連載 合格する子どもの伸ばし方

【大学入試改革に必要な勉強】書く力|本物の力を育てる「合格する子どもの伸ばし方」

専門家・プロ
2020年7月16日 松本亘正

子どものタイプによって、親の関わり方や言葉のかけ方を変えたほうがぐんと伸びる。子どもは、大きく4つのタイプに分けることができる ―― 中学受験専門塾 ジーニアス代表、松本亘正氏の著書『合格する子どものすごい伸ばし方』から、わが子のタイプを知り、子どもの力を伸ばす方法を紹介します。

じつは、国公立大学を目指す高校生にとって、書く力はもともと求められていました。東京大学や京都大学の入試問題はもちろん、大阪大学も記述中心です。

たとえば、大阪大学の日本史の入試問題は、200字で記述させる問題が4問だけ。地理の入試問題は150字が4問、200字が2問の計6問だけ。一問一答や選択式の問題はひとつもありません。医学部入試であれば小論文が課されますし、書く力の重要性は、いまにはじまったことではありません。

ただ、2020年度の段階では、センター試験に相当する「大学入学共通テスト」でも「書く問題」が出題されるようになるので、注目されているのです。

書く力が本当に求められるのは2024年度から

国公立大学や医学部を目指す人にとっては、とくに新たな対策は必要ありません。

「書く力」を伸ばすためには、豊富な語彙力が求められます。ところが、2020年度の大学入試改革では、まだ語彙力はそれほど求められていないのです。

大学入学共通テストは、あくまでも資料を読み、指定された条件を踏まえて書く記述問題です。ですから、自分の自由な発想は求められていませんし、高度な語彙も必要ありません。資料や本文の言葉を使いながら答えればよいわけです。

そうは言っても、私大でも記述、論述問題は出題されるようになってきていますから、自分の言葉で説明する力は、さらに求められるでしょう。

書く力がいよいよ試されるのは2024年度です。高校1年生から新学習指導要領実施で学んだ受験生が挑むこの年から、国語や数学以外にも記述式問題が導入される予定ですから、本格的に「書く力」が求められていくでしょう。

対策は、まず言葉を覚えることからはじめましょう。それには、日頃の会話が大切です。小学校低学年までの子なら、親にわからない言葉の意味を聞いてきます。

「あなたの言っていることにも一理あるわ」
『ねえ、一理あるって何?』

こんなふうに聞かれたらチャンスです。次の2つのことを実践してみてください。

1、簡単に意味を教える

「そうね、一理あるというのは、『あなたの言っていることもわかるわ』ということ」、こんなふうに簡単に説明してあげてください。

「自分で調べなさい」と返すのは、小学校高学年の以上の子どもにしましょう。低学年の子には、会話のなかですぐに答えを教えてあげたほうが効果的です。

2、繰り返しそのフレーズを使う

似たような場面が出てきたら、何度も「一理ある」を使ってみてください。繰り返していくうちに、子どもが真似することがあります。そうなったら大成功。その言葉を使いこなせるようになったということです。

使いこなせない言葉は、書く力にはつながりません。

子どもが背伸びした言葉を使ったときには、ほほえましく受けとめてあげてください。間違った使い方をしたときには、難しい言葉を使ったことをほめつつ、「こんなときに使うほうがいいかな」とやんわり教えてあげるのがおすすめです。

筑波大附属駒場中学校に合格した子のエピソードを紹介します。

その子はもともと塾に入った3年生の頃からとてもいい文章を書く子でした。とにかく大人びた言葉を使えるのです。たとえば6年生になったとき、社会の入試問題演習で次のような文章を書いてきました。これには頭が下がりました。

冠位十二階を定めて家柄にとらわれない能力での登用を可能にした。又、憲法十七条を定めて役人の心構えを示した。
それにより氏姓制度の汚点とも言うべき家柄だけよくて凡庸な役人をなくして政治を一新し、逆に有能な役人をそろえて隋との国交を開き、日本を発展させようと考えた。

「凡庸な役人」というような表現を使う子は、明らかに凡庸ではないですよね。

その子が5年生になった頃、社会の確認テストの問題で青森県が生産量1位の果物は何かという確認テストの問題に「林檎」と書いてきました。

「椎名林檎じゃないんだから」と軽口を叩きつつ、「試験ではひらがなでいいものはひらがなで書いたほうが安全だよ」と生徒たちに話しました。でも、みんなは「りんごを漢字で書けるってすごい!」と、彼に尊敬のまなざしを向けるのです。

その後、答案を回収してスキャンしていると国語科の先生が答案をのぞき込み、「檎の線が1本足りませんね」と言ってきました。ただ、ここでみんなの前で間違いを指摘するのはよくないなと感じました。そこで、答案に正しい字をさっと書くだけにして、みんなの前で取り上げないようにしました。せっかく難しい字を使おうとしていることを、あまり否定しないようにしたかったからです。

漢字・熟語ができると、記述試験に強くなる

漢字の学習は重要です。気持ちや状況を熟語にできる子は記述試験に強いからです。「悪いことをしたという気持ち」を「罪悪感」と表現できる子は、伸びます。

家庭でたくさん会話をすることが難しいなら、漢字の先取りがおすすめです。小学校に入ったら、1学年先、できれば2~3学年先の漢字をマスターさせましょう。

慣用句やことわざを覚えさせようとする人もいますが、記述問題で使うことはまずありません。何より漢字です。漢字を知ることで、使える語彙が圧倒的に増えていきます。

イラスト hashigo(silas consulting)


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この記事の著者
松本亘正 専門家・プロ

まつもとひろまさ|中学受験専門塾ジーニアス運営会社代表|ラ・サール中学高校を卒業後、慶應義塾大学在学中に中学受験専門塾ジーニアスを開校。現在は東中野・自由が丘・日吉・芝浦港南など、6校を展開している。「伸びない子はひとりもいない」をモットーに、少人数制で家族のように一人ひとりに寄り添う指導を徹底、毎年超難関校に合格者を輩出している。生徒は口コミと紹介だけで9割を超える。これまでののべ指導人数は2200名以上。第一志望校への合格率は一般的に25%といわれるなか、ジーニアスは約60%超の第一志望校合格率を誇る。中学受験だけでなく、高・大受験時、就職試験時、社会人になっても活きる勉強の仕方や考える力の育成などに、多くの支持が集まっている。

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