連載 親子で疲弊しない「ノビノビ中学受験」

受験を諦めたくなったとき ―― 親子で疲弊しない「ノビノビ中学受験」

専門家・プロ
2020年9月15日 やまかわ

中学受験と聞くと、難関校を目指す受験がどうしてもイメージされます。しかし、そうではない、あるいはそのやり方に疑問をもつご家庭は少なくないでしょう。この連載では、『ゆる中学受験 ハッピーな合格を親子で目指す』の著者である亀山卓郎先生に、親子で疲弊しない中学受験をテーマにさまざまなお話を伺います。

「夏が過ぎてもやる気が感じられない」
「塾に通わせていても成績が伸びてこない」

こうした不安が生じると、「受験なんてもうやめてしまえ!」と子どもに当たってしまう親御さんは少なくありません。たしかに、中学受験は不安の連続。諦めたくなることもあるでしょう。しかし、感情的になってつい発してしまった言葉が、子どもの心に大きな傷として残ることは忘れてはいけません。

「受験なんてやめてしまえ」は親の敗北宣言

中学受験は、親と子の“我慢比べ”です。子どもはどうやって勉強の手を抜くか考え、親はなんとか子どもにやる気を出してほしいと思っています。このとき、「受験なんてやめてしまえ!」「もう勝手にしなさい」という感情的な発言は、親が“我慢比べ”に負けてしまった証です。そもそも小学生は、自分でやる気を出して勉強するのには幼く、まだ大人が背中を押してあげなくてはならない年齢です。

子どもは、親のまなざしをいつでも気にしています。どうしたらいいのかわからないときは一緒に考えてほしい、辛いときは寄り添ってほしい、悪いことをしたときはちゃんと叱ってほしい――。子どもたちはそう思っています。

そうは言っても、宿題の期限が守れないときなどに「しっかりやりなさい!」と怒ってしまうこともあるでしょう。ただし、こうした場合に「さっさとひとりでやりなさい!」と突き放してはいけません。怒りたい気持ちをぐっとこらえ、「最後までつき合ってあげるから、今日中に終わらせよう」と声を掛けてあげるのです。隣で勉強を見る必要はなく、家事をしていたり、パソコンを開いて仕事をしていたりしても大丈夫。子どもにとっては、両親と同じ時間を共有していることが何よりの安心につながります。宿題が終わったら、「ちゃんとできたね。しっかりとやっておけばもっと楽に終わらせられたんだよ。次からは気をつけようね」とフォローを入れるのも忘れずに。こうしたやり取りから、子どもは「次からは、前もって宿題に手をつけておこう」といった気づきを得ていくのです。

難関校に入れなければ、受験を諦める?

偏差値が高い学校でないと進学させる意味がない。そう考え、中学受験を断念する家庭も少なくありません。なかなか偏差値が上がらない子どもにしびれを切らし、入試直前であっても受験をやめてしまうのです。しかし、偏差値が高ければ良い学校、低ければ悪い学校と考えるその発想には、「子どもがイキイキと過ごせる学校を選ぶ」という点がスッポリ抜けています。

学校選びで重視したいのは、偏差値よりも「学校の中身」です。どのようなシステムで生徒を育てているか、どのような生徒が学校生活を楽しんでいるか、といったことですね。こうした“学校の内側”に目を向けると、子どもにぴったりの学校に出会える確率が高まります。

たしかに、偏差値の高さは大学進学実績と相関しています。偏差値はわかりやすい指標のため、基準にしたくなる気持ちも理解できます。しかし、合格した学校に6年間通うのは、親ではなく子ども。事実、中堅校に入学後、学校生活を楽しみながら勉強もがんばり、第一志望の大学に合格する子がいる一方で、偏差値の高い学校に入学できたものの、環境が合わずに苦労する子も意外に多いものです。子どもが毎日楽しく過ごせる環境を探してあげたいのであれば、偏差値だけでなく、学校の中身にも目を向けてあげてください。

「価値」に目を向けた学校選びを

そもそも、私立一貫校への入学はかなり高額な“買い物”です。たとえば、家や車を購入するときは、まずは自分の目で確かめますよね。価格だけを見て購入を決めることはないでしょうし、少なくとも、イメージや口コミだけを信じて買わないはずです。しかし、中学受験になると「価格(偏差値)」だけに目を向け、「価値(学校の中身)」に目を向けない人が多いのです。

ちなみに4年生から学習塾に入った場合、3年間で240万円以上の出費が見込まれます。そして中高一貫校の平均的な学費は500~600万円。高校の授業料無償化を考慮しても、かなりの額です。これほどの“買い物”をするのですから、偏差値だけに目を向けるのは怖いはず。「学校の中身」に目を向けるのは時間も労力もかかることですが、子どもにぴったりの学校を選ぶためにも、さまざまな角度から受験校を決めてほしいと思います。

受験校を考える際に、テストの点数や偏差値といった「目に見える数字」だけを判断材料にするのは気持ちが楽かもしれません。しかし、学校選びはそんなに単純な話ではないのです。そして、子どもの努力がすぐに点数に直結するわけでもありませんし、中堅校に入ったからこそノビノビ過ごせる子もたくさんいます。このように中学受験は、白か黒か簡単に決められるものばかりではありません。

外からの情報に煽られるのではなく、まずは目の前の子どもにとって最適な道を考えてあげること。中学受験を諦めたくなるときこそ、親御さんは辛抱強く子どもを見守ってあげてほしいと思います。


これまでの記事はこちら『親子で疲弊しない「ノビノビ中学受験」

※記事の内容は執筆時点のものです

亀山卓郎
亀山卓郎 専門家・プロ

かめやま たくろう|明治学院高等学校、成城大学卒業。大手塾・個人塾などで教務経験を積んだ後、2007年に転居のため千葉県及び江戸川区の塾を閉鎖し、台東区上野桜木で「進学個別桜学舎」をスタート。首都圏模試の偏差値で60を切る学校への指導を専門に「親子で疲弊しないノビノビ受験」を提唱している。TJK東京私塾協同組合員、第一薬科大学付属高校上野桜木学習センター長。YouTube「下町塾長会議」構成員。著書「ゆる中学受験ハッピーな合格を親子で目指す」(現代書林)、「めんどうな中学生(わが子)を上手に育てる教科書」(ブックトリップ)、構成・問題監修「LIZ LISA Study Series中1/中2」

この記事の著者

編集・ライター。学生時代から都内で6年間塾講師を務める。塾講師時代は、おもに作文・国語・英語の科目を担当。小学生から中学生までの指導にあたる。現在は編集・ライターとして教育関連をはじめ、街歩き・グルメ記事の執筆取材をおこなう。

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