学習 連載 合格する子どもの伸ばし方

【国語】大学入試改革を見据えて10歳前後にやっておきたいこと |本物の力を育てる「合格する子どもの伸ばし方」

専門家・プロ
2020年8月06日 松本亘正

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子どものタイプによって、親の関わり方や言葉のかけ方を変えたほうがぐんと伸びる。子どもは、大きく4つのタイプに分けることができる ―― 中学受験専門塾 ジーニアス代表、松本亘正氏の著書『合格する子どものすごい伸ばし方』から、わが子のタイプを知り、子どもの力を伸ばす方法を紹介します。

一文字一文字読むのに時間がかかると、文字を読むことで手一杯になってしまって、内容が頭に残らないものです。ところが、文章をすらすらと読めると、10歳以降にさまざまなタイプの問題に触れたり、前提知識がついてきたりすることで、読解力もつくようになります。

文章を音読ですらすら読めるようにしよう

ようやく文章を読めるようになった幼児期の子どもは、一文字一文字読んでいきますね。そのときには、せめて「いぬ」や「しましょう」のような「言葉のかたまりに気づいてまとめて読む」ことを意識させるといいですね。

じつは小学生でも読むのに苦労する子は、これができていません。行の最後で、一度区切ってしまうのです。

次に意識したいのは、文章を正しく読むことです。

国語が苦手な子は、なかなか正確に音読できません。だいたいは合っているけれど「読み飛ばし」をしてしまったり、間違えても自分で気づかないまま読み進めてしまったりします。とくに
10歳になるまでは、素直に親の言うことを聞いてくれるので、間違えても自分で気づかない場合は、ひとつ前の文から再度読ませることを徹底させてください。嫌がるかもしれませんが、正しく読むのが当たり前、という習慣は、早いうちから身につけさせたいですね。

ここでエピソードを紹介します。算数は偏差値が55以上あるものの、国語の模試では偏差値40未満で、読むのが極端に苦手な男の子がいました。

5年生の途中から転塾してきたのですが、音読させてもおぼつかない。算数の図形分野なら、難問も難なく解けるのですが、文章題になると、簡単な1行問題なら解けるのに、5〜6行の文章を読み込んで答えを出すような問題では、全然解けなくなってしまう。何が書いてあるのか、わからないのです。

音読で全教科の成績が上がる!

そこで、荒療治でしたが、授業後に残ってもらい、音読して、間違えたら2行前から戻って読ませる、ということをとにかく繰り返しました。せっかくがんばって読んでも、間違えてしまうから、また2行前に戻ってしまいます。1行読んで2行戻って、1行読んでまた2行戻って……。ついには最初の行まで戻ってしまったこともありました。泣いてしまったこともあります。

授業後の15分間はそれを繰り返し、自宅でもとにかく読むように指導しました。すると、3カ月足らずで「2行戻るルール」でも最後まで読めるようになったのです。

スピードは落ちたものの、明らかに理解できるようになっていきました。

最終的に彼の偏差値は算数60以上、理科55~60、社会50~55、国語40。入試問題のレベルになると、あまり国語の偏差値は伸びませんでしたが、他教科は得点できるようになり、偏差値60
の難関校である芝中学校や本郷中学校に合格しました。

音読したことが、全科目にいい影響をもたらしたのです。

すらすら読むことがどうしても苦手なら、徹底的に音読させたり、「2行戻るルール」で、間違いなく読もうという意識を持たせるのは効果的です(注:間違えてもすぐに言い直せたらOK)。理想は語彙力をつけることですが、まずは自学自習できる漢字や、すらすら音読できるようにすることを優先したほうがいいでしょう。

2017年11月に行われた「大学入学共通テスト」の試行調査(プレテスト)では、明らかに文章量が増えました。主要教科のページ数が増えたのに、問題量は8%減少。1問あたりの情報量が増え、素早く読む力が問われるようになったのです。

また、国語は評論文が難解なものから平易なものになり、読みやすくなりました。資料や会話文を使ったものも出されました。難度が下がった分、読む量が多くなったのが特徴です。これからは、読むスピードが、ますます求められていくでしょう。

イラスト hashigo(silas consulting)


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