連載 合格する子どもの伸ばし方

【大学入試改革に必要な勉強】資料を読み取る力(分析力)|本物の力を育てる「合格する子どもの伸ばし方」

専門家・プロ
2020年7月15日 松本亘正

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子どものタイプによって、親の関わり方や言葉のかけ方を変えたほうがぐんと伸びる。子どもは、大きく4つのタイプに分けることができる ―― 中学受験専門塾 ジーニアス代表、松本亘正氏の著書『合格する子どものすごい伸ばし方』から、わが子のタイプを知り、子どもの力を伸ばす方法を紹介します。

大学入試改革では「資料を読み取る問題」が増えます。分析することの前に、書いてあることを正確に読めるかどうかで差がつきます。

中学受験生を指導していると、

「ここに書いてあるのに、なんで気づかなかったんだろう」

ということが、よくあります。書いてあるのに気づかないのは、大きなハンデになります。では、どうやって資料を読み取る力を身につければいいのでしょうか。

まず、「先取りしすぎることのデメリット」から説明します。

先取り学習より、正しく読み込むことが合否を分ける

一学年でも先のものを低学年のうちにやらせておきたいという親御さんがいます。

でも、安易な先取りは危険です。当塾にも、計算塾で中学受験の算数の解法を身につけて入塾する子がいます。もちろん優秀ですが、ぱっと問題を見て、ぱっと答えを言ってしまったり、○か×かに重きを置いてしまうことがあるのです。じつはそんなタイプの子ほど、資料の読み取りは苦手になりやすいのです。

なぜでしょうか。それは「反射的に答えを出すこと」と「資料を読み取る作業」は真逆の力だからです。データを読み取り、選択肢が正しいかどうかを読み込んでいく作業には、忍耐力が求められます。ところが、ぱっと答えを出すことに慣れていると、じっくり資料を読み取れずに答えを出してしまいがちなのです。

もし、じっくり資料を読み取るのが苦手なら、資料を読み取る問題や、文章を読んで解く問題に慣れさせるようにしましょう。

なかなか市販の教材でいいものがないので、私の塾では入試改革を踏まえて、資料の読み取り問題だけを集めた冊子を作っています。自宅学習するなら、小学校の準拠問題集に当たる「教科書ワーク」(社会科)がいいでしょう。

問題のポイントに、かならず印をつけさせよう

ここで、うまくいった子の例を紹介します。勉強意欲はあるし、知識も豊富。でも選択肢問題になると文章をしっかり読めずに失点したり、資料を読み取る問題はとても苦手。そんな、平均より少し上くらいの小学4年生の男の子がいました。

ガツガツ勉強する子で、よく「追加課題をください」と言ってきました。でも、先取りをするのは危ないかもしれないと思い、不得意な環境分野のデータを読み取る問題や、選択肢問題を中心に解いてもらうことにしました。

彼は喜んで取り組んだのですが、翌週になって、

「ぼく全然解けません。環境問題が苦手だから、違うプリントをもっとください」

と言ってきたのです。そこで、こう伝えました。

「環境問題の分野が苦手なんじゃなくて、きちんとグラフが読み取れていないんだよ。一つひとつ選択肢を確認したり、1位が何なのかを確認するクセをつけよう」

と伝えました。

その後、まず意識してもらったのは「かならず印をつけること」。

答えに直結するデータにはかならず○をつけさせ、「すべて選びなさい」といった、いつもと違う質問になっていたら、絶対に線を引くように伝えました。

これらを徹底するのは簡単なことではありません。でも、彼は素直だったので一生懸命守りました。そして、グラフの問題のときには、かならず印をつけるようになり、思わぬ失点が減っていったのです。結果、早大学院中学校に合格。

線を引いたり、印をつけるときに注意したいのは、大人があれこれ教えすぎないことです。大人はつい、「こんな条件にも線を引くんだよ」「こんなパターンなら○をつけるんだよ」と細かく指示したくなりがちです。

でも、ポイントをいくつも伝えると、ひとつもできなくなってしまうことも……。それより、「これなら絶対にできるだろう」ということをさせたほうが結果が出ます。試験や塾の宿題だけでなく、学校でもこれらのことを継続できる子は、資料の読み取りの質を格段に上げることができます。

イラスト hashigo(silas consulting)


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※記事の内容は執筆時点のものです

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