連載 「国語力」が、中学受験を左右する!

漢字力アップのポイントは、低学年の学習にあり|「国語力」が、中学受験を左右する!

専門家・プロ
2020年9月30日 水溜 兼一(Playce)

本連載では、国語の講師として、中学受験を目指す子どもたちを長年指導している南雲ゆりか先生が、国語力アップにつながるさまざまな方法を紹介します。

「受験生を指導していると、3年生までに習う漢字が意外と身についていない」と言う南雲先生。今回は、漢字学習のつまずきの理由と、低学年のうちから家庭で取り組んでおくべき学習のポイントを聞きました。

読み方の一部しか習わないことが、漢字でつまずく大きな原因

入試国語において漢字力は重要です。それは、入試で漢字の問題が出るからという理由だけではなく、本文を読むときに漢字の知識が足りないと内容をきちんと理解できないからです。

ところが、生徒たちを指導していると、漢字がきちんと覚えられていない子が少なくありません。私の教室の4年生に、3年生までに習った漢字のテストをすると思った以上に成績が悪いのです。音読みも訓読みもできず、解答用紙が空欄だらけの子もいます。

おそらく学校の漢字テストは、出題する漢字の範囲を決めて行っているのでしょう。そのため、テスト前に出題範囲の漢字だけ復習する、付け焼刃的なものになりがちです。また、低学年で習う漢字数は、1年生はわずか80字、2年生は160字です。それが3年生になると200字に増えるため覚えきれず、これが漢字学習のひとつの壁になっています。

漢字力がつかない原因は、もうひとつ考えられます。それは、小学校の授業では一般に使われるすべての読み方を習わない漢字が多いことです。学校の漢字学習は、文部科学省の「音訓の小・中・高等学校段階別割り振り表」に基づいて行われます。これは、〇年生までにこの読み方を教えましょうという目安を定めたもので、この表に則って教科書やドリルが作られています。例えば、「商」という漢字は3年生で習いますが、学校では音読みの「ショウ」だけ教わるので、訓読みの「商う(あきなう)」が読み書きできない子が6年生でも多くいます。

入試では文部科学省が定めた表に関係なく、漢字の読み書き問題が出題されます。また、試験に出る四字熟語のなかには、学校で習う読み方を覚えるだけでは、読み書きできないものがたくさんあります。私は、読み方を一部しか習わないことが、漢字でつまずく大きな原因のひとつだと考えています。

子どもが漢字に触れる機会をたくさんつくる

子どもの漢字力を高めるためには、学習を学校任せにせず、低学年のうちから家庭で漢字に触れる機会をつくることが大事です。ひらがなだらけの本ばかり読ませるのではなく、漢字で書かれた文章を積極的に読ませましょう。子ども新聞やルビが振ってある本などはおすすめです。

それと合わせて、親は子どもの前で漢字をどんどん使っていきましょう。たとえば、書き置きなどは、できるだけ漢字で書いて、わからない漢字にはルビを振るといったことをしてみるのもよいでしょう。日常生活で文章を書くときは、漢字を使うのが当たり前ということを早いうちから意識させると、漢字力の向上につながります。

家庭では漢字の先取り学習にも取り組みたいところです。3年生になると習う漢字の数が多くなるので、覚えるべき漢字の数が比較的少ない1、2年生のうちから、3年生の漢字を覚え、3年生なったら4年生の漢字もというように学習を進めましょう。お子さんによっては、書くのはまだ難しい場合もありますが、読めるようにはしておきたいところです。

このとき、漢字を「図形」として捉え、視覚から覚える子どもも多いと思います。家庭で漢字を教えるときによくないのは、「右」はカタカナの「ナ」と「ロ」が一緒になった字というように、パズル式にしてしまうこと。漢字は、形だけを見るのではなく、成り立ちを知ることが大事です。

形が似ている漢字を書き間違えるのは、漢字を図形としてしか見ていないからです。例えば、「往復」の「往」を「住」と書いてしまう子は非常に多いです。2つの漢字は、形は似ていますが、成り立ちは全く違います。「ぎょうにんべん」には、「行く」という意味があるので、「往」になります。部首には意味があることを教えてあげましょう。

家庭で漢字学習をするときは、音訓両方の読みを教えることもポイントです。特に子どもたちは訓読みが苦手なケースが目立ちます。その理由として、音読みはいろいろな熟語を学ぶことでも覚えられますが、訓読みは送り仮名も含めて一つひとつ確実に覚えていかなければならないからです。

子どもに漢字を覚えさせるとき、ドリルをたくさんやらせたり、ノートに漢字をとにかくたくさん書かせたりする方も多いようですが、これではなかなか覚えないこともあります。漢字学習は、10個ぐらいずつ集中して数回書き、覚えたかどうか数日後にテストする方法がおすすめです。その際、覚えていなかったからと言って神経質にならず、その漢字に繰り返し触れさせることを心掛けてください。

低学年の子どもたちは、初めて見る漢字に興味を示し、漢字を覚えたいという気持ちが強いと思います。子どもが漢字を読み書きできたら「すごいね!」と褒めて、自尊心をくすぐりながら、親子で漢字をどんどん学んでいきましょう。


これまでの記事はこちら『「国語力」が、中学受験を左右する!

※記事の内容は執筆時点のものです

南雲ゆりか
南雲ゆりか 専門家・プロ

南雲国語教室(東京都文京区)主宰。「正確に読む力、伝える表現力」の育成をモットーに小学生の指導にあたっている。東京都生まれ。横浜市の小学校教諭を経て、大手中学受験塾の国語科専任教師に。10年間、最難関コースの指導を担当するとともに、模試や教材の作成にも携わった。主な著書に、『笑って合格する!「中学受験」必勝法』『中学受験の合否を決める! 考える力がつく「国語」勉強法』(いずれもダイヤモンド社)『名探偵コナンの12才までに身につけたい本物の漢字力 1026字』(小学館)がある。現在、朝日小学生新聞で「楽読み楽解き国語の時間」、朝日新聞EduAで「国語のチカラ~読解力アップの教科書~」を連載中。

この記事の著者

雑誌・新聞の編集・ライターを経て、現在は、通信教育企業のキュレーションサイトや大学案内のライティングなどを担当。

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