみてください。

ユーモアで返していたら、勉強するようになった息子

また、ユーモアも大事です。あるお母さんは、がんばっても、過去問で残り3問が解けなかった息子に「君の名前をこれから『あとたった3問の子』と呼ぼう。このままでも、もしかしたら手違いで受かるかもしれないけれど、どうせなら『最後までやりきる子』を目指さない?」と言ったそうです。それまで、なかなかやる気にならない様子にイライラして怒っていたけれど、ある日「怒っても成果が出ないなら、笑うしかない」という心境になったのだそうです。すると、不思議なことにお子さんも徐々に自分から勉強するようになったそうです。

合否がかかった受験、ただでさえストレスが溜まるのに、反抗期と重なったら、親も平常心でいるのはそう簡単ではないでしょう。でも、反抗期は永遠には続きません。「笑う角には、福きたる」辛い時こそユーモアを忘れずに乗り切ってください。

そのためには、親自身の心と体のケアも忘れずに。運動する、おいしいものを食べに行く、気のおけない友達とおしゃべりする、映画を観に行くなど、自分にあったストレス解消法を探して、心の余白を作りましょう。


これまでの記事はこちら『しあわせな中学受験にするために知っておきたいこと

※記事の内容は執筆時点のものです

中曽根陽子
この記事の著者
中曽根陽子 専門家・プロ

教育ジャーナリスト。小学館を出産のため退職後、「お母さんと子供達の笑顔のために」をコンセプトに数多くの本をプロデュース。子育て中の女性の視点を捉えた企画に定評がある。教育雑誌から経済誌、紙媒体からWeb連載まで幅広く執筆。中学受験に関しては「受験を親子の成長の機会に」という願いを込めて『1歩先行く中学受験 成功したいなら「失敗力」を育てなさい』『後悔しない中学受験』(共に晶文社)『子どもがバケる学校を探せ』(ダイヤモンド社)などを執筆。教育現場への豊富な取材や海外の教育視察を元に、講演活動やワークショップもおこなっており、母親自身が新しい時代をデザインする力を育てる学びの場「Mother Quest」も主宰している。近著は『成功する子は「やりたいこと」を見つけている 子どもの「探究力」の育て方』(青春出版社)

1歩先行く中学受験 成功したいなら「失敗力」を育てなさい 成功する子は「やりたいこと」を見つけている 子どもの「探究力」の育て方