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受験に役立つ理科ノートのつくり方|なるほどなっとく 中学受験理科

専門家・プロ
2020年7月02日 水溜 兼一(Playce)

学習範囲が広く、難しいイメージがある理科の中学入試問題。難関校に多くの子どもを合格させてきたカリスマ講師・小川眞士さんが、子どもの理科力を育むためのヒントを伝えます。

受験を成功させるために、ノートはとても大事なものです。受験に役立つノートとはどのようなものか、小川先生に聞きました。

ノートにお子さんの個性、出ていますか?

小学校では近年、教科書会社が作ったノートを使うところが増えてきました。ノートには、文章や図が書いてあり、ところどころ空白になっていて、各単元で押さえるべき事柄や実験結果などを児童が書き込むようになっています。一方、塾では生徒が自分でノートを用意して授業を受ける、もしくは授業ごとにプリントが配られ、そこに書き込むスタイルです。

授業を受ける姿勢として一番良くないのは、黒板の内容をそのままノートに写して勉強したつもりになることです。これではノートは、教科書やテキストのミニチュア版のようなものにしかなりません。ところが現実には、このようなケースがよく見られます。

ただノートを取っているだけでも、授業内容を頭に定着させる効果はあるかもしれません。しかし、これはノートの良い使い方とはいえません。ノートは自分の学習をより効率的に行うためにつくるもので、その意味では子ども一人一人の個性が表れるものです。

個性といっても、色ペンをたくさん使ってカラフルにしたり、イラストや図を描いたり、資料を貼ったりすればいいかというと、それも少し違います。そうすることで理解が深まるのなら否定はしませんが、キレイに仕上げただけの”見せるためのノート”も受験にはあまり役立たないでしょう。また、塾のノートでは、とにかく問題を解くためだけに使って捨ててしまうような、”計算用紙がわり”になっているケースも時折見られます。

「自分が理解できていないことは何か?」ノートを使って把握する

受験に役立つノートは、先生が黒板に書いたこと以外に、授業を受けていて自分が気付いたことや疑問に思ったことが書かれているものです。その内容は一人一人違うので、当然ノートには個性が出るはずです。

小学校の理科の授業は、実験や観察が中心になります。以前、ある生徒のノートを見せてもらったところ、その子は、実験の目的、予想、過程、結果を自分なりにまとめていました。私が特に感心したのは、実験前に立てた仮説について、自分の意見だけでなく、他の子の意見もノートに書いていたことです。また、仮説と結果が違ったときに、なぜかと自分で考え、思うことを簡潔にまとめていました。この生徒のノートからは、一つの事象をさまざまな角度から考えてみようという姿勢が感じられ、理科的思考力を高めるのに大いに役立つと思いました。

塾では、授業の基本的なポイントを書くノートとは別に、テストで自分ができなかった問題をコピーして貼り付けたノートをつくっていた生徒がいました。この生徒は、問題を再度、自分なりに解いた後、そのノートを持って私のところに質問に来ました。これもノートづくりの好例です。理科の学習では、授業やテストで理解できたことや正解だったことよりも、わからなかったことや、できなかったことをいかに処理するかの方が重要です。

理科の学習は、常に疑問を持って取り組むと理解が深まります。そのためには、頭の中に”わからないことリスト”があった方がいいです。小学校も塾も、教わったことをノートにあれもこれも書く必要はないですが、最低でも、自分は何がわからなかったのかを書き留めておき、把握する習慣をつけさせたいところです。もちろん、疑問点を全てすぐに調べてわかる必要はなく、それ以降の学習の中で解決していけば問題ありません。

ノートは未来の自分への手紙のようなもの

6年生になって受験が近づいてきたら、できない問題を無くしていく作業が必要です。そのためには、自分ができる問題とできない問題を把握していなければなりません。それを把握するときに、これまで使ってきたテキストや教科書を全部見直して検証するのは量的に膨大となり、かなり困難です。そこで、これまでにまとめてきたノートが大変役立ちます。

日々の学習の中で、自分にとって疑問だったところ、ポイントだと感じたところを書いたノートがあり、何かあったときにそのノートに戻り、また書き加えていけると理想的です。勉強していてわからなくなったら、ノートを見れば「ああそうか」とわかる。例えば、5年生でメダカについて学習したときにポイントをノートにまとめたとします。そして6年生でメダカの問題に取り組んだ時、わからないことがあればノートを見れば解決する。それでもわからないときは、参考書などを見直して調べ、そのノートに追記すればいいのです。

ノートとは、今4年生なら6年生の自分に向けて書いている手紙のようなものです。6年生になり受験が近づいてきた頃、4年生の時のノートを振り返ったときに、「自分はこの頃、これがわからなかった。でも今はわかる」と思えるような……。後から見直したときに学習の足跡が見えるノートをつくってほしいと思います。


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※記事の内容は執筆時点のものです

小川眞士
小川眞士 専門家・プロ

小川理科研究所(東京都豊島区)主宰。都内の中学校教諭を経て、四谷大塚進学教室理科講師に。開成や桜蔭の特別コースを約25年間担当、コース生28人全員が開成中学に合格した実績を持つ。教務主任や副室長も務めた。2009年4月に小川理科研究所を開設。主な著書に、『中学受験 理科のグラフ完全制覇』(ダイヤモンド社)、『これだけ理科』(森上教育研究所スキル研究会)、『カンペキ小学理科』(技術評論社)がある。

この記事の著者

雑誌・新聞の編集・ライターを経て、現在は、通信教育企業のキュレーションサイトや大学案内のライティングなどを担当。

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