連載 親子で疲弊しない「ノビノビ中学受験」

中学校生活をノビノビ過ごすために ―― 親子で疲弊しない「ノビノビ中学受験」

専門家・プロ
2020年2月08日 やまかわ

中学受験と聞くと、難関校を目指す受験がどうしてもイメージされます。しかし、そうではない、あるいはそのやり方に疑問をもつご家庭は少なくないでしょう。この連載では、『ゆる中学受験 ハッピーな合格を親子で目指す』の著者である亀山卓郎先生に、親子で疲弊しない中学受験をテーマにさまざまなお話を伺います。

受験が終わって一段落。どのような進路であっても、子どもたちは「中学校」という新たなステップを踏むことになります。

中学受験を経て大人に近づいていく子どもたちに、親はどのように接すればよいのでしょうか。そして、子どもたちは中学校でどのように勉強をすればよいのでしょうか。今回は、中学校生活をノビノビ過ごすために心がけておきたいことについてお伝えします。

受験を終えた子に、親ができること

受験を終えた子のなかには、第二志望や第三志望、あるいは公立中学に進学する子もいるでしょう。どんな進路を選択したとしても、中学受験を経験したお子さんに親御さんがかけてほしい言葉があります。

努力をねぎらう言葉が、子どもの自信に

子どもは、小学生までは常に親の表情を気にしながら生活しているものです。入試結果が出たあとに、親がどんな表情をしているか、どんな言葉をかけてくれるかも気にしています。そこで受験が終わった親御さんは、結果にかかわらず、ここまで頑張ってきたお子さんにねぎらいの言葉をかけてあげてください。「頑張ったね」「よくやったね」という言葉は、「これまでの努力は間違いではなかった」といった安心感や自信を、子どもの心のなかに芽生えさせます。

避けるべきなのは、「高校受験や大学受験でリベンジだね」「中高6年間はもっと勉強をがんばって、大学の指定校推薦を狙おうな」といった負けん気を促す言葉をかけることです。こうした言葉は、「ぼくは中学受験に失敗したんだな……」「わたしの勉強って意味なかったんだな……」といった劣等感を子どもに植えつけてしまいます。ちなみに、こうした劣等感を中学校に入ったあとも拭いきれずにいると、大学受験や就職活動にまで影響を及ぼすこともあります。

「負けん気」というのは、誰かに刺激されて湧いてくるものではありません。本人が自分のなかで「負けたくない!」と思うからこそ芽生えるものです。周りの人間がコントロールできるものではないのですね。

「中学校生活」に目を向けられる言葉を

中学受験を振り返って、「もっとこうすればよかったな」「あれをやっていたら、あの学校に受かっていたかもしれないな」というような思いは、子どもも感じているでしょう。もちろん、反省することは大切です。しかしそれ以上に大切なのは、これからの中学校生活に目を向けることです。

親御さんは、「これから新しい生活が始まるね」「中学生になったら何がしたい?」といった、お子さんがこれからの生活に目を向けられるような言葉を掛けてあげてほしいですね。受験が上手くいった子も、思うようにいかなかった子も、中学校生活がスタートするときは慣れないことの連続。そんなとき、お母さん、お父さんからの前向きな言葉が、子どもにとって何よりの心の支えになるのです。

受験を終えて様々な思いがあるかもしれません。ただ、そうした気持ちを一旦リセットして、未来に目を向けられるとよいですね。

中学生になった子とのかかわり方

中学生になれば、親と外出するのを恥ずかしく思ったりする子や、反抗期になる子も出てきます。では中学生になった子に、親はどのように接するべきなのでしょうか。

「最低限の基準」だけ示して、あとは子どもの自主性に任せる

子どもが中学生になると、小学生までの親子の距離感ではあまりうまくいきません。鬱陶しく思われてしまう、なんてこともあるでしょう。そのため中学生の親御さんは、ある程度“ドライ”に子どもと接してほしいと思います。特に勉強面では、「勉強しているの?」「もっと勉強しなさい」と言ってもあまり効果は出ないもの。逆効果になる場合もあります。

まずは、小学生のとき以上に「子ども自身の時間」を大切にしてあげてください。子どもが友達と遊びに行っても、YouTubeを見ていてもOK。勉強してないように見えてしまいますが、声をかけたくなるのはぐっとこらえ、子どもの様子を見守ることです。

ただ、もちろん中学校の勉強も大切です。中学校には中間試験や期末試験があり、私立中学の場合は内申点があまりにも低ければ進級できないこともあります。

そこで勉強に関しては、親として子どもに求める“最低限の水準”を伝えておきましょう。「学年の上の順位には入ってほしい」「内申点はオール4以上をできれば取ってほしい」というように、親としての希望は伝えておくんですね。

中学生だからこそ、子どもが得られる経験は多いもの。その大切な時期に、親からあれもこれも指示されると子どもの自主性も育ちません。一方で、勉強が大切である以上、親としてある意味“クギ”を刺しておくことは必要です。「テストで悪い点を取ったら、部活や習い事を続けることは難しいからね」といったことだけ伝えておくんですね。中学生は、多感な時期。親御さんも、子どもの勉強のバランスで苦労されると思います。ただ、ある程度ルールを決めつつ、あとは子どもを信じてあげましょう。親の手から自分は離れている、と子ども自身が感じられると、部活も勉強も、友達との遊びも含め、中学校生活をノビノビと送れるようになるものです。

「学力をキープする勉強」を心がける

勉強に関していうと、中学校で重要になってくるのが定期試験です。定期試験でよい成績をとるためには、どのような勉強が必要なのでしょうか。

コツコツ勉強する習慣を大切に

中学受験では「成績を上げる勉強」が必要でしたが、中学校の定期試験では「学力をキープするための勉強」が必要になります。気をつけたいのが、中学受験と同じように毎日ストイックに勉強してしまうこと。これだと子どもがパンクしてしまい、思うように成績が伸びなくなります。

大事なのは、頑張りすぎないこと。そして自分のペースを保ちつつ、途中でやめないことです。私の塾(桜学舎)に中学生になってからも通塾している子は、コツコツ勉強することが習慣になっているからか、学年の上位をキープしていることが多いですね。彼らは勉強だけでなく、部活や習い事、趣味も大切にしながら、週に1回ほど勉強しにやってきます。「週1回の勉強」は、一見すると何気ないことに見えます。しかしこれを継続すると、定期試験、またこの先の大学受験でも大きな力を発揮できるようになるのです。

ちなみに、私は「凡事徹底」という言葉が大好きです。当たり前のことを、当たり前にこなすという意味ですね。私の塾でも、中学受験を終えた子たちに「中学受験で身につけた勉強習慣を手放さないこと」を伝えています。

中学受験で上がった学力は、受験を経験していない子と比べると「アドバンテージ」ともいえます。しかし中学校でその学力を落としてしまうと、そこから高校受験、大学受験に向けた勉強をするときに、また1からのスタートになってしまいます。これは、とてももったいないことです。中学校は勉強以外にも大切なことがたくさんあるので、勉強だけに縛りつけるのは少し“やり過ぎ“。しかし週に1回は塾に通って、中学校の授業で学んだ知識を整理するなど、「学力をキープする」という心掛けをもっていると、ゆくゆくの大学受験、その先の社会人生活で飛躍するための基盤がつくれるでしょう。

時間と心に余裕をもちつつ、ノビノビとした中学校生活を

中学生になる子には、心と時間に余裕をもちつつ、いろいろなことを楽しむ姿勢をもってほしいですね。何かひとつのことだけ必死に取り組むのも大切なことですが、どこかで“ガス欠”を起こしてしまわないか心配になります。勉強も同じ。中学、高校と満足のいく成績を残すためには、勉強漬けの毎日を送るのではなく、気持ちや時間にある程度の余力を残しつつ勉強することが大切です。

そして机に向かう以外にも、知識を学んだり、何かに取り組む姿勢を身につけたりする機会はたくさんあります。読書をしたり、友達同士でいつもより少しだけ遠出してみたりするのもよいですね。ノビノビと過ごせる中学校時代の日々を、充実したものにしてほしいと思います。


これまでの記事はこちら『親子で疲弊しない「ノビノビ中学受験」

※記事の内容は執筆時点のものです

亀山卓郎
亀山卓郎 専門家・プロ

かめやま たくろう|明治学院高等学校、成城大学卒業。大手塾・個人塾などで教務経験を積んだ後、2007年に転居のため千葉県及び江戸川区の塾を閉鎖し、台東区上野桜木で「進学個別桜学舎」をスタート。首都圏模試の偏差値で60を切る学校への指導を専門に「親子で疲弊しないノビノビ受験」を提唱している。TJK東京私塾協同組合理事、第一薬科大学付属高校上野桜木学習センター長。著書「ゆる中学受験 ハッピーな合格を親子で目指す」(現代書林)

この記事の著者

編集・ライター。学生時代から都内で6年間塾講師を務める。塾講師時代は、おもに作文・国語・英語の科目を担当。小学生から中学生までの指導にあたる。現在は編集・ライターとして教育関連をはじめ、街歩き・グルメ記事の執筆取材をおこなう。

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