中学受験ノウハウ 志望校選び

男女別学と共学のメリットを解説! 付属校についても

専門家・プロ
2022年4月12日 吉崎 正明

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「中学校」と一口にいっても、男女別学や共学、付属校や進学校など、さまざまな特徴を持つ学校があります。では、それぞれの学校にはどのような違いがあるのでしょうか。

【男女別学】男女の特性を生かした教育を実施

中学受験では男女共学の人気が続いていますが、男女別学ならではのメリットもあります。

中学に進んだ男子・女子には違いが表れます。それは身長や体格といった身体の発達だけでなく、大人びてきたり落ち着いてきたりといった心の成長にも表れてきます。勉強面では、「男子は図形が好きな子が多い」「女子は言語認知能力が発達しやすい」など、個人差はあるものの、性別特有の得意・不得意といった傾向が見られることも。そして男女別学では、こうした男女の特性を生かした教育をおこなっているのです。

ちなみに、思春期という繊細な時期を過ごす中学生活では、同性のほうがコミュニケーションをとりやすい反面、異性とのコミュニケーションとなると必要以上に意識してしまうことも。たとえば、女子から「あれをしている男子はカッコいい」と言われる一方、「これをしている男子はダサい」といった声が聞こえると、どうしても異性の目を意識した行動を取ってしまうものです。その点、男子校であれば、女子の目を過度に気にすることなく、自分が本当に好きなことに熱中しやすくなるかもしれません。このように、異性を強く意識することなく過ごせることで、のびのびと成長できる可能性が高まるのです。

男子校 ―― 体育会系からインドア系までさまざま

男子校は、一見すると「体育会系」のイメージがあるかもしれません。しかし、昆虫好き・鉄道好き・マンガ好き・勉強熱心・スポーツ好き、そしてアイドル好きなど、いろいろなタイプの生徒が”共生”しています。そしてタイプが違う子が集うクラスであっても、どの子も楽しく生活しているものです。

同性と過ごすことは、我慢せずに自分らしさを出せることにつながるためか、男子校の生徒から話を聞くと「男だけだし、あまり気にしなくていいからラク」という声が多いですね。

女子校 ―― イメージを覆す「たくましさ」

次に、女子校ならではの特徴を紹介します。女子校といえば「お嬢さま」といった印象を持つ方が多いですが、それはイメージに過ぎません。外向けには「お嬢さま」のイメージがあっても、なかを見てみると、元気に、そしてたくましく学校生活を送っている子が女子校には多いものです。

女子校はもちろん女子だけの学校ですから、体育祭や文化祭などでは男子の力を借りることなく、自分たちでつくり上げなければなりません。力仕事も、当然のように女子の役割です。このように「自分たちでしっかりとやり遂げる」といった姿勢が自然と培われることで、凛としたなかに、たくましさが感じられる女性が育っていくのでしょう。

【男女共学】環境のギャップを感じずに済む

男女別学のメリットや特徴をお伝えしてきましたが、共学校に進学することにもメリットがもちろんあります。

ほとんどの小学校は共学です。そのため、そのまま共学の中学校に進学すると、環境のギャップを感じずに済むことでしょう。そして共学校では、当然のように異性を意識せざるを得ない環境に身を置くことになります。これは見方を変えれば、“実社会”に近い環境ということ。同世代の異性の考え、さまざまな価値観に触れる機会も多いため、社会に出てからの「適応性」という面での成長も期待できるのです。

男女併学 ―― 別学と共学の「いいとこどり」

共学校のなかには、「授業は男女別クラス」「部活は男女合同」といったように、学校によって違いはあるものの、男女別学と共学を場面ごとに使い分けている学校もあります。いわゆる「男女併学」と呼ばれる学校です。

男女併学の特徴は、男女別学と共学のメリットが手に入ること。具体的には、「異性を気にせず、のびのびと過ごすことができる」という男女別学のメリットと、「実社会と近い環境で過ごせる」といった共学のメリットが両方とも手に入ります。國學院大學久我山や、桐光学園などは男女併学校の代表例です。

運営方法による学校の分類

学校の分類には、ここまで見てきた「男女」という区切りのほか、学校の運営方法、大学受験への取り組み方による分類も存在します。ここでは、「大学付属校」「進学校」「半付属校」について紹介します。

大学付属校 ―― 大学入試改革でさらに関心が高まる

大学入試改革が話題となるなかで、大学付属校の人気が高まっています。私が受ける進路相談でも、以前より付属校志望の親子が多くなっている印象です。

大学付属校は、系列大学への内部進学が前提となっているため、ほとんどの学生が大学受験をしません。そのため、大学受験の勉強に時間を取られることがなく、課外活動などに力を入れることができるため、比較的のびのびとした環境のなか6年間を過ごすことができます。中学から大学までの10年間を同じ仲間と過ごすことも多く、人間関係をじっくりと築くことができるのも付属校の良いところですね。

ただし、系列大学への進学が前提といえども、内部進学の推薦を受けるためには学校が定めた一定の成績を満たさなければならない学校がほとんど。「大学進学に向けた勉強をまったくしなくていい」というわけではないので注意が必要です。ほかにも「出席日数」をしっかりとクリアすることはもちろん、「生活態度」についても緩みのないように学校生活を送る必要があります。

進学校 ―― 努力次第では難関大学にも合格できる

進学校についても見ていきましょう。進学校とは、大学受験合格を目指すためのカリキュラムが綿密に組まれ、勉強面のフォローが手厚い学校のこと。系列大学への進学がほぼ前提となっている大学付属校に対し、進学校に進んだ場合は、子供の成長や努力次第で進路の選択肢を大幅に増やすことができます。

たとえば中学受験時には偏差値が50前後であっても、成長や努力次第では、大学受験時には偏差値70以上になっている子も。大学受験をすることは前提となりますが、手厚い進学指導が受けられる進学校のメリットを生かしつつ、努力を欠かさなければ、中学入学時には想像していなかった大学への進学も見えてくるのです。ちなみに付属校に進んだ子のなかには、「もし進学校に進んでいたら、最難関の私立や国公立大学なども目指せたのかも……」と肩を落とす子も少なくありません。

半付属校 ―― 多くの子が大学受験をする一方、系列大学への道も

大学付属校でありながら多くの生徒が他大学への進学を目指す、いわゆる「半付属校」も注目されています。半付属校とは、「大学付属」などの冠があるものの、中身は実質上の“進学校”である学校を指す言葉。

半付属校では、系列大学の推薦枠を利用することができる一方、高いレベルの大学に挑戦するためのサポートも充実しています。大学付属校と進学校の長所を持ち合わせた、いわば「いいとこどり」タイプの学校ですね。事実、授業のカリキュラムも大学受験を前提に組まれていることが多くなっています。

半付属校として有名なのは、男子校では早稲田(早稲田中学・高等学校)、共学では神奈川大学附属、男女別学でも知られる國學院大學久我山などです。

たくさんの学校を知ることが、学校選びの第一歩

「子供に合う校風であれば、共学・別学こだわらずに学校を選びたい」

近年、このように考える家庭が多くなってきている印象です。学校の候補を絞り込むのは、見学を重ねてからでも遅くはありません。食わず嫌いをせず、たくさんの学校に出会うことで、子供にぴったりの学校を探していきましょう。

※記事の内容は執筆時点のものです

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