連載 親子で疲弊しない「ノビノビ中学受験」

子どもの「叱り方」―― 親子で疲弊しない「ノビノビ中学受験」

専門家・プロ
2020年10月20日 やまかわ

中学受験と聞くと、難関校を目指す受験がどうしてもイメージされます。しかし、そうではない、あるいはそのやり方に疑問をもつご家庭は少なくないでしょう。この連載では、『ゆる中学受験 ハッピーな合格を親子で目指す』の著者である亀山卓郎先生に、親子で疲弊しない中学受験をテーマにさまざまなお話を伺います。

勉強のやる気が見えなかったり、受験直前にも関わらず子どもの気が緩んでいたりしたら、親としてはつい怒ってしまいたくなりますよね。ただ、怒ることは意外に難しいものです。場合によっては、子どもの意欲を大きく下げてしまうので注意が必要です。

「怒る」と「叱る」は違う

前提として、「怒る」と「叱る」には明確な違いがあることを理解してください。「怒る」は、「なんで言うことを聞かないんだ!」と気持ちを爆発させ、不快感をあらわす行為。「叱る」は、相手の悪い部分を指摘して、それを改めるように促す行為です。両者の違いは、“憎しみ”があるかどうか。自分では「子どものために怒っている」と思っていても、実は自分のイライラを解消するために声を荒げている親御さんは少なくありません。親は子どもと過ごす時間が長いため、子どもに対してイラ立ちや不満を溜めこんでしまうことは多いでしょう。しかし「怒る」と「叱る」の区別を意識しておかないと、子どもを委縮させたり、逆に子どもが反抗してきたりと、状況をさらに悪化させてしまうケースも多いのです。

塾講師の叱り方

塾講師が生徒を叱るとき、そこには明確な意図があります。たとえば私が雷を落とすのは、「ここでピリッとさせないと、勉強がだらけてしまう」といったときだけ。生徒の意識をこちらに向けるため、表面的には怒っているように見せますが、心のなかは冷静です。声のトーンや強弱、タイミングなどを考え、言葉を選びながら注意しています。そして生徒に反省の色が見えてくると、「集中して授業を受けられるようになったね」「宿題の期限も守れたね」とフォローも欠かしません。

やみくもに叱っても、子どもは言うことを聞かないものです。そこで大人は、冷静でなければいけません。感情に任せて怒るのではなく、自分の感情をうまくコントロールしながら叱る。そして、そのあとのフォローも抜かりなく行う。すると子どもも、ただ単に「怒られた」のではなく、自分のことを思って「叱ってくれたんだ」と考えるようになります。

しかしながら、こうした叱り方はある程度の慣れも必要です。自信がない場合は、他人に叱ってもらうのもひとつの手。私も、「塾長、うちの子を叱ってやってください……」といった相談を受けることが少なくありません。叱っても生徒に変化が見られない場合には、親御さんを交えて三者面談をすることもあります。場合によっては親御さんの襟を正すような言葉も伝えますが、それも親子に同じ方向を向いてほしいからこそ。

親子が敵対し合って過ごす受験は、幸せな受験とはいえません。大切なのは、親子が同じ目標に向かって歩みを進めていくことです。そして親は、子どもの成長を願って叱ってあげることが大切です。ちなみに、私にお灸をすえられた親子のなかには、「ママも叱られちゃった。これからどうするか、一緒に考えようか」と、帰り道に顔を見合わせて笑い合った親子もいるとか。これをきっかけに、この親子がまた一歩成長していったのは言うまでもありません。

怒ってしまったときは、親が謝る

親も人間ですから、子どもの態度や言葉に思わず腹を立て、カッとしてしまうこともあるでしょう。しかしこのときも、決して子どもの敵になってはいけませんし、突き放してもいけません。まずは親自身の気持ちを落ち着かせ、強い言葉を浴びせてしまったこと、声を荒げてしまったことなどを謝りましょう。そのうえで、「○○が原因で厳しく当たっちゃったんだ。お母さんも、そんなことをされたら傷ついちゃうな。今度からはやめようね」と、あくまで冷静に伝えてあげてください。これもまた、子どもが行動を改めるきっかけになります。

繰り返しになりますが、子どもの前で怒りの感情を爆発させても、子どもの気持ちが大きく変わることはありません。むしろ、子どものイライラに火をつけてしまったり、逆に子どもの心に大きなキズを残してしまったりと、良いことがないのです。

ストレスが溜まったときは、ママ友に話してみたり、夫婦で話し合ってみたり、塾の先生に相談したりと、“ガス抜き”を意識的にとることも忘れずに。怒りの感情を、子どもを後押しするパワーに変え、親子で同じ方向を向いて受験に取り組んでほしいと思います。

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※記事の内容は執筆時点のものです

亀山卓郎
亀山卓郎 専門家・プロ

かめやま たくろう|明治学院高等学校、成城大学卒業。大手塾・個人塾などで教務経験を積んだ後、2007年に転居のため千葉県及び江戸川区の塾を閉鎖し、台東区上野桜木で「進学個別桜学舎」をスタート。首都圏模試の偏差値で60を切る学校への指導を専門に「親子で疲弊しないノビノビ受験」を提唱している。TJK東京私塾協同組合員、第一薬科大学付属高校上野桜木学習センター長。YouTube「下町塾長会議」構成員。著書「ゆる中学受験ハッピーな合格を親子で目指す」(現代書林)、「めんどうな中学生(わが子)を上手に育てる教科書」(ブックトリップ)、構成・問題監修「LIZ LISA Study Series中1/中2」、監修「おっぱっぴー小学校算数ドリル」(KADOKAWA)

この記事の著者

編集・ライター。学生時代から都内で6年間塾講師を務める。塾講師時代は、おもに作文・国語・英語の科目を担当。小学生から中学生までの指導にあたる。現在は編集・ライターとして教育関連をはじめ、街歩き・グルメ記事の執筆取材をおこなう。